水産増殖
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63 巻, 4 号
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原著論文
  • 宮﨑 里帆, 石原 光, 宮﨑 貴美子, 濱田 友貴, 平坂 勝也, 橘 勝康, 谷山 茂人
    2015 年 63 巻 4 号 p. 373-379
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,異なる体格組成の養殖クロマグロの肉質を天然魚のそれと比較検討した。養殖魚の肥満度は天然魚と同程度であったが,背部普通筋中の脂肪面積率は天然魚よりも有意に高かった。尾叉長と普通筋の脂肪面積率の関係を検討したところ,天然魚の背部普通筋では尾叉長の増大に伴い脂肪面積率が低下する有意な負の相関関係が,養殖魚では有意な正の相関関係が認められた。また,養殖魚では尾叉長の増大に伴って背部普通筋の白さを示す感覚色度 L値が有意に増加したが,天然魚では有意に低下した。養殖魚では尾叉長と a値には関係が認められなかったが,天然魚では尾叉長の増大に伴い a値は有意に増加した。背部普通筋の ATP 関連化合物含量は,養殖魚は天然魚より有意に少なかった。以上より,養殖クロマグロでは成長に伴う体格組成の違いが普通筋中の脂肪面積率の多寡や肉色等の肉質に影響を及ぼすと考えられた。
  • 今井 正, 片山 貴士, 森田 哲男, 今井 智, 森岡 泰三, 吉浦 康寿, 山本 義久, 遠藤 雅人, 竹内 俊郎
    2015 年 63 巻 4 号 p. 381-387
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    トラフグ卵管理への閉鎖循環システム利用の可能性を調査した。実験には6 l ハッチングジャーを用い,卵を140~200 g ずつ収容した。これを閉鎖循環システムと対照区の流水システムに組み込んで2回実験した。1回目の実験での卵の孵化率は,閉鎖循環システムで管理した場合には50.2~95.4%で,流水システムでは42.1~84.1%であった。2回目の実験では,閉鎖循環システムで管理した場合には17.7~64.5%で,流水システムでは10.6~69.9%の孵化率が得られた。孵化率は,1回目の実験では閉鎖循環システムの方が有意に高かったが,2回目の実験ではシステムの違いによる有意な差はなかった。また,卵管理において,孵化時にアンモニアの発生量が急に増えることから注意が必要である。本研究において高い孵化率が得られたことで,閉鎖循環システムだけを使用したトラフグの完全養殖の可能性が示された。
  • 渡邉 昭生, 清水 孝昭
    2015 年 63 巻 4 号 p. 389-398
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    燧灘沿岸の4定点で西水研型桁網による仔稚魚の採集調査を,2002年5月から2005年4月まで毎月1-8回実施し,仔稚魚を中心として35科74種以上,合計40,112尾を採集した。優占上位10種(個体数割合)は,順にヒメハゼ(70.1%),クロダイ(4.7%),イシガレイ(2.7%),ギンポ(2.7%),ネズッポ属(2.2%),ニクハゼ(1.7%),マハゼ(1.7%),シロギス(1.7%),ヒラメ(1.5%),アミメハギ(1.4%)であった。本砂浜海岸の全定点でヒメハゼの個体数密度が最も高く,燧灘の砂浜海岸における優占種と言える。半自然海岸(高須,河原津2)は個体数密度と種の多様度が河口域(西条)や人工海岸(河原津1)と比較して高く,魚類群集に良好な生息環境を維持していると推察された。一方,人工海岸ではクロダイなど他の定点で出現頻度の低かった種の密度が高いなど,独自の群集構造が見られた。
  • 高木 基裕, 松木 康祐, 岩本 俊樹, 水戸 鼓, 海野 徹也, 清水 孝昭
    2015 年 63 巻 4 号 p. 399-408
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    マイクロサテライト DNA マーカーを用いて,日本産オニオコゼにおける天然集団と放流魚の遺伝的集団構造を解析した。天然集団として西日本の8地点および韓国からオニオコゼを採集した。また,岡山(備讃瀬戸)の天然4年級群および ALC 標識された放流再捕魚3年級群についても採集し,6種のマイクロサテライトマーカー座を用い,遺伝的多様性解析を行った。遺伝的多様性を示す有効アリル数の平均値は,天然オニオコゼと放流オニオコゼで同等の値を示した(7.5~9.5)。ヘテロ接合体率の平均値についても,天然オニオコゼと放流オニオコゼで同等の値を示した(0.723~0.767)。また,放流再捕魚と同海域の天然オニオコゼ間に顕著な遺伝的異質性はみられなかった。国内のオニオコゼ天然集団間の遺伝的距離は0.026~0.058と小さかった。岡山県の天然集団と放流再捕魚の遺伝的距離も0.029~0.076と小さかった。
  • 金子 誠, 齋藤 寛, 秋山 信彦
    2015 年 63 巻 4 号 p. 409-415
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    クロウミウマ稚魚の遊泳力とワムシ密度の違いによる摂餌数と成長速度を調べた。ワムシ密度を高くすると稚魚の吸引摂餌回数が増加し,稚魚は最大で1時間に32回の吸引行動をとった。また1回の吸引で最大6.4個体のワムシを摂餌していた。タツノオトシゴ類は吸引摂餌行動することが知られていることから,吻部の前方にある餌を海水とともに吸い込むことで複数個体のワムシを同時に摂餌できることが明らかとなった。したがって,ワムシ密度を高くすることで稚魚のエネルギー収支効率が良くなり,成長が速くなると考えられた。また,産出直後の稚魚の遊泳力は10.6±4.0 mm/s で15日後でも10.3±3.4 mm/s とほとんど変わらなかった。一般に魚類は成長に伴って遊泳速度が速くなるが,本種の浮遊期の稚魚では遊泳力が乏しく,低いワムシ密度では摂餌効率が悪く,稚魚の成長が悪いことが明らかになった。
  • 平井 慈恵, 秋田 雄一, 海老沢 明彦, 太田 格, 照屋 和久, 山田 秀秋, 小林 真人, 佐藤 琢, 浅見 公雄, 奥澤 公一
    2015 年 63 巻 4 号 p. 417-421
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    The sexual maturation and age of the black-spot tuskfish Choerodon schoenleinii captured from the Yaeyama Islands area, Okinawa, Japan, was investigated. In total, 422 fish landed from April 2009 to March 2011 were measured for total length (TL), and 45 fish were purchased for the analysis of the gonad and otolith. All fish < 60 cm in TL were female, and the mature females were over 35.4–48.1 cm in TL (age: 1-6 years old). Ovarian development started in November, and well-developed oocytes were found in March and April. All fish ≥ 60 cm in TL (age: 5–14 years old) were males.
  • 小川 直人, 関 伸吾, 山田 秀秋, 中村 洋平
    2015 年 63 巻 4 号 p. 423-435
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    ブダイ科魚類の成魚を用いて PCR-RFLP 法による種判別法の開発を行った。この手法を琉球列島の海草藻場に生息するブダイ科稚魚に応用して,種組成の解析を行った。8種類の制限酵素を用いたところ,日本産ブダイ科魚類34種の種判別を行うことが可能であることがわかった。沖縄県石垣島および沖縄島とそれに隣接する屋我地島の海草藻場で採集したブダイ科稚魚224個体に対してこの種判別法を用いた結果,オウムブダイ,ハゲブダイ,ヒブダイ,スジブダイ,オビブダイ,ダイダイブダイ,レモンブダイの7種が確認された。そのうち前3種はすべての島で出現が確認されたが,ダイダイブダイとレモンブダイは沖縄島か屋我地島でのみ確認された。
  • 太田 勇太, 石原 良美, 齋藤 寛, 大貫 貴清, 秋山 信彦
    2015 年 63 巻 4 号 p. 437-445
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    タナゴの産卵期開始を誘導する要因を調べるために非産卵期である秋分あたりと冬至から水温と日長時間を組み合わせた条件で飼育をした。2011年10月10日と2013年9月23日からの実験では12L で産卵がみられなかったが,14,15L と長日化した場合で産卵がみられた。2011年12月22日と2013年12月22日から行った実験では9L では産卵がみられなかったが,12,15L と長日化した場合で産卵がみられた。また今回行った実験で水温が14.0℃と低い場合では産卵がみられなかったが,16.0℃以上では水温に関係なく長日条件で産卵がみられた。
     以上のことから本種を人為的に産卵させる場合,長日化させる必要があるが,長日化させる時間は前歴の日長時間によって異なることが明らかになった。
短報
資料
  • 藤岡 康弘, 三枝 仁, 亀甲 武志
    2015 年 63 巻 4 号 p. 463-468
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    ホンモロコは一妻多夫の産卵行動を行う。これまで群れでの産卵行動に関する知見しかなかった。このためホンモロコの再生産形質を詳細に調査する方法として,水槽を用いて雌雄1個体の4組を飼育し,1産卵期を通して産卵回数や孵化率などを調査してペアー産卵による調査法の妥当性を検討した。産卵巣として方形枠に張った寒冷紗の膜を使用し,これを水槽の表層に水平に設置した。産卵は4月から7月にかけて産卵巣上に6-9回行われ,これまで報告されている回数よりもかなり多かった。本研究において,4ペアーの孵化率,奇形率の平均値は82.7%(44.4-100%),1.5%(0-8.6%)であり,過去に群れで求められた値と遜色がないことが明らかになった。以上の結果は,今回の雌雄1個体のペアーによる産卵が,ホンモロコの再生産形質を個体別に調査する方法として応用可能であることを示していると考えられる。
  • 難波 信由, 加戸 隆介, 鴨志田 紘子, 篠塚 美佐希
    2015 年 63 巻 4 号 p. 469-474
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    岩手県南部三陸町海域の養殖水質に対する東日本大震災の影響の有無を明らかにするために,震災前後各3年間の夏季と冬季の7つの水質項目(pH,COD,DO,DO 飽和度,TN,透明度,油膜)を測定,比較した。その結果,DO,TN,pH,COD の4項目は,震災後夏季の DO を除き,環境省が設定した「生活環境の保全に関する環境基準」において最も高い水質を示す範囲であり,DO 飽和度は測定期間を通して飽和付近または過飽和な状態であった。そして,震災後の透明度は震災前に比べてわずかに高い範囲で変動し,油膜は測定期間を通して観察されなかった。さらに,ワカメの養殖実験を震災後に実施して震災前の結果と比較した結果,養殖ワカメの藻体密度,藻長,藻体湿重量に差はみられなかった。これらの結果は,三陸町海域の高水準な養殖水質に対して東日本大震災が大きな影響をおよぼしていないことを示していた。
  • 西川 哲也, 瓢 雄介, 米澤 孝康
    2015 年 63 巻 4 号 p. 475-479
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    日本海南西部の兵庫県居組漁港内において,トリガイの垂下養殖の可能性を検討するため,漁港内でトリガイを飼育し,定期的に成長と生残率を調べるとともに,月1回の頻度で水温,塩分,クロロフィルa濃度を測定した。トリガイは3~7月にかけて比較的よく成長したが,8~3月は成長が停滞した。トリガイの生残率は,飼育開始直後と8~10月にかけて大きく低下し,最終的な生残率は45.8%であった。水温は7,8月に25℃以上に上昇した。クロロフィルa濃度は夏季に比較的高く,多くの測定値が2μg l-1を上回っていたものの,秋以降低下し,冬季は多くの値が0.5μg l-1を下回った。本調査から,夏季の高水温と秋以降のクロロフィルa濃度の低下が,トリガイの成長と生残率に悪影響を及ぼし,このような漁港内はトリガイの養殖に適していないことが考えられた。
  • 吉松 隆夫
    2015 年 63 巻 4 号 p. 481-508
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
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