近年,集中豪雨の増加による水圏生物に対する濁水の影響が懸念されている。本研究では,通常バクテリアによって水圏に富化されるビタミン B
12 が動物プランクトンの環境変化に対する耐性にどのように影響を与えるかについて,様々なビタミン B
12 濃度(0, 5, 25 µg/
l)とカオリン濃度(濁度0, 15, 50, 100, 600 NTU)に調製した
Chlorella 培養水でタマミジンコを培養し,寿命,産仔数とその大きさや性比,初産日齢等から検討した。さらに藻体内にビタミン B
12 を含有する市販の
Chlorella 餌料との比較も試みた。その結果,ビタミン B
12 を全く含まない培養水で培養されたタマミジンコにおいて短命化,初産日令の遅れ,産仔数の減少と産出幼生の小型化が認められ,ビタミン B
12 濃度が低くなるほど,また濁度が上昇するにつれてその影響は顕著となり,餌料中あるいは培養水中のビタミン B
12 の存在は濁りに対するタマミジンコのストレス耐性を向上させることが明らかとなった。
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