水産増殖
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65 巻, 3 号
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原著論文
  • 杉浦 大介, 菊谷 尚久
    2017 年 65 巻 3 号 p. 193-202
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    陸奥湾産アサリの貝殻を樹脂包埋し,殻頂-腹縁軸上で薄切して年齢を推定した。貝殻切片の腹縁と内部成長線が一致している個体は夏と冬に多かった。テトラサイクリン(TC)標識した個体を春に基質とともに網袋に収容して調査地に設置し,秋または冬に回収した。秋と冬に回収された約78%の個体の貝殻において不透明帯の内部に TC 標識が線状に認められ,標識の腹縁側に1本の内部成長線が形成されていた。標識の腹縁側に2本以上の内部成長線を形成した個体は観察されなかった。すなわち貝殻の内部成長線形成は年1回であり,夏に始まり晩夏または冬に終了する。von Bertalanffy 成長式は Lt =36.9(1−e −0.744(t−0.239))と推定された。内部成長線の数に基づき最高年齢は5歳と推定された。これらの結果から貝殻切片法は貝殻の成長が遅く長寿命なアサリ個体群の正確な年齢査定に有用であることが明らかになった。
  • 塩出 雄亮, 中田 和義
    2017 年 65 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    観賞魚の“楊貴妃メダカ”は,朱赤色のミナミメダカの変異体である。楊貴妃メダカの発色メカニズムを解明するため,鱗の色素胞,体内のカロテノイドの定量,カロテノイドを含む飼料による体色変化について,楊貴妃メダカとヒメダカを比較し検討した。体表の色素胞は,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに黄色素胞が主体で,黒色素胞はほとんど存在しなかった。一方,黄色素胞内の色素顆粒は楊貴妃メダカが橙赤色で,ヒメダカは淡黄色であった。アスタキサンチン,ゼアキサンチン,ルテインの濃度は楊貴妃メダカがヒメダカよりも高く,とりわけアスタキサンチンは楊貴妃メダカがヒメダカの10倍以上高かった。アスタキサンチンを添加した飼料を給餌したところ,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに頭頂部の色相値が有意に低下した。これらの結果は,楊貴妃メダカの朱赤色はカロテノイドと関連があること,カロテノイドの摂取により赤みが強くなることを示している。
  • 松井 英明, 大川 諒, 安樂 和彦, 小谷 知也
    2017 年 65 巻 3 号 p. 209-219
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    微細藻類 Nannochloropsis oculata の収穫を適当な時期に行い,ワムシに給餌することによって効率的なワムシ栄養強化を行うことができる。現在,N. oculata の適切な収穫時期は細胞数の計数に基づいて判断されており,餌料価値を正確に判断することは困難である。そこで,本研究では分光光度計を用いて簡便な収穫時期判断手法を開発することを目的とした。N. oculata の培養液中の細胞密度,栄養塩濃度(硝酸態窒素とリン酸)と培養個体群の吸光度(360-780 nm)を毎日測定した。対数増殖期はリン酸が消費され濃度が4.0 μg/ml 以下になった時点で終了した。490 nm と680 nm の吸光度比は実験開始時から上昇傾向を示し,対数増殖期開始時に減少傾向に転じた後,リン酸が枯渇する時期に再び上昇傾向に転じた。定常期はリン酸枯渇後に見られる硝酸態窒素枯渇時に開始した。つまり,吸光度比は増殖パターンよりリン酸枯渇に対応して上昇することが明らかとなった。分光光度法は将来的に培養状態推定手法となる可能性がある。
  • 青木 秀夫, 松倉 一樹, 山下 浩史, 宮本 敦史, 清水 砂帆子, 金田 典久, 輿石 友彦, 佐藤 秀一, 石田 典子
    2017 年 65 巻 3 号 p. 221-230
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    出荷対象のマダイ成魚に対し,大豆油粕とコーングルテンミールを併用配合して魚粉含量を25%とした低魚粉飼料の性能を評価した。魚粉含量が40%の市販のマダイ用飼料を対照飼料とした。飼育試験を三重県,愛媛県,長崎県の3県において各養殖業者の所有する大型生簀を用いて実施した。平均体重約500~1,000 g のマダイを試験魚とし,市販飼料区と低魚粉区を設置して4~6ヶ月間飼育した。その結果,低魚粉区の平均魚体重,増重率および死亡率は市販飼料区と同程度で,増肉係数は低魚粉区の方がやや優れていた。また試験魚の肥満度,肝臓重量比,血漿化学成分からみた健康状態は両区とも良好であり,筋肉の破断強度,鮮度保持の特性にも差はなかった。これらのことから,本研究で使用した低魚粉飼料はマダイ成魚に対して市販飼料と同等の性能を有すると評価された。一方で,三重県の試験では低魚粉飼料の給餌開始時に試験魚の摂餌性が一時的にやや低下したことから,飼料の嗜好性の改善について検討する必要があると考えられた。
  • 浦 和寛, Heng Wang, 堀 哲郎, 相澤 俊介, 津江 志緒莉, 佐藤 瑞葉, 武井 成美, 星野 航佑, 樋口 一郎, 讃岐 ...
    2017 年 65 巻 3 号 p. 231-237
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    北海道南部の海域に生息するキタムラサキウニの生殖周期と生殖巣に含まれる主要卵黄タンパク質の mRNA 量の変化を調べた。落部海域に生息するキタムラサキウニでは,4月と8月に成熟する個体が観察され,年に2回放卵・放精が行われている可能性が示された。一方,臼尻海域では秋にのみ成熟個体が観察された。また,生殖巣で合成・蓄積される主要卵黄タンパク質の mRNA 量は,雌雄共に回復期から成長期にかけ増加し,配偶子形成の進行に伴い減少した。以上の結果から,北海道南部の海域によっては本種の放卵・放精が年に2回行われている可能性が示された。
  • 松本 泰明, La Xuan Thao , 森岡 克司, 深田 陽久, 益本 俊郎
    2017 年 65 巻 3 号 p. 239-246
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    ブリ幼魚におけるタウリンの添加効果を調べるため,濃縮大豆タンパク質主体の無魚粉飼料にタウリンを段階的に添加した飼料(0, 1, 2, 3, 4および 5%)および魚粉対照飼料を10週間与えた。最終魚体重では,0%添加飼料区が試験区間で最も低かったが,1%添加飼料区で有意に改善した。肝臓と赤筋のタウリン濃度も 0%添加飼料区が他区に比べて有意に低かったが,1%以上の添加区で有意に高くなった。また 1%以上の添加区間に有意差は無かった。白筋のセリン含量は 0%添加飼料区が最も高く,1%以上区で有意に低くなり,タウリン添加区間に差はなかった。一方,緑肝症の完全な抑制や血漿浸透圧の正常化にはタウリン添加濃度 3%以上の添加が必要であった。以上の結果から,1%の添加(飼料含量0.8%)で組織タウリン含量は飽和に達するが,正常な生理状態の維持には少なくとも 3%(飼料含量2.4%)の添加が必要と考えられた。
短報
資料
  • 山本 昌幸, 伊藤 篤, 山崎 英樹, 兼松 正衛
    2017 年 65 巻 3 号 p. 263-269
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
    効率的なタイラギ中間育成法を検討するため,3種類の基質(アンスラサイト,砂,人工芝)と密度(2,000~8,000個/m2)での垂下飼育を2回実施し,生残率と成長率を調べた。瀬戸内海屋島湾(水深1.5 m)で試験は2016年8月30日~9月22日(試験1:開始殻長,17.4 mm)と9月14日~11月3日(試験2:6.3 mm)に実施された。試験1(平均水温:26.7℃)では,生残率は95.0~100%,平均殻長は29.9~47.2 mm,成長率は0.54~1.30 mm/day となった。人工芝区の成長率が他の基質より低く,低密度区の成長率が高かった。試験2(24.3℃)では,生残率は1.3~92.5%,平均殻長は21.0~47.2 mm,成長率は0.29~0.82 mm/day となった。イシガニの捕食によって砂区の生残率が低かった。基質ではアンスラサイト区の成長率が他の基質より高かった。
総説
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