水産増殖
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58 巻, 4 号
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原著論文
  • 澤山 英太郎, 高木 基裕
    2010 年 58 巻 4 号 p. 441-446
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    種苗生産場で生じたヒラメの逆位個体について,マイクロサテライト DNA マーカーを用いた遺伝的多様度の解析および DNA 親子鑑定により,発生要因の推定を行った。種苗生産には17個体の親魚を用い,96日齢時に正常個体52個体と逆位個体49個体を得た。ヘテロ接合体(観察値,期待値,観察値/期待値)およびアリル頻度において,正常個体群と逆位個体群で違いは見られなかった。マイクロサテライトマーカー座の多型により全ての親子関係を判別できた。親子鑑定の結果から,正常個体は7個体のメス親魚と5個体のオス親魚からなる14組から生じていることが分かり,また逆位個体は7個体のメス親魚と7個体のオス親魚からなる18組から生じていることが分かった。1個体のメス親魚は他の親魚よりも高い割合で逆位個体を産んでいることがわかった。以上の結果から,本異常の発生要因は後天的な影響が強いものの,一部のメス親魚は遺伝的もしくは他の母性要因により逆位個体を産生していることが示唆された。
  • 山元 憲一, 半田 岳志, 松原 利晃
    2010 年 58 巻 4 号 p. 447-451
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    アコヤガイを用いて,Chaetoceros glacilis の投与前後の換水量および酸素摂取量の変化を調べた。C. glacilis の投与後,80~97 cells/ml で換水量を増加させ,119~15,324 cells/ml では増加させた状態をほぼ一定に維持していた。しかし,33,021 cells/ml 以上では増減を繰り返すように変化させた。10,000 cells/ml で投与すると,換水量を2.8倍増加させたが,酸素摂取量はほぼ同じ値を示していた。
  • 山元 憲一, 半田 岳志, 松原 利晃
    2010 年 58 巻 4 号 p. 453-457
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    アコヤガイを用いて,養殖の現場で行われている挿核までの一連の操作が生理機能に及ぼす影響を明らかにする目的で,Chaetoceros glacilis を投与する前後の換水量および酸素摂取量の変化を調べた。換水量は抑制を施さずに飼育していた貝(自然貝)と抑制貝ではほぼ同じ値を示したが,抑制後オゾン処理を施した貝(仕立て貝)および抑制後オゾン処理を施して挿核した貝(挿核貝)では前者の約1/2の値を示した。酸素摂取量は抑制貝,仕立て貝および挿核貝ではほぼ同じ値を示したが,これらは自然貝の約1/2の値を示した。以上の結果から,オゾン処理および挿核手術は代謝量に影響を与えないが,オゾン処理は換水運動に影響を与えていることが明らかとなった。
  • 井口 恵一朗, 坂野 博之, 武島 弘彦
    2010 年 58 巻 4 号 p. 459-463
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    孵化直後の海産アユが卵黄吸収を経て飢餓に至る過程を明らかにするため,一腹仔を材料に,異なる塩分条件(0‰淡水,20‰汽水,40‰ 海水と水温18, 22, 26°Cの組み合わせ)のもとで発現する形態的変化ならびに生理的変化を追跡した。外観から卵黄を識別できなくなるタイミングを見計らって回復不能点とし,以降を飢餓の状態にあると判定した。条件に応じて,回復不能点を通過する孵化後日数ならびに斃死が始まる孵化後日数は変異したが,生存期間の中程で飢餓状態に陥る実験群もあった。消耗程度の指標として核酸比(RNA/DNA)を適用したところ,いずれの実験群においても経時的な低減が認められたが,減衰パタンは群間で同様ではなかった。すなわち,高塩分あるいはまた高水温に曝露されるほど,消耗速度が高まった。自然界においては,孵化直後に汽水を体験することなく,いきなり海水に曝される状況が実現すると,仔アユの生残確率は低下することが予想された。
  • 一色 正, Giannakou Eleni , 植田 豊, 長野 泰三
    2010 年 58 巻 4 号 p. 465-471
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)をタケノコメバルとヒラメに筋肉内接種後,水温15°Cで飼育して感受性を比較した。その結果,103.3,105.3および105.3TCID50/尾接種群の累積死亡率はヒラメでそれぞれ40,70および100%であったのに対して,タケノコメバルではそれぞれ90,100および100%となり,タケノコメバルはヒラメよりも高い感受性を示すことが確認された。VHSV を102.8TCID50/尾接種したタケノコメバルを水温15°Cと20°Cで飼育して水温別の感受性を比較した結果,累積死亡率は15°C群で70%および20°C群で13%であった。一方,VHSV の感染を耐過したタケノコメバルに VHSV を102.8TCID50/尾接種後,水温15°Cで同様にして飼育した結果,累積死亡率は17%に止まり,対照魚に比べて感染耐過魚は感染防御免疫を獲得している可能性が示唆された。
  • 島田 裕至
    2010 年 58 巻 4 号 p. 473-479
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    室内培養条件下で野生スサビノリ3株(北海道函館市周辺海域で採取した S1-S3株)とナラワスサビノリ養殖品種 U-51株の葉状体の生長速度,葉長葉幅比,外形,単胞子放出期,成熟期,色調,低栄養塩下における色調の計7形質を比較し,ノリ養殖育種における野生スサビノリの育種素材としての可能性を検討した。
    野生スサビノリの生長速度および色調は,U-51株と異なる特性を示した。S2および S3株の葉状体の色調は,U-51株に比べて黒みと赤みが強く,また,S3株は U-51株よりも高い生長速度を示した。また,野生スサビノリ3株の間においても,生長速度,葉長葉幅比,単胞子放出期の特性が異なっていた。
    これらのことから,野生スサビノリはノリ養殖にとって有用な形質特性を有しており,また,いくつかの形質ではその特性に多様性を有していることが明らかになり,今後のノリ養殖育種に野生スサビノリを育種素材として活用できる可能性が示された。
  • 山本 剛, 川合 研児, 大嶋 俊一郎
    2010 年 58 巻 4 号 p. 481-489
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    平均体重4.7~45.8 g のヒラメおよび Tenacibaculum maritimum 菌株を用い,腹腔内注射法および2種類の浸漬法で感染試験を行った。菌の培養時間については,25°Cで24および50時間培養菌のいずれもが高い死亡率を示した。腹腔内注射感染法は死亡率が低く,2種類の浸漬感染法のなかでは,魚を浸漬した水槽に入れたまま海水を給水して飼育する方法(浸漬・希釈法)のほうが,浸漬後に別の水槽で魚を飼育する方法よりも高い死亡率を示した。水温17~26°Cで感染を行うと安定した死亡率を示したが,16°C以下および27°C以上では死亡率が低く不安定であった。浸漬・希釈法による死亡魚は本症の症状をよく再現しており,体表患部に T. maritimum の増殖が認められた。なお,浸漬液中の菌濃度が十分でも,海水による培養液の希釈度が高いと感染が起こりにくいことから,菌体外物質の重要性が示唆された。
  • 芳賀 穣, 内木 敏人, 田崎 陽平, 武部 孝行, 久門 一紀, 田中 庸介, 塩澤 聡, 中村 年宏, 石田 修三, 井手 健太郎, 升 ...
    2010 年 58 巻 4 号 p. 491-499
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    全長14.8 mm のクロマグロ仔魚(孵化後18日齢)にハマフエフキ浮上卵,日齢1または3の孵化仔魚,およびカゼインを主なペプチド源とする微粒子配合飼料を給餌して6日間飼育した。また,対照として絶食区を設けた。その結果,浮上卵および絶食区では3日目までにすべての魚が斃死した。一方,日齢3のハマフエフキ孵化仔魚を給餌して飼育した区では,成長が改善された。日齢3のハマフエフキ孵化仔魚の粗タンパク質含量および必須アミノ酸含量は,日齢1のものよりも多かった。以上から,日齢3のハマフエフキ孵化仔魚がクロマグロ仔魚の餌として適していることが示唆された。また,微粒子配合飼料は,約4割の個体で摂餌が確認され,カゼインペプチドを配合した微粒子飼料を摂餌することが示唆された。
  • 田中 庸介, 南 浩史, 石樋 由香, 久門 一紀, 江場 岳史, 西 明文, 二階堂 英城, 塩澤 聡
    2010 年 58 巻 4 号 p. 501-508
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    クロマグロ人工種苗による餌料の利用実態と成長差との関連を検討するために,安定同位体比(δ13C,δ15N)を個体毎に分析した。シオミズツボワムシとアルテミア幼生を給餌する水槽(プランクトン区)とふ化仔魚のみに切り替えた水槽(ふ化仔魚区)を設定した。ふ化仔魚区の成長はプランクトン区より有意に成長が速かった。また,ふ化仔魚区のδ13C とδ15N は指数関数モデルで表され,プランクトン区とは異なるパターンを示した。種苗生産水槽から採集されたクロマグロ仔魚のδ15N を分析した結果,高成長個体と低成長個体ではδ15N の値が有意に異なり,成長に対応して餌料の利用実態が異なることが示された。
  • 大貫 貴清, 鈴木 伸洋, 秋山 信彦
    2010 年 58 巻 4 号 p. 509-516
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    静岡県浜松市松島町で確認された日本初記録のテナガエビ亜科の形態を調べた結果,Palaemonetes sinensis と同定され,移入種であると考えられた。本種は外部形態が在来種であるスジエビ Palaemon paucidens に酷似するが,大顎の触髭の有無を確認することで両種を確実に判別することができる。また,本種の生活史に関する基礎的知見を得る一環として,2005年10月~2007年9月に雌の生殖周期を調査した。卵巣の組織学的観察により,卵巣卵の発達過程を6期に分類し,その結果や卵巣の内部構造などから,卵巣の成熟段階を増殖相,卵黄蓄積相,成熟相,排卵相の4相に分類した。本種の雌の成熟と産卵は春分点からの長日化と,水温の上昇によって開始することが示唆された。また同所での雌の生殖周期は,3月から卵巣卵に卵黄蓄積がおこり,5~9月のおよそ4ヶ月間に複数回産卵することが示唆された。
  • 太田 博巳, 有田 香穂里, 磯和 潔, 石川 卓, 青木 秀夫
    2010 年 58 巻 4 号 p. 517-523
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    アコヤガイの種苗生産技術の向上に関する研究の一環として,24穴のマイクロプレートを用いた多種類の人工授精実験を行う方法を検討した。アコヤガイから採集した卵を各ウェルに2万粒入れ,媒精精液量,媒精時のアンモニア濃度,媒精時間について検討した。媒精精液量については,受精率は1.25μl 以上では高く,それ以下では低下したが有意差は認められなかった。アンモニア濃度については,0.563 mM 以上で高い受精率を示したが,0.375 mM 以下では有意に低下した。媒精時間は3分以上60分まで高い受精率を示したが,それ以下では有意に低下した。これらの結果から得られた条件を用い,マイクロプレート上で最大24種類の受精条件を一度に検討することが可能となった。
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