水産増殖
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61 巻, 4 号
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原著論文
  • 小谷 知也, 伏見 浩, 太田 有香, 宮嶋 暁, 須藤 健介, 林 雅弘, 佐藤 信光, 佐藤 秀一
    2013 年 61 巻 4 号 p. 321-330
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    本研究はマダイ種苗飼育成績改善を目的として,ワムシ栄養強化剤中の DHA 量について検討した。DHA 量の異なる4種類の栄養強化剤(0~60%)および市販強化剤を用いてワムシを強化した。強化剤中の総脂肪酸中 DHA 量が20%以上の時,ワムシ単独給餌期の仔魚の成長を改善できたが,アルテミアの給餌が始まった後,強化剤中 DHA 量が60%であった試験区の魚の成長が低下した。したがって,マダイ種苗生産ではワムシ強化剤中の DHA 量は総脂肪酸中20あるいは40%が適していると考えられる。
  • 鵜沼 辰哉, 野口 浩介, 澤口 小有美, 長谷川 夏樹, 町口 裕二
    2013 年 61 巻 4 号 p. 331-339
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    フロック状のマナマコ用配合飼料を開発した。海藻粉末と市販のナマコ用配合飼料を混合し,ここに約2.4倍量の無機成分(珪藻土とゼオライト)を加え,海藻粉末に含まれるアルギン酸を粘結剤として攪拌しながら塩化カルシウムでゲル化することにより,フロック状に粗い粒子の集合した飼料を調製した。この試験飼料を体長約7.8 mm の稚ナマコに29日間与えたところ,生残率,日間成長率とも海藻粉末区,市販ナマコ用配合飼料区よりも有意に高かった。また,体重約96 g の親ナマコに42日間与えたところ,日間成長率は市販ナマコ用配合飼料区よりも有意に高く,生殖巣指数も高い傾向を示し,組織学的観察から卵形成がより進んだと考えられた。これらの結果から,本飼料は稚ナマコ育成,採卵用親ナマコ養成の双方に有効であると考えられた。
  • Stenly Wullur , 吉松 隆夫, 田中 秀樹, 大谷 諒敬, 阪倉 良孝, 金 禧珍, 萩原 篤志
    2013 年 61 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    ウナギ Anguilla japonica の仔魚飼育にはアブラツノザメ Squalus acanthias の卵を原料とする懸濁態飼料が用いられている。しかし,これをウナギ種苗を量産するために十分量確保できる見込みはなく,大量に確保可能な代替飼料を探す必要がある。本研究では微小動物プランクトン(Proales similisSynchaeta sp.,Keratella sp.,Brachionus rotundiformisB. angularis)とカイアシ類(Paracyclopina nana)のノープリウス幼生,懸濁態飼料(対照区)を用い,ウナギ仔魚の摂餌行動観察を通じて餌料としての可能性を検討した。孵化後6,7,8日目の仔魚の摂餌率はサメ卵ベースの飼料で26.7-100%,Proales similis で20-46.7%,Synchaeta sp. で 0-6.7%となった。孵化後14日目の仔魚ではサメ卵飼料とProales similis で100%と増加し,B. rotundiformis では53.3%, Synchaeta sp.で20%,Keratella sp.で13.3%, B. angularis で6.7%となった。このとき, 68.9%のサメ卵飼料,37.2%の Proales similis,1.0%の Synchaeta sp. が中後腸に達していたが,他のワムシ類は前腸部のみにみたれた。以上の結果から,今回用いた微小動物プランクトンの中では Proales similis が,ウナギ仔魚飼育の餌料生物として最も有望であることが示された。
  • 高木 修作, 村田 壽, 後藤 孝信, 幡手 英雄, 山下 浩史, 高野 晃, 故宇川 正治
    2013 年 61 巻 4 号 p. 349-358
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    無魚粉飼料で飼育したブリの飼育成績は,飼料へのタウリン補足により改善されることが明らかにされている。しかし,ブリをタウリン補足無魚粉飼料で,稚魚から成魚まで飼育できるかは明らかにされてない。本研究では,魚粉飼料(FM)を対照とし,タウリンを補足した濃縮大豆タンパク質(SPC)ベースの無魚粉飼料(TS)で,ブリ稚魚(開始時体重470 g)を65週間飼育して飼育成績を調べた。TS 区では, タウリン補足 SPC 飼料でブリを稚魚から成魚まで65週間飼育できた。しかし,TS 区の飼料脂質含量が低かったため, FM 区に比べて TS 区の成長率は著しく低く,血漿化学成分,肥満度および比肝重の各値は劣った。以上の結果から,タウリン補足により SPC ベース無魚粉飼料でブリを稚魚から成魚まで飼育可能であり,その飼育成績や生理状態は飼料の脂質含量を高めることにより改善できると示唆された。
  • 山本 昌幸, 片山 知史
    2013 年 61 巻 4 号 p. 359-365
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    浅海域において多く分布するササウシノシタ Heteromycteris japonica の成長と産卵期を調べるため,瀬戸内海において稚魚と成魚をそれぞれ 2 m 桁網と小型底びき網を用いて採集した。雌の生殖腺は 5 月~ 6 月に高く,着底直後の稚魚は 6 月~ 7 月に採集された。これらの結果から,本種が 5 月~ 6 月に産卵することが示唆された。耳石(扁平石)の横断切片を作成して,耳石の不透明帯を観察し,これが年齢形質であることを確認した。検体(全長:76~158 mm)のオスとメスの最大年齢はそれぞれ 9 歳と11歳であった。Von Bertalanffy の成長式は,オスでは Lt = 123.6 [1-e-1.15(t+0.03)],メスでは Lt = 138.1 [1-e-0.99(t+0.03) ]となった。
  • Imen Hanini , Md. Shah Alam Sarker , 佐藤 秀一, 芳賀 穣, Serge Corneillie , 大 ...
    2013 年 61 巻 4 号 p. 367-375
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    魚粉を50%含む飼料(FM50)を対照として,魚粉を20%まで低減した飼料(FM20),FM20にタウリンを0.2%添加した飼料(FTE),フィターゼを1000FTU/g 添加した飼料(FTP),酵素混合(アミラーゼ,プロテアーゼ,キシラナーゼ,グルカナーゼ,ペクチナーゼ,セルラーゼ,フィターゼ)をタウリンとともに0.05%または0.1%添加した飼料(FTE0.05および FTE 0.1)を14.3 g のマダイに12週間給餌し,成長,消化吸収率および体組成への影響を調べた。FM20区で成長が最も劣り,タウリンおよびフィターゼ添加により改善がされたが,対照区には及ばなかった。一方,タウリンおよび酵素混合の併用効果により,対照区に匹敵する成長が得られた。また,フィターゼおよび酵素混合の添加により,リンおよびタンパク質の消化吸収率が改善された。以上より,酵素混合およびタウリンの相乗効果が示唆された。
  • 早川 浩一, 田中 優平, 駒澤 一朗
    2013 年 61 巻 4 号 p. 377-382
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    カギイバラノリの陸上水槽による養殖技術開発のための基礎的な生理的特性を把握することを目的に,室内において培養実験を行い藻体の生長におよぼす水温,光,栄養塩の種類および濃度について検討を行った。その結果,水温は18~27°Cの範囲(相対生長速度8.6~11.5% day-1),光強度は100μmol photons m-2 s-1以上(相対生長速度11.2~17.9% day-1)で良好な生長を示した。また,窒素源としては硝酸態窒素が適し,10μM 以上添加することで良好な生長(7.9~10.2% day-1)を示した。この結果から,八丈島において天然海水をポンプアップして,屋外で陸上水槽による養殖を行う場合,水温および光強度はカギイバラノリの生長至適範囲の中にあるものの,栄養塩としての硝酸態窒素濃度は,その生長を制限する可能性が高く,施肥の必要性が明らかとなった。
  • 森田 晃央, 山本 圭吾, 西垣 友和, 遠藤 光, 竹野 功璽
    2013 年 61 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    フサイワズタ養殖のための最適な生長条件について知見を得るため,屋外水槽において本種を培養した。フサイワズタの収量の指標とした増重率は,日積算光量子量が生長にとって十分な20.0 mol·m-2·d-1以上であり,かつ水温が16.2°C以上の条件下で良好であった。匍匐茎伸長量は水温に対応して変化する一方で,直立茎形成数と直立茎伸長量は,水温より日積算光量子量に対応して変化した。海産藻類の生長と形態形成は,水温と日積算光量子量が強く影響することが知られているが,本種の直立茎の形態形成に対しても光強度は強い影響を与えることが示唆された。
  • 杉山 勇作, 上野 幹憲, Cyril Glenn Perez Satuito , 山下 憲司, 山口 健一, 小田 達也
    2013 年 61 巻 4 号 p. 389-394
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    単細胞緑色微細藻類 KNK-A001 乾燥粉末のマガキ稚貝及びワムシに対する餌料効果について調べた。KNK-A001 乾燥粉末のみでのマガキ成長は通常の餌料であるキートセロス投与区とほぼ同程度の成長を示したが,対象として用いたクロレラ投与区の成長は KNK-A001 投与区に比べ劣っていた。クロレラ投与区のマガキ排泄物中に未消化と考えられる粒子状物質が多数観察され,マガキ幼生はクロレラの固い細胞壁を分解できないと推定された。KNK-A001 投与区の排泄物中にはこの様な粒子状の存在は確認できず,分解されたと推定される。おそらく KNK-A001 の細胞構造学的特徴がマガキ幼生に分解吸収されやすく,この事が良い餌料効果に繋がったと推定される。さらに,KNK-A001 のワムシに対する餌料効果も見出された。以上より,KNK-A001 乾燥粉末は有用な餌料として養殖産業に利用できる可能性が示唆された。
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