全身性エリテマトーデスを自然発症するNZB×NZW F_1 マウス (B/W) の雌を用いて levamisole の抗核抗体および尿蛋白の変動ならびに腎病変におよぼす影響を観察した.B/W は3群にわけ, levamisole 20mg/kg の大量投与群, 1.25mg/kg の少量投与群をそれぞれ10匹, 対照として生理的食塩水投与群を13匹用いた.levamisole は3ヵ月令より毎週1回皮下に投与した.尿蛋白は市販テープを用いて (1+) 以上を陽性とし, 血漿の抗核抗体は蛍光抗体法で, 1ヵ月ごとに追跡した.8ヵ月令に達した時点で全例を屠殺し, おのおのの腎所見を組織学的に検索した.その結果, 尿蛋白は対照群でもつとも陽性率が高く推移し, 3ヵ月令で15%, 5ヵ月令で54%, 7ヵ月令から全例が陽性を示した.少量投与群では3ヵ月令で0%, 5ヵ月令では40%, 8ヵ月令で全例陽性となり, 大量投与群では3ヵ月令で0%, 5ヵ月令では10%, 8ヵ月令で80%と, 他の群に比べ出現時期も遅く, 陽性率も低かつた.抗核抗体は対照群では6ヵ月令で38%, 7ヵ月令で70%, 8ヵ月令で80%の陽性率を示し, 少量投与群ではおのおの30%, 78%, 80%と対照群との間に有意の差を認めなかつた.大量投与群では5ヵ月令で50%, 7ヵ月令で86%, 8ヵ月令では 100%の陽性率を示し, 他の2群に比べ抗体の出現時期も早く, 出現率も高かつた.腎の組織像では, levamisole 投与群では対照群に比べ, 有意に腎病変の進行が抑制されており, また大量投与群では少量投与群よりさらに軽度の病変であつた.大量投与群にみられた抗核抗体と腎病変の解離については, 抗核抗体の構成成分に対する検討, immune complex の免疫化学的解析および levamisole の免疫機構への作用機序などの検索が必要であると考えられた.
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