1. 宮崎県北部海区沖の流れ藻につくブリ, カンパチ稚魚を採集して, 生簀中で1日体重比25-40%の鮮魚肉を投与して養魚し, その間稚魚の分布, 漁法, 餌付け, 投餌法, 成長, 販売などについて予備的調査を行なった。
2. 稚魚の漁獲は漁具の改良と採苗器の敷設により可成りの量産が見込める。小型稚魚 (体長7cm以下) を対象とする盛漁期は5月中旬から6月上旬まで, それより大型の種苗は8月迄が適期であった。
3. 本県ではブリとカンパチの稚魚が相半ばして漁獲せられ, カンパチの年末迄の成長はブリと差異なく, 大体1kgに達し, 価格は290乃至320円で12月29日に売れた。
4. 餌付きは良好で, 8, 9, 10月が食欲成長共に旺成で, 以後水温の降下と共に減退した。
5. 生簀による養魚は, 残り餌を網底に落さぬよう注意しないと, カニ, ウミヘビ, ウナギなどによって網を破られ養魚を逃がす恐れがある。
6. 餌料供給の不円滑による友喰いや, 網の破損による逃亡のため, 正常状態における歩留りが調査出来なかったが, 魚病による減耗は殆んど無かった。
7. 眼球が大きく固いなどの欠点はあるが, アオメエソ (メヒカリ) も餌料としてアジ, サバ, カタクチイワシなどの他の餌と比較して適性に大差なく, 6月以降年末迄安定して大量安価に入手出来れば餌として適当である。
8. 魚売上代金の143,553円に対して, 要した餌代は約80,000円であったが, 冷蔵設備を設ければ餌代はずっと安くなり, 腐敗させることも途切れて絶食させることもなくなるであろう。
9. 宮崎県において大量に養魚するには, 今少し種苗の稚魚の自給自足のため漁具漁法について研究を要するが, 見通しは極めて明るく, 浦尻湾は好適漁場と認める。
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