モルモットの実験的アレルギー性甲状腺炎(EAT)病変の臓器特異性を, 特定臓器の選択的侵襲性および組織所見の特質の2面から検討した.対照感作群としては, 同じくCFA併用感作法による実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE), 同副腎炎(EAA), およびCFA単独注射のの3群を作成し, EAT群とこれらの対照感作群との間で, 甲状腺ならびに全身諸臓器の病変を組織学的に比較吟味した.1.EAT群甲状腺病変の発生頻度と程度は, 3対照群のそれらに比し格段に優っていた.2.EAT群甲状腺変化の質的な特徴は, 炎症巣の瀰慢化傾向と多彩性にあるといえる.すなわち, (a)間質性細胞浸潤の瀰慢化傾向, 特に小葉間の細静脈周囲性細胞反応の瀰慢化傾向;(b)浸潤細胞の種類の多様性;(c)主に単核細胞の濾胞上皮およびコロイドへの浸潤, それに基づく濾胞破壊;(d)炎症に付随する腺実質の過形成, 特に充実性上皮増殖による炎症像の修飾('pseudo-granulomatous'change)がその内容をなす.これに反して, 3対照群に散発する甲状腺変化は, (a)微小巣状の間質性細胞浸潤, 特に小さく限局したperivascular cuffing;(b)浸潤細胞の単調性;(c)浸潤破壊濾胞の欠如;(d)腺実質の反応性過形成の欠如を示した.3.背景病変, すなわち, EAT, EAE, EAA群における標的臓器以外の諸臓器の病変, ならびにCFA群の全身病変を比較した結果, 各群間の差異は量的にも質的にも認め得なかった.肺以外の臓器の病変は, いずれも軽微かつ散発的であり, 主に間質性ないし細血管(特に静脈)周囲性微小浸潤巣や小肉芽増生巣であった.したがって, EATの背景病変は, 他の感作群とも共通の非特異的反応性病変となし得る.4.EATの要素的諸病変のpathogenesisにつき, 主に, 免疫病理学の立場から考察を加えた.
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