豚膵 kallikrein を用いて, マウス脾臓リンパ球に対する作用について検討を行い, 以下の結果を得た.1. 膵 kallikrein は, マウスのcGMP level を上昇させるが, cAMP level は有意な変動を与えなかった.2. 膵 kallikrein は, 1-10 BAEE U/ml の濃度でマウス脾臓リンパ球を活性化した.しかし, より高濃度 (30 BAEE U/ml) の kallikrein によっては, リンパ球の活性化が逆に抑制された.高濃度の kallikrein により bradykinin 生成が起こった結果, リンパ球活性化が抑制されたと考えられるが, その根拠を従来の知見を引用し考察を加えた.3. Kallikrein を61℃30分加熱して酵素活性を不活化しても, マウス脾臓リンパ球に対する活性化作用がみられた.この作用は, 高濃度 (30 BAEE U/ml) の kallikrein を加熱不活化したものでも認められた.この事実は, kallikrein のリンパ球活性化作用が酵素活性に依存的でないことを示している.4. 膵 kallikrein は, マウスリンパ球の subpopulation (T cell enriched lymphocyte, B rich lymphocyte) に対して同様の活性化作用を示した.5. 膵 kallikrein は, マウスリンパ球の Con A, PHA-P または LPS 刺激によるリンパ球の活性化に対し, その増強作用を示した.6. 膵 kallikrein は, 感作マウスの脾臓リンパ球の抗原刺激による活性化を有意に増強した.7. 高濃度 (30 BAEE U/ml) 膵 kallikrein によるマウスリンパ球の活性化抑制作用は, kallikrein inhibitors (soy bean trypsyn inhibitor, Trasylol) の前処理によってブロックされた.この事実より, kallikrein によるリンパ球増強作用は, 上記の実験結果と併せ考察すると, 酵素活性には依存的ではないことを示唆するものである.
抄録全体を表示