ビン式孵化器を用いたワカサギ卵の集約的管理では,収容前に卵の粘性除去処理が必要である。本研究では,産業廃棄物ホタテ貝殻未焼成粉末(貝粉末)に着目し,卵の粘性除去,孵化率及び孵化仔魚の健苗性に与える貝粉末懸濁水の卵への処理効果を調べた。小規模試験の結果から,5 g/
l 以上の濃度で貝粉末処理を行えば,従来行われてきた5 g/
l カオリン懸濁水処理と同等ないしそれ以上の粘性除去効果が得られることが示された。また,ビン式孵化器を用いた大規模試験の結果から,5 g/
l 及び20 g/
l の貝粉末処理を行えば,従来処理と同等の生残率,孵化率並びに孵化仔魚の汽水耐性及び絶食耐性を得られることが明らかになった。一方で,粉塵被害の懸念から貝粉末など微粉末を扱う場合には,使用を最小限に止めることが望ましい。以上の結果から,5 g/
l 貝粉末の懸濁水処理が,ワカサギ卵集約的管理のための卵粘性除去に有効な手段であることが示された。
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