水産増殖
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66 巻, 4 号
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原著論文
  • 永田 淳, 笠井 慶, 峯野 博和, 藤崎 雄大, 莚平 裕次, 南宮 眞, 武田 康孝, 藤田 敏明, 川崎 琢真, 東藤 孝, 原 彰彦 ...
    2018 年 66 巻 4 号 p. 257-266
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー
    ホールマウント免疫染色法を用いて,マガレイ(Pseudopleuronectes herzensteini),スナガレイ(Limanda punctatissima)およびソウハチ(Cleisthenes pinetorum)の3種カレイ卵種判別を試みた。先ず,各カレイ排卵卵の卵膜を抗原としたポリクローナル抗体(a-マガレイ VE,a-スナガレイ VE,a-ソウハチ VE)を作製した。試料として,受精後24時間以内の各カレイ授精卵を用い,同抗体と標識二次抗体を用いた方法(2ステップ法)および,標識1次抗体を用いた方法(1ステップ法)でホールマウント免疫染色を行った。その結果,いずれの手法でも,対象種授精卵を特異的に染色することができた。以上,本研究で開発した免疫染色によるカレイ卵の種判別法は,カレイ類の生活史初期における資源量調査の簡易化に大きく役立つと考えられた。
  • 津行 篤士, 海野 徹也
    2018 年 66 巻 4 号 p. 267-274
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー
    広島湾のマガキ養殖場は魚類の生息場所となっているが,魚類群集に関する知見は乏しい。そこで, 広島湾のマガキ養殖場の魚類相を水中ビデオカメラにより調査した。カキ筏では18種の魚類が確認されたが,出現種組成は,比較対象として観察した沿岸域とは異なった。カキ筏には水産有用種のクロダイ, ウマヅラハギ, ウミタナゴが全ての季節において出現した。特に,カキ筏におけるクロダイの出現割合は高く, 春季, 秋季, 冬季の出現割合は68-85%に達した。ビデオ観察によって優占種であるクロダイ, ウマヅラハギ, ウミタナゴが垂下連上の付着生物を採餌する行動も確認された。本研究によって, 広島湾のカキ筏には多くの水産有用種が蝟集しており, カキ筏は同湾における漁礁として機能している可能性が示唆された。
  • Nadia Istiqomah , Novi Arisman , 吉松 隆夫
    2018 年 66 巻 4 号 p. 275-285
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー
    近年,集中豪雨の増加による水圏生物に対する濁水の影響が懸念されている。本研究では,通常バクテリアによって水圏に富化されるビタミン B12 が動物プランクトンの環境変化に対する耐性にどのように影響を与えるかについて,様々なビタミン B12 濃度(0, 5, 25 µg/l)とカオリン濃度(濁度0, 15, 50, 100, 600 NTU)に調製した Chlorella 培養水でタマミジンコを培養し,寿命,産仔数とその大きさや性比,初産日齢等から検討した。さらに藻体内にビタミン B12 を含有する市販の Chlorella 餌料との比較も試みた。その結果,ビタミン B12 を全く含まない培養水で培養されたタマミジンコにおいて短命化,初産日令の遅れ,産仔数の減少と産出幼生の小型化が認められ,ビタミン B12 濃度が低くなるほど,また濁度が上昇するにつれてその影響は顕著となり,餌料中あるいは培養水中のビタミン B12 の存在は濁りに対するタマミジンコのストレス耐性を向上させることが明らかとなった。
  • 井口 雅陽
    2018 年 66 巻 4 号 p. 287-296
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー
    鱗の隆起線形成に関する石灰化の役割を調べるため,キンギョにカルシウム・リン欠乏餌料を与え蒸留水中で5週間飼育を行い,鱗の成長部を光学顕微鏡で観察した。また,同条件下で2週間飼育を行ったキンギョに対して,透過型および走査型電子顕微鏡を用いて鱗の石灰化状態を観察した。その結果,通常飼育個体では新しく形成された隆起線はよく石灰化しており歯状突起や発達した結晶塩も観察されたが,欠乏餌料飼育個体では隆起線は形成されるものの,未石灰化状態でコラーゲンによる網目状構造がみられ,粒状の結晶が散在するのみであった。これらのことから,鱗の隆起線は,カルシウムやリンの沈着によるものではなく,主にコラーゲンにより形成されると考えられた。欠乏餌料による5週間の飼育では,鱗の成長低下がみられ,隆起線数や隆起線間隔も減少した。これら鱗成長時における変化は,コラーゲンから成る有機基質の形成に同調したものと考えられた。
  • 鶴田 哲也, 井口 恵一朗
    2018 年 66 巻 4 号 p. 297-307
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー
    実験水田内にフナ類の稚魚(孵化後20日齢)を用いた稲田養魚区とイネ単独栽培区を設け,生物相,水質および米の収量を比較することにより,水田生態系におけるフナ類の役割を検証した。稲田養魚区では,フナ類の摂餌の影響により動物プランクトンおよび底生無脊椎動物の個体数が減少した。また,同実験区では水田水中のクロロフィル a 濃度が高い値を示した。これは,フナ類のトップダウン効果により,植物プランクトンの現存量が増加したためであると考えられる。さらに,同実験区では水田雑草の発生量が低下する傾向が認められた。これは,フナ類の遊泳による底泥の撹拌や植物プランクトンの増加による水底への日照量の低下によるものと考えられる。稲田養魚区では硝酸性窒素濃度も高い値を示したことから,フナ類は種間相互作用を通じてイネの生育にプラスの効果を与えることが示唆される。
  • 中辻 伸嘉, 秋田 もなみ, 林 芳弘, 野村 晋平, 足立 亨介, 森岡 克司
    2018 年 66 巻 4 号 p. 309-315
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー
    本研究は加太産天然マダイ(RK)及び養殖マダイ(RC)の物性(破断強度)を比較し,生化学及び組織学的アプローチから物性の決定要因を検討した。RK 及び RC の肉の破断強度はそれぞれ55.6及び34.9 gw であり,RK で有意に高い値を示した。従来から知られている破断強度と関係性がある筋肉中のコラーゲン含量は RK で高い傾向があったが,有意差はなかった。一方,組織学的観察から RK 及び RC の筋繊維面積はそれぞれ6299.5及び9524.5 µm2 であり,RK の筋繊維面積は RC より有意に小さく,筋繊維の結合組織である筋内膜の網目構造が密であることが観察された。以上のことより,RK の物性は RC より硬く,これには筋肉中の結合組織の構造が主に関与することが示唆された。
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