気管支喘息における気道上皮の線毛運動の変化とその役割を明らかにしたいと考え, 健康人および喘息患者の鼻粘膜細片でその線毛運動を観察した.さらにモルモットを用いた実験喘息ではその気管上皮の線毛運動に対する抗原および数種の薬物の作用を検討した.1) 採取後5分のヒトの鼻粘膜上皮の線毛運動数を算定すると, 健康者に比し喘息患者は非発作時においてもその数は有意に減少しており, また発作時ではさらに減少するのが認められた.また, 喘息患者の鼻粘膜の線毛運動は in vitro で起因抗原により特異的に抑制された.2) モルモット気管上皮では, その線毛運動に対し aminophylline, trimetoquinol hydrochloride, hydrocortisone, propranolol, L-cysteine ethylester hydrochloride, disodium cromoglycate 等は in vitro および in vivo ともに直接的作用を示さなかった.また, 実験的コンニャク喘息では起因抗原であるマイコで特異的にその線毛運動の低下を生ずるが, disodium cromoglycate はこの現象を抑制し, また in vivo における喘息惹起試験による発作をも抑制した.
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