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阿部 真比古, 藤田 雄二, 小林 正裕, 藤吉 栄次, 玉城 泉也, 福井 洋平, 里見 正隆, 村瀬 昇
2015 年 63 巻 1 号 p.
1-8
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
プロトプラストの無菌培養技術の確立へむけて無菌プロトプラストの分離方法を検討した。また,プロトプラストの生残と生長に影響しない,あるいは影響の少ない抗生物質の探索とその濃度について調べた。その結果,葉状体を0.5%クエン酸海水で除菌処理することにより,無菌のプロトプラストを分離することができた。使用した12種類の抗生物質のうちネオマイシン,アンピシリン,ペニシリンやストレプトマイシンは,プロトプラストの生残にほとんど影響しなかった。また,ネオマイシンやアンピシリンの添加は,対照区に比べ生長が1.1~2.7倍となり,ペニシリンやストレプトマイシンでは抑制された。さらに,ネオマイシンの添加は,80%以上の細胞で仮根を形成した。以上のことから,プロトプラストの培養では上記4種の抗生物質の使用が望ましく,本研究結果はプロトプラストの生残や生長,細胞分化に関与する要因を明らかにできるかもしれない。
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長谷川 夏樹, 日向野 純也, 藤岡 義三, 石樋 由香, 水野 知巳, 森田 和英, 山口 恵, 今井 芳多賀, 浅尾 大輔, 尾崎 善信 ...
2015 年 63 巻 1 号 p.
9-16
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
三重県大浦湾においてコンテナ容器を用いた垂下方式および干潟に設置した網袋でのアサリ飼育試験を行った。その結果,干潟での網袋飼育にくらべ垂下方式での飼育においてより良好な成長や栄養状態が確認されたが,垂下方式の試験区では,容器外への散逸などによるものと考えられるアサリ個体数の大幅な減少が発生した。垂下飼育におけるアサリの成長は,基質の深さが浅い試験区(36 mm)にくらべ深い試験区(72 mm)において優れていた。一方,垂下方式での飼育では,基質の種類(礫と軽石)によるアサリの成長の有意な差は検出されなかった。これらの試験結果から,付加価値の高い大型のアサリを効率的に生産するには,基質の深さに配慮した垂下養殖が適当であり,深さを増すための基質容量の増加に付随した重量の増加による垂下量の抑制や作業負担の増加は,垂下養殖に用いられている砂や砂利に比べ軽量な軽石を基質に用いることで緩和できることが明らかとなった。
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Kamarudin Ahmad Syazni , 笘野 哲史, 上野 香菜子, 大原 健一, 海野 徹也
2015 年 63 巻 1 号 p.
17-27
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
キチヌ
Acanthopagrus latus は日本の太平洋沿岸に生息し,重要な漁業資源となっている。本研究では高感度マイクロサテライト DNA マーカー10座(
n=312)および mtDNA 非コード領域の部分配列(
n=42)を用いて,西日本7集団の遺伝的多様性と集団構造の推定を行った。その結果,MS マーカーでは有効アリル数22~47,平均ヘテロ接合度の観測値0.840~0.904とすべての集団で高い遺伝的変異を示した。同様に mtDNA も高い多様性を示した。7集団を単集団と仮定した AMOVA 解析では,遺伝的分化指数(Global
FST)は MS マーカーで-0.00024(
P>0.05),mtDNA で0.016(
P>0.05)となり,集団間での有意な遺伝的分化は認められなかった。本種の河口周辺への依存性は高いが,発育初期の浮遊期に起因する遺伝子流動によって集団間の分化が妨げられていると考えられた。
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津崎 龍雄, 吉田 一範, 堀田 卓朗, 中川 雅弘, 山田 真之, 佐藤 秀一, 輿石 友彦, 前野 幸二, 秋山 敏男, 石田 典子
2015 年 63 巻 1 号 p.
29-38
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
魚粉タンパク源を濃縮大豆タンパク等の植物性タンパク源およびポークミール等の動物性タンパク源に代替し,更にタウリンの他に摂餌促進物質と酵素混合液などを添加した完全無魚粉化 EP 飼料を試作して1歳魚のブリ(平均体重753 g)に給与し,約6ヵ月間飼育した。その結果,対照区と無魚粉区には明確な成長差は認められず,生残率においてもほぼ同等の成績であった。また,日間増重率,日間給餌率,増肉係数およびタンパク効率では,夏期のポークミール区でタンパク効率がやや劣ったものの,その他の項目は対照区と大きな差異はなかった。これらのことから魚粉を完全に植物性タンパク源や動物性タンパク源に代替してブリ1歳魚に給与しても,魚粉飼料と同等に養成できることが明らかとなった。
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笘野 哲史, 上田 幸男, 笠岡 祝安, 海野 徹也
2015 年 63 巻 1 号 p.
39-47
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
種子島周辺のアオリイカ類の資源組成と産卵水深を明らかにするため,シロイカで開発したマイクロサテライト10座と mtDNA の COI 前半部塩基配列を DNA マーカーとした種判別方法を検討した。その結果,シロイカおよびアカイカにはマイクロサテライトマーカーのアリル型や COI 前半の塩基配列に差異が認められ,種判別に有効であることがわかった。種子島沖に設置された人工産卵礁(水深20 m,40 m,50 m)より得られた卵の種判別を COI 前半の塩基配列に基づいて行ったところ,水深20 m を除いて,全てアカイカに由来すると判定された。以上の結果から,アカイカの産卵水深はシロイカより深く,水深40~50 m と考えられた。また,本研究で用いた COI 領域の部分配列を用いて,インド太平洋海域におけるアオリイカ類の系統関係の推定が可能で,ベトナムとインドネシアにおいてもアカイカとシロイカの混在が示唆された。
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遠藤 友樹, 金子 誠也, 猪狩 健太, 加納 光樹, 中里 亮治, 亀井 涼平, 碓井 星二, 百成 渉
2015 年 63 巻 1 号 p.
49-58
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
チャネルキャットフィッシュ
Ictalurus punctatus の摂餌特性を明らかにするために,2013年4月から10月の夜間に茨城県北浦の爪木地先と大船津地先の水深1.2 m より浅い沿岸帯で餌釣りと投網で採集した268個体(体長14.7~59.1 cm)の胃内容物を精査した。30分間当たりの釣獲数は,護岸帯よりもヨシ帯で多かった。本種の餌は,小型魚類,底生・半底生甲殻類,大型魚類の断片(肉片,鱗,骨など),陸上植物片,水生・陸上昆虫,糸状藻類などであった。それらの中には,本調査地でヨシ帯に主に生息するヌマチチブ,モツゴ,テナガエビ,付着性ユスリカ類(ハイイロユスリカ,メスグロユスリカ,ツヤユスリカなど)などの様々な在来生物が含まれていた。これらのことから,チャネルキャットフィッシュは夜間にヨシ帯で利用できる餌生物を主に摂餌していると考えられた。本種は捕食や餌資源をめぐる競争によってヨシ帯に同所的に出現する在来魚に影響を及ぼしているおそれがある。
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古下 学, 福田 翼, 福田 穣, 山下 亜純, 柳 宗悦, 今岡 慶明, 田中 真二, 杉原 志貴, 安部 昌明, 長野 泰三, 青野 怜 ...
2015 年 63 巻 1 号 p.
59-64
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
2004~2009年に日本の養殖ブリ類から分離されたα溶血性レンサ球菌症原因菌
Lactococcus garvieae 221株について薬剤感受性調査を行った。その結果,2峰性により耐性が確認された薬剤はオキシテトラサイクリン(OTC),エリスロマイシン(EM),リンコマイシン(LCM)であった。また,64.7%の株が LCM 単剤耐性を示した。すべての薬剤に感受性の株は2004年に4.0%であったが,2009年には23.1%に増加した。OTC,EM 耐性株は2009年に0%になった。LCM 耐性株は,72.0~85.1%と減少しなかった。
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中島 淳
2015 年 63 巻 1 号 p.
65-70
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
コイ科魚類カマツカの野外における産卵・初期生態の一端を解明するため,福岡県那珂川において,目視による成魚の出現数と流下ネットによる卵・仔魚流下数の24時間調査を3回行った。本種成魚は夜間にのみ合計64個体が観察され,メス成魚は20~1時に,オス成魚は20~5時に出現した。流下卵は合計11293粒を採集し,21~2時にもっとも多かった。一方で仔魚の流下はほとんど確認できなかった。これらのことから,オスは夜間に産卵場付近でメスの出現を待つこと,本種の産卵は日没後の20時から1時頃の間に行われること,産出卵は河川を流下すること,仔魚は流下しないことが明らかとなった。
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松成 宏之, 岩下 恭朗, 天野 俊二, 鈴木 伸洋, 古板 博文, 山本 剛史
2015 年 63 巻 1 号 p.
71-78
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
マダイ稚魚の飼育成績および肝膵臓組織に及ぼす大豆油粕のエタノール処理の効果を調べるために,魚粉,大豆油粕,濃縮大豆タンパク(SPC),分離大豆タンパク(SPI),エタノール洗浄 SPI(EtSPI)を主なタンパク質源とした5飼料を,マダイ(平均体重 9 g, 2水槽/飼料)に水温20°Cの下で6週間給与した。飼育成績は魚粉区で最も優れ,大豆タンパク質区の中では SPC および EtSPI 区が優れた。比肝重量は,魚粉,SPC および EtSPI 区で大豆油粕区よりも有意に高い値を示した。胆のう重量比および総胆汁酸濃度には,試験区による違いはみられなかった。大豆油粕および SPI 区では肝細胞の一部核濃縮と萎縮がみられたが,SPC および EtSPI 区では肝細胞に萎縮は生じておらず,組織像は魚粉区に類似していた。以上の結果から,大豆油粕中のエタノール抽出物がマダイ稚魚の飼育成績の低下や肝膵臓組織の異常の要因であることが示唆された。
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橋口 健太郎, 川合 研兒, 今城 雅之, 大嶋 俊一郎
2015 年 63 巻 1 号 p.
79-87
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
ブリ類の養殖現場では寄生虫駆除のために淡水浴が行われている。しかし,淡水浴を行うと浸透圧変化によるストレスの付与が予測される。そこで本研究では,淡水浴後のブリ
Seriola quinqueradiata のストレス応答を調べ,実験感染により感染の感受性の変化を調べた。淡水浴実施後にストレス指標である血中コルチゾール濃度が上昇する傾向が認められ,また,1および6時間後に頭腎由来の白血球の貪食活性が低下するなど一部の生体防御能に影響が認められた。さらに,淡水浴実施1時間後に類結節症原因菌
Photobacterium damselae subsp.
piscicida を用いて実験感染を行ったところ,淡水浴区の累積死亡率は90%で対照区よりも有意に高い値となった。実験感染時の鰓に付着した類結節症原因菌の生菌数を調べた結果,淡水浴区では対照区よりも有意に多くの菌が付着していた。以上のことから,淡水浴はブリに対してストレスとなるばかりではなく,感染症に対する感受性も高めることが明らかとなった。
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安藤 大成, 佐々木 義隆, 宮腰 靖之, 安富 亮平, 飯嶋 亜内, 下田 和孝, 中嶋 正道
2015 年 63 巻 1 号 p.
89-98
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
サケの総当たり交配(雌5×雄5)により25家系を作出し,浮上から99日目までの体重と成長率を調べた。同じ発育段階におけるサケ稚魚の体重は家系間で異なっていた。また,小型卵から生まれた稚魚の平均体重は終始小さかったものの,成長率は大型卵から生まれた稚魚よりも高い値を示した。これらの結果から,サケ稚魚の体サイズは卵サイズの影響を強く受けるものの,発育段階別の体サイズや成長率は雌雄の組み合わせにより異なることが示唆された。
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宮崎 里帆, 山口 蓮寿実, 黄 耿琳, 平坂 勝也, 竹下 哲史, 谷山 茂人, 橘 勝康
2015 年 63 巻 1 号 p.
99-104
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
本研究では,強制運動とその後の遊泳回復がマアジの筋肉中グリコーゲン量および乳酸量とヤケ肉発生に及ぼす影響を検討した。背部普通筋の致死直後におけるグリコーゲン量は,強制運動により減少した。保存中に生成する乳酸量は,回復試料魚では対照試料魚より低い傾向を示した。回復試料魚では致死方法にかかわらず,30°C保存中における筋肉 pH の低下と感覚色度 L
∗値の上昇が緩やかであった。対照試料魚では,pH,L
∗値,肉眼観察からヤケ肉が発生したと判断されたが,回復試料魚では保存期間を通してヤケ肉の発生は認められなかった。以上の結果より,強制運動とその後の遊泳回復により致死前の筋肉中グリコーゲン量を低減させると,死後の乳酸生成とそれに伴う筋肉 pH の低下,感覚色度 L
∗値の上昇抑制が認められ,ひいてはヤケ肉発生を抑制すると考えられた。
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前田 経雄
2015 年 63 巻 1 号 p.
105-112
発行日: 2015/03/20
公開日: 2015/06/20
ジャーナル
フリー
若齢ベニズワイの脱皮時期を明らかにする目的で,富山湾で2003年1, 2月,2004年1月に採集された第3~8齢(甲幅約5~39 mm)の計167個体を,2005年1月まで海洋深層水を用いて水温約0.7°Cで飼育し,個体ごとの脱皮日(月日)を調査した。第4~7齢における齢期ごとの脱皮時期は7~11カ月間の比較的長期にわたって見られたが,その盛期は季節的に限られ,第4齢では8~9月,第5齢では3~4月,第6齢では10~翌1月,第7齢では8~9月であり,齢期によって異なった。齢期ごとに,脱皮の中央日を算出したところ,第4齢から第7齢の中央日はそれぞれ8月26日,4月2日,11月23日,9月9日であった。これらの中央日から第5~7齢の継続期間,すなわち脱皮間隔は,それぞれ約7.3,8.0,9.7カ月と推定された。
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