インスリン低血糖による血漿cyclic AMPの上昇は, 内因性アドレナリンの変化に起因するといわれている.本実験では, インスリン注射時のcyclic AMP上昇が健常人および喘息患者の間で差があるかどうかを検討した.気管支喘息患者8例(14-55才, 男女各4例), 健常男子5例(23-26才)にregular insulin 0.1unit/kgを静注し, 0, 30, 60, 90, 120分に採血し, 血糖, 血漿cortisol, 血漿cyclic AMPを測定し, 前後2時間の尿中カテコラミンも測定した.insulin静注後の血糖の低下率およびcortisolの変動は両群で差はなかった.尿中ノルアドレナリンには明らかな変動はみられなかったが, 尿中アドレナリンは健常人, 喘息患者とも著明に増加し, 増加量はそれぞれ6.16±3.42μg/2hr, 4.41±3.6μg/2hrで両群に有意差は認められなかった.血漿cyclic AMPは健常人で前5.8±3.3 p moles/ml, 60分後13.3±3.5 p moles/ml(p<0.01)へ有意に増加したが, 喘息患者では前6.2±2.7 p moles/mlで注射後も明らかな増加はみられなかった.以上の結果より, 喘息患者では低insulin血糖により分泌されたアドレナリンに対するcyclic AMPの反応性が低下しており, β-受容体の抑制が存在することが示唆された.
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