水産増殖
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68 巻 , 1 号
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原著論文
  • 莚平 裕次, 川崎 琢真, 中田 訓彰, 竹中 映美, 永田 淳, 石田 良太郎, 山口 浩志, 佐藤 充, 東藤 孝, 平松 尚志
    2020 年 68 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    シシャモの資源量をより簡便かつ正確に把握するため,ホールマウント免疫染色法を用いたシシャモ仔魚判別技術の開発を行った。シシャモ人工種苗を抗原としてポリクローナル抗体を作製し,キュウリウオ人工種苗懸濁液による吸収操作を行った。その後 IgG 精製し,アルカリフォスファターゼで標識した。この標識抗体を用いて人工種苗に免疫染色を行ったところ,シシャモ仔魚とキュウリウオ仔魚の判別が可能となり,操作手順の簡略化とコスト削減に成功した。また,新釧路川における天然仔魚調査を行ったところ,調査中期以降仔魚の体長は徐々に小さくなった。開発した免疫染色法と16S rDNA 遺伝子の塩基配列解析による種判別から,調査前・中期ではシシャモ仔魚,後期ではキュウリウオ仔魚が多数を占めた。両手法は両種の存在比について近似した傾向を示したことから,免疫染色法はシシャモ仔魚の資源量調査において,効果的な手法となると考えられた。
  • 静 一徳, 池永 誠, 村瀬 潤, 中山 奈津子, 松谷 紀明, 柿野 亘, 樽屋 啓之, 眞家 永光
    2020 年 68 巻 1 号 p. 9-23
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー

    2-MIB に起因するカビ臭は水道水の品質低下や漁獲物等への着臭被害を引き起こし,世界的な問題となっている。湖沼における 2-MIB 産生シアノバクテリアとしてはシュードアナベナ属が多く確認されており,長年研究が行われてきたが,未だ十分な解決には至っていない。本研究ではカビ臭が問題となっている青森県小川原湖において,検鏡観察とともに,分子生物学的手法としてカビ臭産生種に特化した qPCR,およびアンプリコンシーケンス解析を行った。検鏡定量によるカビ臭産生シュードアナベナ様シアノバクテリアは,主に秋冬に出現する特徴を示したが,春夏にもまれに出現した。qPCR で定量したカビ臭産生株密度と検鏡値には正の相関がみられたが,検鏡値に占めるカビ臭産生株割合は8%であり,検鏡値にカビ臭非産生株もかなり含まれていると考えられた。カビ臭産生シュードアナベナ株は2株存在し,検鏡では捉えきれない種・株レベルでの変動が存在することが確認された。

  • 松崎 浩二, 上運天 萌子, 柳本 卓
    2020 年 68 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    近年,タラバガニ科の鰓腔の卵塊がコンニャクウオ属魚類であることが明らかになっている。北海道根室海峡で採集された128個体のイバラガニモドキの鰓腔から19個の卵塊が見つかった(寄生率14.8%)。卵は真球形で卵径4.7-5.2 mm,計数した2つの卵塊の卵数は約330粒と約420粒であった。この卵塊とその孵化仔魚について,7種類のクサウオ科魚類との DNA を比較した結果,オグロコンニャクウオとアイビクニンが含まれることが示唆された。
  • 加藤 浩, 小田 達也, 石松 惇
    2020 年 68 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    シャットネラ・マリーナに対する耐性の種間差を検討するため,ブリ,マダイおよびヒラメを用いて鰓と赤血球のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)とカタラーゼの活性を比較した。鰓の総 SOD 活性は 3 種で有意差がなかったが,Mn-SOD 活性はマダイが最も高く,続いてヒラメで,ブリでは活性が認められなかった。赤血球の総 SOD 活性はヒラメが他の 2 種の約 3 倍の値を示した。鰓のカタラーゼ活性は,ヒラメがマダイの1.7倍,ブリの2.3倍,赤血球のカタラーゼ活性は,ヒラメがマダイの3.6倍,ブリの8.0倍の値を示した。鰓カタラーゼの見かけの Vmax は,ヒラメがマダイの1.8倍,ブリの2.5倍,赤血球のカタラーゼの見かけの Vmax は,ヒラメがマダイの7.8倍,ブリの10.5倍であった。鰓カタラーゼの Km は 3 魚種で有意差がなかった。赤血球カタラーゼの Km はマダイが最も低く,ブリとヒラメの間には有意差がなかった。
  • 喜田 潤, 渡邉 裕介, 塩野谷 勝, 小嶋 純一
    2020 年 68 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    新潟県柏崎市で漁獲されたヒゲソリダイを親魚として養成し,自然産卵で得られた受精卵を用いて,500 l 黒色ポリカーボネート製水槽で種苗生産を試みたところ,孵化後31日目で2,760個体(体長約17 mm)の生産に成功した。孵化後8日目に死亡個体が増加したが,これは早朝の光環境の急変によって仔魚が奔走する行動に起因すると考えられた。餌料系列は,L 型ワムシの後にシロギス活卵を給餌する方法であったが,活卵への嗜好性が弱かったことから餌料系列の検討が必要と考えられた。親魚養成期間に,9℃台および29℃台の水温が1ヶ月間続いたが,衰弱する個体はなく,高温,低温に強い魚種と考えられた。また,スレなどの傷に強かった。産卵水温は23℃から26℃の範囲で,成熟・産卵リズムは非同時発生型・多回産卵と考えられた。あわせて,種苗生産を通して得られた本種仔稚魚の形態発育を記載し,既往知見と比較した。
  • 藤浪 祐一郎, 清水 大輔, 山田 徹生, 大河内 裕之
    2020 年 68 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    ALC 標識を装着したヒラメ人工種苗,合計14放流群の放流時と漁獲時の黒化率を比較した結果,1群を除いて両者に有意な差は認められなかった。個体ごとの無眼側黒化発現状況を示す指標として黒化面積比によって6段階に区分した「黒化レベル」を定義し,6放流群の稚魚,0から1歳の採捕魚,および2歳以上の採捕魚について各レベルの出現頻度を比較した結果,5群で有意差は認められなかった。以上の結果から,ヒラメ人工種苗の黒化率は放流後にほとんど変化しない可能性が示唆された。ヒラメの放流効果調査では一般的に無眼側の色素異常が放流魚の標識として用いられるが,無眼側に黒化部位の無い種苗を含む放流群においても,市場調査で推定された標識魚(黒化魚)の水揚げ尾数を放流時の黒化率で除することにより,黒化の無い放流魚が天然魚に誤認されることによって生じる過小推定分を簡便に補正できると考えられた。
  • 山本 昌幸, 伊藤 篤, 山崎 英樹, 兼松 正衛
    2020 年 68 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    高級大型二枚貝であるリシケタイラギの効率的な垂下中間育成法を検討するため,異なる収容開始殻長と密度で生残率と成長率を調べた。さらに,水槽で殻長3.0~23.3 mm 稚貝の潜砂能力を調べた。中間育成試験は夏から秋に4回実施した。平均生残率は57%となったが,3回目の試験では大雨による低塩分によって生残率が27%と低くなった。4回のうち3回の試験で生残率は大型群(平均殻長:約10 mm)の方が小型群(約5 mm)より7.3~20.0%高い値となり,残りの試験では,両群の生残率はほぼ同じであった。成長率(平均値)は0.37~0.64(0.50)mm/day となった。成長率は低密度の方が高密度より0.03~0.07 mm/day 高くなった。潜砂能力は殻長5~20 mm の稚貝で高かった。
  • 上野 綾子, 山本 智子
    2020 年 68 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    日本沿岸に普遍に分布する多毛類コケゴカイ Simplisetia erythraeensis(環形動物門:ゴカイ科)について,鹿児島湾の思川河口に生息する個体群を対象に,性成熟のプロセスとその季節変化を調査した。組織切片では,卵母細胞と精母細胞が別々の個体で見られ,卵母細胞が体腔で観察されたため,本種は雌雄異体であり,雌は卵巣を持たず体腔内で卵形成を行うことが明らかになった。雌の性的成熟は2つの段階(F1 と F2)が確認され,F2 は核,卵黄,および粗面小胞体様構造を有する事が確認された。F1 は3月から8月に,F2 は雄が精母細胞を持つ7月から8月に発生し,特に7月は出現率が高かったことから,繁殖期のピークは7月であることが示唆された。また,性的に成熟した雌と雄は筋肉層の大部分を消失していた(生殖変態)ことから,本種は1回繁殖でエネルギーの大部分を費やすと考えられる。さらに,成熟した雌は生殖変態した疣足を有していなかった為,本種は生殖群泳をしないであろうと示唆される。
短報
資料
  • 石原 秀平, 清 明広, 楠田 理一, 三柴 徹, 中本 光則, 村田 修, 熊井 英水
    2020 年 68 巻 1 号 p. 79-88
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    わが国において唯一,動物用医薬品として製造承認を得ている魚類および甲殻類の麻酔剤であるオイゲノール製剤の「FA100」を用い,近年普及しているワクチンの注射を想定して,マダイ,ブリ,カンパチ,シマアジ,イシダイおよびイシガキダイ稚魚を対象魚とし,「FA100」の麻酔効果と魚に対する安全性について検討した。その結果,供試した魚種や魚体重は異なるが,供試魚の安全性およびワクチン注射の作業時間などを考慮して100~200 ppm の希釈が適正な麻酔濃度であることが分かった。ただし,カンパチで100 g を超える場合には,麻酔から回復することなく死亡する供試魚が多くなる傾向が認められたことなどから,ワクチン注射の場合には,実際の作業現場にて,本研究を参考にし,事前に最適な麻酔濃度,麻酔時間を設定して行う必要がある。
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