成人病センターのsubtitleを有し, 成人を診療対象とする著者らの病院の呼吸器科allergy clinicにおいて診療した成人喘息165例を, 壮年期(50才未満88例)と老年期(50才以上77例)に分けて臨床集計を行い, それぞれの病像の特徴につき若干の検討を加え, 以下の結論を得た.1)初発年令をみると165例中12例(7.3%)が10才未満に発病しており, 小児喘息からの移行が考えられるものは意外に少なかった.一方壮年期, 老年期に至って初発するものも少なくなく, 中には小児喘息が1度治癒と判定されながら壮年期以後に再発したものもあり, 気管支喘息の経過や予後を論ずるに当っては, 患者の生涯を通じての長期的観察が必要と思われた.2)皮内反応陽性率を抗原別にみると, 家塵, たたみ, 綿, 絹, そば粉, ブタクサ花粉, カナムグラ花粉, スギ花粉などは壮年者に高く老年者に低い傾向がみられた.しかし, 真菌特にCandidaでは年令による差を認めなかった.そして, 老年期患者特に老年期初発のものでは皮内反応が全検査種目に陰性を示すものが高率で, 血清IgE値, 末梢血好酸球の態度からも加令による免疫現象の低下が考えられた.3)感染因子について:観察期間中に白血球増加をみたものは壮年期で20.2%, 老年期で31.2%;CRP陽性となったものは壮年期で27.9%, 老年期で48.1%に及び, 老年期喘息における感染因子の関与の大なることが示され, 感染が予後に重大な影響を及ぼすと考えられるので, これに対する対策の重要性を強調した.
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