水産増殖
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58 巻, 1 号
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  • Koh Ivan Chong Chu , Sitti Raehanah Muhd. Shaleh , 赤沢 憲明, 太田 康弘, 瀬尾 重治
    2010 年 58 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    ハタ科交雑魚チャイロマルハタ×タマカイの種苗生産技術を確立するために,卵発生と仔魚の発育を観察した。体重7.5kgのチャイロマルハタから搾出した卵は,直径806±20μm(平均±標準偏差)であり,1g当たりの卵数は3,505であった。タマカイの精液による受精後,卵は直径836±10μmであった。受精卵は水温28.0-29.5℃,塩分30.0pptで受精後17時間15分から19時間20分に孵化し,受精率および孵化率はそれぞれ91.0%および33.6%であった。孵化直後の仔魚は全長1.53±0.01mmであった。仔魚は開口し消化管が形成され,眼が黒化した孵化後3日に摂餌を開始した。孵化後10日からハタ科特有の尾部と肛門の間の体表に黒化部が現れ,第二背鰭および腹鰭の棘が著しく伸張した。孵化後40日より浮遊生活から底生生活へ移行を開始した。21,500尾の孵化仔魚から15,800尾の稚魚(平均全長28.4±2.5mm,孵化後50日)を生産した。
  • 米田 典子, 高橋 豊美, 高津 哲也
    2010 年 58 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    ヒレグロの資源維持および増強を目的に,2006年4月~2007年3月に北海道噴火湾から採集した個体の耳石による年齢査定を行い,漁獲時の年齢-体長データに基づいて成長解析を行った。耳石の不透明帯外縁は主に8~9月に形成される年周輪であり,この時期は孵化盛期とほぼ一致した。t(歳)時の体長をSLt(mm)とすると,成長式は雌でSLt = 393.1 [1-exp {-0.145 (t+0.081)}],雄でSLt = 393.1 [1-exp {-0.134 (t+0.088)}]と表された。噴火湾のヒレグロは山陰沖に比べて1歳時以降の成長速度が速く,この地域差には餌利用可能度が関与している可能性が考えられた。
  • Kyaw KYAW , 越塩 俊介, 石川 学, 横山 佐一郎, 菊池 弘太郎, 村岡 慶一
    2010 年 58 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    トラフグ低魚粉飼料におけるムラサキイガイの添加効果を明らかにするために,沿岸魚粉および分離大豆タンパク(SPI)主体の試験飼料にムラサキイガイ粉末(BM)を0~10%添加した飼料を作成し,トラフグ稚魚(平均体重27.0g)に50日間給餌した。魚粉単独飼料(魚粉添加量63%)を対照飼料として用い,その他の飼料には魚粉添加量を減らしてSPI を27%添加した。タンパク質含量を同じにするため,BM 添加量に応じて魚粉含量を調整した。飼育試験の結果,BM5.3%飼料区は BM 無添加区より有意に高い増重率,摂餌量,日間成長率および飼料転換効率を示し,また,有意差は検出されなかったものの対照飼料区より高くなる傾向を示した。以上の結果から魚粉含量を低減した際のトラフグ稚魚の成長や飼料転換効率の低下を BM 添加により改善できることが示唆された。
  • 渡邉 賢二, 安樂 和彦, Harold M. Monteclaro , Ricardo P. Babaran
    2010 年 58 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    コイ科魚類のカワムツとコイ,ハゼ科ヨシノボリ属魚類を用い,体表に分布する側線である表在感丘と,側線管が体表で開く部位である側線孔について,それらの形態,分布,分布数,感度極性を電子顕微鏡観察によって調べた。コイとカワムツの表在感丘数は体サイズの増加にともない増加した。表在感丘の頭部および体幹部での分布数はヨシノボリおよびカワムツで比較的類似したが,コイでの分布数は明白に多かった。一方で,1 枚の鱗に分布する表在感丘数の平均は3魚種で大差はなかった。側線孔はヨシノボリ属では頭部のみで認められ数は少なく,コイ,カワムツでは頭部と体幹部に広く分布していた。表在感丘の有毛細胞の分布から推定した表在感丘の感度極性は,3魚種において,頭部でより多様な方向に感度を示し,体幹部および尾鰭に分布する感丘は,多くが体軸と同じ方向に感度を持ち,一部は背腹方向にも感度を持つことが示された。
  • 小原 昌和, 小川 滋, 笠井 久会, 吉水 守
    2010 年 58 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    冷水病菌,せっそう病菌,IHNV および OMV で汚染したニジマス卵を供試して,等調液洗卵の除菌効果を定量的に明らかにするとともに,ニジマス卵を使用した感染試験を行い,卵内感染の防止効果について検証した。その結果,冷水病菌,せっそう病菌ではそれぞれ103CFU/ml,105CFU/ml,IHNV および OMV については104TCID50ml 程度の菌体あるいはウイルスが等調液洗卵により除去されることが明らかとなった。また,シャワー洗卵においては,等調液量を増加させることにより,冷水病菌およびせっそう病菌の除菌量が増加した。さらに,冷水病菌で高度に汚染した卵を濯ぎ洗卵した場合には,卵内感染の割合が低くなり,シャワー洗卵をした卵では卵内感染卵は検出されなかった。これらの結果から,等調液洗卵法は卵表面に存在する細菌,ウイルスの除菌あるいは除去効果があり,卵内感染のリスクを小さくするために有効な方法であることが示された。
  • 城野 草平
    2010 年 58 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    1989年1月から6月にかけてチリ共和国チロエ島 Hueihue において,チリウニの成長を調べるためにアオサとマクロシスティスの給餌による籠を用いた中間育成試験を実施した。Linao のカキ養殖垂下連に付着したチリウニの天然稚ウニを用いて5試験区を設定した。試験区1,2,3は密度試験(各1580,3160,5220個体収容)としアオサとマクロシスティスの混合給餌とした。試験区4,5は餌料試験(各アオサのみ,マクロシスティスのみ給餌)とし,各1820個体を収容した。149日間の飼育で平均殻径4.5-5.7 mm の稚ウニが10.7-14.8 mm に成長した。生残率はすべての区で70%以上を示した。もっとも成長が良かったのは試験区4の14.8 mm で,もっとも生残率が高かったのは試験区1の91%であった。チロエ島海域はアオサとマクロシスティスが豊富でウニの中間育成に有利であった。
  • 城野 草平
    2010 年 58 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    チリウニ Loxechinus albus 資源の有効利用のため,1988年8月から1989年2月にかけて6ヶ月間の移植試験をチリ共和国チロエ島で実施した。海藻に乏しい Linao に生息する生殖腺の発達が悪いチリウニ1000個体(平均殻径58.6 mm)を海藻が豊富な Hueihue に設置した400 m2 の試験区に移植した。移植後2ヶ月で生殖腺指数が8.5から13.7に改善した。移植後6ヶ月の回収率は83%(サンプリング個体を含めれば90.4%)であった。チリウニの移動範囲は狭かった。Linao ではチリウニはネットに収容した海藻にあまり集まらず,その数は海藻設置4, 8, 15, 21日後にそれぞれ2, 10, 15, 20個体であった。
  • 城野 草平
    2010 年 58 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    チリ共和国チロエ島東部海域において2種類のウニ,Arbacia dufresneiPseudechinus magellanicus の生殖と浮遊幼生について調査した。1987年3月から1988年2月にかけて,Hueihue(A. dufresnei)と Teupa(P. magellanicus)において成ウニをそれぞれ採集し生殖腺の変化を調べた。両種の生殖腺指数変化から産卵期は8月から10月と推定された。また Hueihue(1987年3月から1988年2月,1988年10月から1989年3月)と Teupa(1987年3月から1988年1月)においてプランクトンをそれぞれ採集して浮遊幼生の出現状況を調べた。A. dufresnei の浮遊幼生は5月から11月にかけて,P. magellanicus のそれは8月から10月を中心に出現し,変態期幼生の出現時期は比較的明瞭であった。またレロンカヴィ入江の Caicura において20,000個体/m2P. magellanicus の稚ウニ(平均殻径2.6 mm)の生息が観察された。
  • Kyaw Kyaw, 越塩 俊介, 石川 学, 横山 佐一郎, 菊池 弘太郎, Asda Laining , 村岡 慶一, 秋元 雄悟
    2010 年 58 巻 1 号 p. 75-83
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    クルマエビ稚エビにおけるムラサキイガイ抽出極性脂質(MPL)の効果を明らかにするために,MPL 添加量の異なる6種類の飼料(0%,0.3%,0.6%,1.2%,1.5%)を50日間給餌し,成長に対する影響を調べた。稚エビ(平均体重0.32 g)を15尾ずつ,45 l 角型水槽に収容し1日当たり体重の10~12%の飼料を2回に分けて給餌した。飼育試験の結果,MPL 1.2%および1.5%飼料区が他の区に比べ有意に高い増重率,摂餌量,日間成長率および飼料転換効率を示し,クルマエビ稚エビにおける MPL の有効性が確認された。また,飼料中極性脂質含量と日間成長率を用いた broken line analysis により,クルマエビ稚エビにおける MPL の至適添加量は1.19%であった。
  • 中島 博司, 新田 朗, 藤田 弘一
    2010 年 58 巻 1 号 p. 85-96
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    トラフグの季節的な遊泳行動を明らかにするため,1997年10月から1999年4月にかけて,アーカイバルタグ標識を装着したトラフグ21個体(全長37~53 cm)を三重県沿岸域に放流した。回収された7個体について解析したところ,トラフグは,産卵期を除き,主に水深25 m 以浅を遊泳し,時々潜水行動を示した。一方,産卵期においては,雄のトラフグは産卵場の海底20~35 m に留まり,頻繁に表層まで浮上する行動を示した。このことから,トラフグは通常表層遊泳性であると考えられた。トラフグの鉛直行動は,秋季は最大水深35~80 m,冬季は65~115 m と変化し,冬季になると,沖合に移動することが示唆された。アーカイバルタグが記録した水温範囲は11~29°Cであったが,トラフグの適水温は15~24°Cと判断された。
  • 水野 伸也, 寺西 哲夫, 佐々木 典子, 小出 展久
    2010 年 58 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    ビン式孵化器を用いたワカサギ卵の集約的管理では,収容前に卵の粘性除去処理が必要である。本研究では,産業廃棄物ホタテ貝殻未焼成粉末(貝粉末)に着目し,卵の粘性除去,孵化率及び孵化仔魚の健苗性に与える貝粉末懸濁水の卵への処理効果を調べた。小規模試験の結果から,5 g/l 以上の濃度で貝粉末処理を行えば,従来行われてきた5 g/l カオリン懸濁水処理と同等ないしそれ以上の粘性除去効果が得られることが示された。また,ビン式孵化器を用いた大規模試験の結果から,5 g/l 及び20 g/l の貝粉末処理を行えば,従来処理と同等の生残率,孵化率並びに孵化仔魚の汽水耐性及び絶食耐性を得られることが明らかになった。一方で,粉塵被害の懸念から貝粉末など微粉末を扱う場合には,使用を最小限に止めることが望ましい。以上の結果から,5 g/l 貝粉末の懸濁水処理が,ワカサギ卵集約的管理のための卵粘性除去に有効な手段であることが示された。
  • 今井 正, 秋山 信彦
    2010 年 58 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    テナガエビ幼生の水面上の水槽壁面への付着による死亡を防ぐことを目的として,幼生の光走性を利用し,光の照射方向の違いが幼生の生残に及ぼす影響を調べた。第1~9ゾエア期幼生では全て正の光走性を示したが,ポストラーバでは走性が見られなかった。ビーカーの上側から光を照射した場合,ゾエア期幼生はビーカー全体に分散する傾向があった。この状態で飼育すると,ポストラーバに到達する幼生は60~75%で,死亡個体のほとんどは第7~9ゾエア期であり,水面よりも上のビーカー壁面へ付着して死亡した。ビーカーの下側から光を照射した場合には,ゾエア期幼生はビーカー底面部に集まり,この状態で飼育すると,幼生の付着死は5%以下に抑えられ,生残率は85%以上であった。このように,テナガエビ幼生を飼育する場合,水槽の下側から光を照射することにより,正の光走性を持つ幼生を水槽底面付近に集め,水面よりも上の水槽壁に付着して死亡する現象を低減できることが示された。
  • 高木 基裕, 大山 昭代, 清水 孝昭
    2010 年 58 巻 1 号 p. 113-120
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    野生ドジョウ9集団と人工ドジョウ2サンプルの遺伝的多様性と撹乱について3つのMSマーカーにより評価した。遺伝的多様性は集団によって異なり、平均ヘテロ接合体率(期待値)は0.435から0.834であった。釣具店,食料品販売店および重信川水系鉾田池の集団において顕著なホモ接合体過剰を示した。また,食料品販売店のサンプル(中国産)と釣具店,および鉾田池のサンプルは県内の他の自然集団と大きく遺伝的に分化した1つのクラスターを形成し,クラスター内の遺伝的距離は互いに近似した。以上のことより,食材や釣り餌として愛媛県内に持ち込まれた国外産ドジョウの定着が示唆された。
  • 紺野 香織, 坂野 博之
    2010 年 58 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    ヒメマスの動物プランクトンに対する餌選択性を明らかにした。ヒメマスの胃内容物中には動物プランクトンのみが認められた。胃内容物中のプランクトン組成は環境水中の組成と異なり,大型のハリナガミジンコが優占していた。一方,環境水中で最も大型のケンミジンコに対して,選択性は認められなかった。以上のことから,ヒメマスは特定の動物プランクトン種を選択的に摂餌することが示された。過剰なヒメマスの放流は選択的摂餌を介して動物プランクトンの群集構造を改変し,ヒメマス資源に悪影響を与える可能性が考えられた。
  • 川村 拓生, 秋山 信彦
    2010 年 58 巻 1 号 p. 127-133
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    本研究ではヌマエビとヌカエビ2種の生態的な差異を明らかにするために,両種の幼生発達と塩分応答を比較した。両種のゾエア期の発達段階は共に8段階で違いはみられなかったが,ポストラーバへの到達日数はヌマエビでは26~38日で,ヌカエビの15~18日より遅かった。また,付属肢の発現はヌカエビの方がヌマエビよりも早い発達段階であった。無給餌で5段階の塩分条件で幼生を飼育したところヌマエビでは脱皮せずに全てが死亡したが,ヌカエビでは塩分34.0 psu 以外の条件で第3ゾエア期まで到達する個体がみられた。2種とも塩分8.5 psu と17.0 psu でそれ以外の塩分より長く生存した。34.0 psu ではヌマエビが4.2~6.1日生存したが,ヌカエビでは1~1.4日と著しく短かった。以上の結果から2種はそれぞれの生活環境に適応した発達過程を持ち,ヌカエビでは淡水適応が進んだ結果,高塩分での生残能力が失われていることが明らかとなった。
  • 杉崎 みお, 浜崎 活幸, 團 重樹, 北田 修一
    2010 年 58 巻 1 号 p. 135-142
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
    希少生物資源であるヤシガニの増養殖を目指した人工繁殖技術開発研究の一環として,5 段階の異なる水温に調節した容器(平均21.3,24.6,27.0,29.8,32.4°C)で飼育したゾエアとメガロパの成長と形態形成を調べた。また,500 l 水槽2基を用い,水温約29°Cでふ化からメガロパまで大量飼育を行った。ゾエアの頭胸甲長は水温の上昇にともない大型化した。一方,メガロパで口器として機能する顎脚外肢長の頭胸甲長に対する割合は水温の上昇にともない減少する傾向を示した。さらに,27.0~29.8°Cではゾエアの尾肢剛毛数が多くなり,メガロパの鋏脚が大型化するなど,幼生の形態形成が進む傾向がみられた。500 l 水槽ではメガロパまでの大量飼育に成功し,生残率はいずれも高く,71.1%と81.6%を示した。以上の結果から,ヤシガニ幼生の飼育には,水温27~30°Cが適しているものと判断された。
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