1)抗ウサギ腎モルモット血清を唯1回注射することにより腎にアナフィラキシー・ショックを惹起せしめた.1群では抗血清を妊娠ウサギの左腎動脈より注射し, 他の1群では耳静脈より同じく注射し, その際の腎に於ける組織学的変化を検索した.2)左腎動脈注射群では, 右腎には著変は認められず, 左腎には軽度の変化, 即ち, 糸毬体の貧血と糸毬体毛細血管の拡張が認められた.3)一方, 耳静脈注射群では多彩な所見が観察された.この群に於ける糸毬体の組織学的変化は3型に分類し得る.各型の変化は次の如くである. i)ボウマン氏腔の塩基好性物質, 血管係蹄の癒着, 貧血, 糸毬体の腫大等を伴う変質性の糸毬体変化 ii)メザンギウム細胞の増成, 毛細管の貧血を伴う増殖性の糸毬体変化 iii)軽度の貧血を呈するのみの糸毬体 3)上述の実験結果から, アナフィラキシー反応は妊娠によって増強されることが述べられ, 又, 内分泌臓器の機能が腎炎の発生機転に対してかなり重要な役割を演じているであろうことが示唆される.しかし, 尚, この点に関しては詳細な研究が必要とされる.
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