水産増殖
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56 巻, 2 号
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原著論文
  • 岡内 正典, 山田 敏之, 尾崎 照遵
    2008 年 56 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    魚類飼育水への添加やワムシの栄養強化など,ナンノクロロプシスの新たな用途を考慮し,試薬類および農・水産用肥料を用いた栄養塩類添加海水培養液の処方を考案した。その結果,小規模な培養を対象とする培養液(ESM-NA液)の組成としては,NaNO3; 4.41 mM,NaH2PO4・H2O; 90μM,Fe-EDTA; 29.7μM,MnCl2・4H2O; 2.2μM,ZnSO4・7H2O; 0.38μM,CoCl2・6H2O; 0.126μM,大規模な培養を対象とする施肥培養液(FSM-NA液)の組成としては,硝酸カリ; 5.3 mM,リン安; 0.66 mM,クレワット32; 20 mg/l,クレワット鉄; 3 mg/l が適切であることが分かった。このFSM-NA液の性能を従来の「屋島培地」と比較したところ, 9 日間のバッチ式通気培養で良好であった。また,ナンノクロロプシスを魚類飼育水に添加する際に同時に混入する培養液の影響を調べたところ,ヒラメ仔稚魚に対する悪影響はなかった。これらの結果から,本研究で考案した培養液は餌料としてのナンノクロロプシスの大規模及び小規模培養に適している。
  • 城 幹昌, 城 孝至, 松浦 哲平, 高津 哲也
    2008 年 56 巻 2 号 p. 157-166
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    アイナメ飼育仔魚の耳石日周輪形成の確認と,天然仔魚の成長様式を検討した。礫石上には孵化時に明瞭な輪紋(孵化チェック)が形成された。日齢(Age)と孵化チェックの外側の輪紋数(NI)の関係は直線で示され(NI=0.99Age-0.30, n=49, r2=0.98, P<0.001),傾きは1とは有意に異ならなかったことから(t 検定:P=0.31),これらの輪紋は日周輪と判断された。陸奥湾では2003年2月から4月まで天然仔魚が表層で採集された。耳石半径と脊索長の関係はアロメトリー式で表され,バイオロジカル・インターセプト法による平均逆算体長は10日齢で9.79 mm,40日齢で13.3 mm と推定された。成長率は孵化直後に比較的高く(範囲:0.15-0.17 mm/日),その後次第に低下したことから,アイナメでは孵化直後の低成長期はみられないものと考えられた。
  • 岩永 俊介, 山田 英二, 川口 健, 細川 秀毅
    2008 年 56 巻 2 号 p. 167-173
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    ピース貝生産用の親貝選抜の指標として殻体真珠層a値の違いが,真珠の品質に及ぼす影響を検討した。そこで,親貝はb値を青色のマイナス域に設定し,a値を赤色のプラス域[a(+)群]と緑色のマイナス域[a(-)群]の2群に選抜して,種苗を2004年6月に生産した。種苗は長崎水試前の漁場で飼育し,真珠層のa値とb値を2004年11月から2006年12月まで調査した。さらに,種苗の外套膜小片を用いて生産した真珠の品質を比較するため,真珠生産試験を対馬市と鹿町町地先の漁場で行った。種苗のa値とb値は,飼育日数の経過とともに低下した。b値では差がなかったが,a値ではa(+)群がa(-)群に比べ終始高かった。真珠は商品率や巻きに差がなかったが,a(+)群の色彩がa(-)群に比べて,品質が高い実体色のホワイト色と干渉色のピンク系の出現率が有意に高く,単価が1.38倍~1.52倍高かった。以上より,殻体真珠層のa値がプラス域の親貝を選抜することで,a値が高い種苗を生産し,高品質真珠の出現率が増加すると考えられた。
  • 竹下 朗, 征矢野 清
    2008 年 56 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    チャイロマルハタ稚魚の共食行動に及ぼす照度および水槽色の影響について検討を行なった。3 段階(20,200,1000 lx)の照度条件を用いて共食行動を比較したところ,1000 lx 区は200 lx 区に対して共食行動の発生が多くなる事が認められた。緑,白,赤,黒の異なる水槽色で稚魚を飼育したところ,赤色区は緑色区に対して死亡率が有意に低くなることが分かった。また,緑色区と白色区の稚魚の体色が明るい茶色であったのに対し,赤色区は暗い茶色,黒色区は黒色を呈した。以上の結果より,本種は照度および環境色を認識すること,また,共食行動に照度および水槽色が影響を及ぼすことが明らかとなった。
  • 大橋 智志, 藤井 明彦, 鬼木 浩, 大迫 一史, 前野 幸男, 吉越 一馬
    2008 年 56 巻 2 号 p. 181-191
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    タイラギ浮遊幼生を飼育し1,484個体の着底稚貝を得た。飼育開始から着底終了までの生残率は約0.04%で,着底は日令35から42の間に見られた。着底時の幼殻長の平均は514.1±25.9μm で既報より小型であった。藻類餌料への餌料添加物として用いたマガキ,タイラギおよびマダカアワビ成熟卵磨砕物は比較実験の結果D型期から殻頂期幼生への成長・生残に効果を示し,D型期幼生から殻頂期幼生への移行期に発生する大量減耗が緩和されたことが着底増加に寄与した主な要因と考えられた。稚貝は成長が早く,着底直後と推定される稚貝の平均殻長は1.2±0.1 mm で,日令72で平均殻長26.0±5.5 mm に達し,日令75の生残率は76.8%であった。しかしその後成長の停滞と斃死の発生がみられ,日令118の生残率は55.0%であった。海中に垂下し潜砂させて飼育する方法では良好な成長と高い生残が得られ,日令83から潜砂飼育した稚貝の日令133の平均殻長は64.3±5.3 mm,生残率は100%であった。
  • 田岡 洋介, 弓削 寿哉, 前田 広人, 越塩 俊介
    2008 年 56 巻 2 号 p. 193-202
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    ヒラメの生残率,成長,飼育水質,細菌数および高水温ストレス耐性について調べた。Lactobacillus plantarum(LP)を0.1%および1.0%の割合で試験飼料へ添加し,ヒラメに経口投与して50日間閉鎖式循環水槽にて飼育を行った。LP 投与によるヒラメの成長,生残および水質への影響は認められなかった。LP の経口投与に伴い,特に1.0% LP 添加区において,飼育水およびヒラメ腸試料の Lactobacillus sp.数が増加した。無添加区と比較してL P 添加区のヒラメでは,高温に対するストレス耐性が有意に増加した。以上の結果より,経口投与された LP はヒラメ腸内で生残し,ヒラメのストレス耐性向上に有効であることが示された。
  • 白藤 徳夫, 和田 洋藏, 西垣 友和, 八谷 光介, 竹野 功璽
    2008 年 56 巻 2 号 p. 203-209
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    外海域でのイワガキ養殖を可能とする「鋼製魚礁を用いた浮体式養殖法」を考案し,その有効性を実証するため,2003年 2 月に鋼製魚礁を府下沿岸の水深約10 m の外海域に設置し,長期養殖試験を実施した。養殖されたイワガキは,養殖 3 年後(生後満 4 年)には,平均殻高(±SD)が103.1±16.3 mm となり,約 6 割の個体が200 g 以上の出荷サイズに成長した。浮体式養殖法では,養殖施設全体が海面下 4 m 以深にあり,波浪の影響を受けにくいため,試験期間中に台風や冬季の波浪によって施設が破損することはなかった。また,付着生物の着生量が少なく,それらの除去作業は不要であった。さらに,養殖施設には20種の魚類の蝟集が観察され,魚礁としての機能も確認された。これらの結果より,浮体式養殖法の有効性が実証された。
  • 佐々木 義隆, 水野 伸也, 今田 和史, 吉田 豊, 守山 義昭, 足立 伸次
    2008 年 56 巻 2 号 p. 211-219
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    2003年6月9日から9月10日にかけて天塩川水系のヤマトシジミを採取し軟体部および生殖巣指数の変化を調べるとともに,生殖巣の組織像から成熟時期の推定を行った。また,人工産卵誘発条件として最適な水温および塩分条件,並びに成熟時期と産出卵から着底稚貝までの生産性の関係について検討した。その結果,天塩川では雌雄ともに軟体部および生殖巣指数は6月上旬に低く7月上旬にかけて上昇し,その後短期間に急激に減少した。生殖巣の組織像は6月上旬から下旬にかけて成長期を示し,7月上旬には成熟期から放出期に移行していた。このことから軟体部指数および生殖巣指数の急激な減少は成熟卵および精子の放出によるものと推測された。また,供試貝を水温条件20~30℃に保った塩分0~10 psuの水に移行し産卵数から最適な水温および塩分条件を検討した結果,水温25℃,塩分5 psuの条件で最も多くの産卵がみられた。この条件を用いて7月7日~8月5日にかけて5回人工産卵誘発を行ったところ,7月9日に人工産卵を行った群において雌親個体あたりの産卵数が最も多く,また10日後における着底稚貝までの生残率が最も高かった。天塩川水系産ヤマトシジミにおいて人工種苗生産に適した時期は極めて限られた期間であり,成熟時期の把握が極めて重要であることが示唆された。
  • 中島 博司, 津本 欣吾, 沖 大樹
    2008 年 56 巻 2 号 p. 221-229
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    2004年から2006年の5~7月に,三重県鈴鹿市および津市の砂浜海岸の砕波帯において,砕波帯ネットを用いてトラフグ稚魚の出現について調べた。2004年5~6月に5個体,2005年5~6月に52個体,2006年6~7月に236個体のトラフグ稚魚が採集された。トラフグ稚魚の全長は最小 8 mm,最大42 mm で平均16.6 mm であった。2004年に津で採集された 2 個体を除く全ての稚魚は鈴鹿の砂浜海岸で採集された。これらの結果から,伊勢湾口の産卵場でふ化した仔魚は,5月下旬から6月中旬にかけて概ね全長 8 ~10 mm で伊勢湾奥部の鈴鹿市周辺海域の砕波帯に着底するものと推測された。また,鈴鹿に出現するトラフグ稚魚をモニタリングすることによって,伊勢湾における加入動向を早期に予測する可能性が示唆された。
  • ソンポート ウィーラクン, 青木 奈緒, 和田 新平, 畑井 喜司雄, 仁部 玄通, 平江 多積
    2008 年 56 巻 2 号 p. 231-235
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    養殖ブリから分離された Mycobacterium marinum の病原性を確認するため人為感染試験を実施した。人為感染魚にみられた肉眼所見は養殖ブリの Mycobacterium sp. 感染症と一致し,菌接種後 2 週間および 3 週間で観察された病理組織学的所見は自然発生例にみられたものと同一であった。以上のことから,供試した菌株は自然発生例の原因菌であると判断された。
  • 滝井 健二, 明楽 隆司, 瀬岡 学, 北村 誠悟, 栗藤 和治
    2008 年 56 巻 2 号 p. 237-243
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    マダイの成長に伴う消化率の変化や給餌量・間隔と飼育成績やエネルギー収支から,適正な給餌方法を明らかにしようとした。体重9.3,93および388 g の稚魚では,みかけのタンパク質・脂質消化率に違いはなく優れていたが,糖質消化率は成長に伴って僅かに向上する傾向にあった。一方,体重10および80 g の稚魚に市販配合飼料を異なる方法で給餌し,それぞれ20および36日間飼育したところ,日間給餌率と成長率は毎日飽食(S)および 4 日間に 3 日飽食(3/4S)が高く,次いで毎日飽食の 8 割(0.8S),隔日に飽食(1/2S)および毎日飽食の 6 割(0.6S)の順に減少した。しかし,飼料効率は0.6S,0.8S,S,3/4S および 1/2S の順に低下し,成長エネルギーは S,0.8S および0.6S で高く,熱量増加+自発的活動エネルギーは3/4S および1/2S で高かったことから,毎日,飽食量の 8 割を給餌するのが,無給餌日を設けるより効率かつ経済的であることが示唆された。
  • Biswajit Kumar Biswas, Saifuddin Shah, 滝井 健二, 熊井 英水
    2008 年 56 巻 2 号 p. 245-251
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2012/09/10
    ジャーナル フリー
    バングラデシュにおけるインドゴイ2種 Catla catla Cirrhinus cirrhosus の天然および人工種苗の成長について比較した。南西部 Jessore の淡水養殖池に 3 m3 の網生簀を設置し,それぞれの稚魚を収容して 8 週間飼育したところ,いずれの魚種でも天然種苗の成長率,飼料効率,肥満度および生残率は人工種苗より優れていた。この人工種苗の低い飼育成績は,養殖業者の親魚群の遺伝子管理や近親交配に関する低い認識に起因しており,今後の養殖業の発展に不可避の検討課題であることが示唆された。
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