2001年に情報公開法が制定され、国立大学法人でも適正な文書管理が試みられてきているといわれる。しかし、多くの国立大学には非現用文書の受け入れ先がなく、歴史的あるいは学術的に重要な文書等が失われる可能性がある。歴史的に重要かどうか検討されることなく、保存期間の満了した文書が廃棄されているかもしれない。従って、公開できないとされる個人情報の含まれた歴史的に重要な文書が、永遠に見られないかもしれない。本稿では、卒業論文を例としてとりあげ、将来それが歴史的資料として見られるかどうかについて考える。最初に国立大学法人での卒業論文の実際の扱いについて見ておきたい。次に、情報公開法における個人情報について説明し、最後に法人文書に含まれる著作物について考える。
現在、国文学研究資料館が所蔵している蜂須賀家文書の中に、「草案」と呼ばれる一連の史料がある。この「草案」は、蜂須賀家歴代の書状の留であり、特に近世前期のものが多く残されている。蜂須賀家においては初代~3 代までの史料が、依るべき先例として重視されて整理・保管され、天保期の整理事業の際には、保管に混乱が生じていた「草案」の整理・謄写・年代比定が行われた。そしてその際に形成された包紙・貼紙などの原状が、現在にまで引き継がれた。本稿では、蜂須賀家文書「草案」の史料的性格と共に、天保期の史料整理事業をふまえて、「草案」の年代比定作業を行った。「草案」は、近世前期の政治動向や大名の交際を知る上で有益且つ重要な史料である。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら