本研究は,カンパチ当歳魚飼料に最適な可消化タンパク質(DP)含量,可消化エネルギー(DE)含量および DP/DE 比について調べるため,粗タンパク質(CP)および粗脂質(CL)含量をそれぞれ3 段階に設定した9 種類の飼料(CP; 450,510および560 g/kg,CL; 130,180および230 g/kg)を平均体重277.4 g のカンパチ当歳魚に日間給餌率1.3%で40日間制限給餌した。その結果,CP 510 g/kg および CL 180 g/kg の飼料で優れた成長および飼料効率が得られた。以上より,カンパチ当歳魚に最適な DP および DE 含量は,それぞれ387 g/kg,15.9 MJ/kg であると推察され,またその時の DP/DE 比は24.4 g/MJ であった。
養殖現場では感染症予防のために腹腔内へのワクチン投与が行われるが,この行為は生体にとってストレスとなり,生体防御能や感染症の感受性に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では,ワクチン投与を想定し生理食塩水を腹腔内に注射した後のブリのストレス応答および生体防御能の変化を調べ,実験感染を行った。ストレス指標である血中コルチゾール濃度は腹腔内注射後に上昇し,白血球の貪食活性が低下するなど一部の生体防御能にも影響が認められた。さらに,腹腔内注射1時間後にそれぞれ3種類の病原菌を用いて実験感染を行ったところ,類結節症原因菌およびβ溶血性レンサ球菌症原因菌を感染させた腹腔内注射区の累積死亡率は対照区よりも有意に高い値となり,類結節症原因菌の鰓の付着菌数も,腹腔内注射区で対照区よりも多くなった。以上のことから,腹腔内注射はブリに対してストレスとなり,感染症による死亡率を高めることが明らかとなった。
マコガレイの稚魚,未成魚,成魚の分光視感度特性を調べるために,暗順応した供試魚の眼球から網膜電図(ERG)を記録した。得られた ERG のデータを Stavenga et al.(1993)のテンプレートに当てはめ分光応答曲線を求めた。稚魚,未成魚,成魚における最大応答波長はそれぞれ531 nm,524 nm,515 nm であり,すべてのステージで緑に感度が高いことが示された。マコガレイ稚魚は浅瀬に生息し,成長とともに生息水深が深くなる。分光感度ピーク波長が成長とともに短波長側にシフトすることは,生息水深の光環境への適応と推測された。
1976年7~9月に南紀浦神湾の海産枝角類の消長を高頻度の動物プランクトンの採集によって調べた。出現した3属4種の密度は,Penilia avirostris が最も高く,次いで Pseudevadne tergestina,Pleopis polyphemoides,及び Pleopis schmacheri の順に低下した。個体群密度と表面水温の関係を示すパターンは種により異なり,種に固有の温度選択性をもつことが分かった。このパターンを他海域と比較した結果,各種ともその海域の温度特性に適応して異なることが明らかになった。Pleopis 2種に見られた生態的分離は,おそらく種間競争を回避する戦略であろう。有性生殖は Penilia avirostris においてのみ8月に検出されたが,休眠卵の生産に関わるメスの密度は,湾奥部(St. A)において最も高く,湾口部(Sts. B, C)に向かって次第に低下した。その傾向は,同年12月に同定点で記録された底生性休眠卵の分布密度によく対応した。最後に海産枝角類の有性生殖や食性をめぐる生態的諸問題について論議した。
植物性蛋白源により完全に魚粉を代替した無魚粉飼料(NFM)にタウリンを段階的に添加した飼料を10週間与えたマダイの成長,消化吸収率,腸管の形態ならびに炎症性サイトカイン遺伝子の発現に対する効果を調べた。魚粉主体飼料(FM)区では日間成長率(SGR)と増重率(WG)が NFM 区よりも有意に高く,タウリン添加による改善は見られなかった。FM 区の飼料効率とタンパク質効率は,NFM+1.0T 区および NFM+1.5T 区よりも有意に優れたが,NFM+2.0T 区の間では飼料効率に差がなかった。NFM+1.0T 区以外では FM 区と同等のタンパクと脂質の消化率が見られた。NFM 区では,腸管の粘膜下層において典型的な大豆による腸管障害である好中球の浸潤が見られ,サイトカインの発現も FM 区よりも有意に高かった。NFM 区の遺伝子の相対発現レベルはタウリンの添加により有意に低下した。以上の結果より,マダイではタウリンの添加は植物原料を配合した NFM による炎症反応等の一部を緩和することが示唆された。
鶏糞抽出液(CME)は,ハルパクチクス目 Tigriopus japonicus の増殖を促進し,培養を安定させることが知られている。本研究ではまず,T. japonicus の培養の好適餌料とされる T. tetrathele と市販の Chlorella vulgaris を給餌し,T. japonicus の生活史パラメータ(生残,発育,繁殖)に与える影響を検討した。その結果,ノープリウス幼生の発育と生残には餌料種間で差がなかったが,C. vulgaris 給餌ではコペポダイト幼生へ変態直後に大量斃死が起こったが,この斃死現象は,CME の添加で大きく改善され, C. vulgaris 給餌ではコペポダイト期の生残,発育および卵嚢あたり産仔数がそれぞれ7.4倍,1.7倍,1.5倍増加した。一方,Tetraselmis tetrathele 給餌では CME 添加により産仔数のみ1.7倍増加した。CME 中には T. tetrathele や C. vulgaris と同等の大きさの粒子が存在するが,これらを濾過によって除去しても,本種の発育や繁殖に影響はみられなかった。CME に由来する細菌や17β-Estradiol の量は少なく,T. japonicu の発育や繁殖に効果を与える可能性は低いと判断された。
マナマコ稚仔に対するマコンブ仮根部およびアナアオサ葉状体粉末の餌料としての有効性を調べるとともに,前者に対する適正給餌量を検討した。稚仔にマコンブ仮根部,アナアオサ葉状体およびホソメコンブ葉体部の粉末を0.3 g/日ずつ与え水温15℃で62日飼育したほか,稚仔を小・中・大型群に区分し(平均体長11.1,20.4および34.3 mm),前2 者に0.15 ~0.75 g/日,後者に0.5~1.2 g/日の仮根部粉末を与え同水温で60~62日飼育した。その結果,3 種の粉末間に成長差はみられなかったが,仮根部粉末を小,中および大型群にそれぞれ0.45,0.60および1.05 g/日以上与えた処理区では成長率が有意に増加した。これより,マコンブ仮根部とアナアオサ葉状体の粉末はマナマコ稚仔の餌料として有効であり,小,中および大型群に対する前者の適正給餌量は各々45,75および131 mg /個体/日と推定された。
ヒスチジン(His)含量の低いイワシ魚粉と His 含量の高いアジ魚粉を50%配合した飼料(FM1,FM2),FM2 の含量に合わせて FM1 に His を添加した飼料(FM1H),イワシ魚粉の配合を15%に削減して大豆タンパク質とコーングルテンに置き換えた低魚粉飼料(LFM)および FM1 と FM2 の含量に合わせて LFM に His を添加した飼料(LFMH1,LFMH2)を平均体重4.7 g のブリに45日間給餌した。最も成長の良かった FM2 区に比べ,FM1 区では若干劣り,低魚粉飼料の3 区の成長はいずれも FM1 より劣った。一方,His を FM2 のレベルに添加した FM1 と LFMH2 を与えたブリでは摂餌が増加し,成長が改善する傾向がみられた。肝臓の遊離アミノ酸組成には飼料の影響はほとんどなかったものの,普通筋では飼料中の含量を反映して His が蓄積する一方で,タウリンやほかのアミノ酸が減少した。以上の結果から,ブリ稚魚において飼料への His の添加効果は限定的であり,特に低魚粉飼料の栄養価を根本的に改善するものではないことが示された。
イセエビのフィロソーマ幼生の飼育技術の向上を目的として,クライゼル水槽(容量31 l)を用いて初期幼生と中期幼生を飼育した時の成長と生残に及ぼす水流の強さと光条件の影響について検討した。3 条件の水流の強さ(水槽下部の流速が3-5,6-7,8-9 cm/s)でふ化幼生と154日令幼生を1 か月間飼育したところ,水流が強いほど生残率が高くなった。成長には水流の3 条件間で有意差は見られなかったものの,実験終了時の体長は水流が強いほど大きい傾向が見られた。また,ふ化幼生と47日令幼生を照度が異なる2 条件(水槽中央部の照度が1.3,2.2 μmol/m2/s)で1か月間飼育したところ,低照度で飼育した方が幼生の体長は有意に大きかった。以上のことから,クライゼル水槽でイセエビ幼生を飼育する場合には,流速を8-9 cm/s,照度を1.3 μmol/m2/s に設定することが有効であることと判断された。これらの条件で飼育成績が良かった要因として,幼生が水槽内で広く分散していたことが考えられた。
We conducted an experiment to evaluate survival of larval and early juveniles of Pacific bluefin tuna (PBT) reared at a low density (one larva per liter) in small-volume tanks of 100 l and 200 l. At 22 days after hatching (DAH) the survival of fish cultured with strong aeration for 15 hours at night from 3 to 14 DAH was 8.0±7.9% and 11.3 ±4.3% for fish in 100-l and 200-l tanks, respectively (mean total length 20.8 mm, both groups). These results indicate that PBT might be successfully reared at low density using small-volume tanks of 200 l.
To obtain information regarding the catch of Macrobrachium prawns in the Shimanto River, Kochi Prefecture, Japan, the species composition and body size of Macrobrachium prawns caught using funnel traps were investigated at St. 1 and St. 2 (11 km and 28 km upstream from the river mouth, respectively). Most of the catch comprised M. formosense, followed by M. japonicum with very less catch of M. nipponense. The body size of M. formosense and M. japonicum at St. 2 was larger than that at St. 1. The proportion of males of these two species was high at both the stations, accounting for 76-92% of M. formosense and 67-77% of M. japonicum.