目的:健康な新生児, 乳児および幼児期の血清中の補体系各蛋白成分値を測定し, これらを成人値と比較して新生児の補体系蛋白成分値が出生後成長に伴いどのように増加するかを究明しようとした.対象および方法:補体成分などの9種類の補体系蛋白成分(CLq, Cls, C4, C3, C5, C9, factor B, C1INH, C3bINA)は, 正常分娩時の母体血と満期産AFD児の臍帯動静脈血との18組のペア血清および新生児期から幼児期までの小児99例についてsingle radial immunodiffusion法で, 補体価(CH50)は正常分娩時の母体血と満期産AFD児の臍帯動静脈血との18組のペア血清についてMayer法で測定した.なおそれぞれの値はmean value±1SDで示した.またこれらの値を成人値(mean value)と比較した.成績:a) 臍帯血のCH50および補体系蛋白成分値について.1) 臍帯動脈血と臍帯静脈血との間のCH50および9種類の補体系蛋白成分値にはいずれも有意差を認めなかったので, 臍帯動脈血と臍体静脈血とのCH50および9種類の補体系蛋白の値の平均値を臍帯血値(cord value)とした.2) 臍帯血のCH50および9種類の補体系蛋白成分値はすべて母体値あるいは成人値に比して低く, それぞれの補体系蛋白成分により, その比率には大きな差異があった.3) 臍帯血のCH50および補体系各蛋白成分値と新生児の在胎日数との相関では, CH50, Clq, C3, C4およびC5の値が在胎日数と正の相関を示した.さらに臍帯血の9種類の補体系蛋白成分値とCH50との相関では, C3, C4, C5およびC1INHの値がCH50と正の相関を示した.b) 補体系各蛋白成分の発達について1) ClqおよびCls値は生後3週-3ヵ月頃にそれらの臍帯血値あるいはそれ以下にまで一時的に低下し, その後は月年令とともに上昇し, 1才頃に成人値域の下限(mean value-1SD)に達した.2) C1INH値は出生時よりほぼ成人値域の下限にあって, その後漸増した.3) 新生児期および乳幼児期の9種類の補体系蛋白成分値はそれぞれ小児により著しい個体差があり, とくにClq, Cls, C9, factor BおよびC3bINA値は生後1才頃まで極めて低値を示すものがあったが, 多くの補体系蛋白成分値は概して生後4-7日頃に上昇し, その後一時的に低下するが, その後は月年令とともに漸増し, 生後6ヵ月ないし4才頃で成人値に達した.
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