ハチ過敏の発生について6町全住民88202人につき調査, 一部の保育園児, 学校生徒について追加補正し, 疫学的, 免疫学的検討を行った.1)1000名の衛生役員を通じアンケート調査を行い, 101名の過敏者の存在が報告された.2)アンケート調査に返答のなかった住民に無作為に200世帯808名を選び直接電話により調査し, 1名の過敏者を発見し, 未返答群の中に109名の過敏者の存在が推定された.園児, 学校生徒について追加調査の結果, 109名の過敏者の存在が推定された.総計320名となり, 全地域での発生率は0.36%となった.3)年齢別発生率をみると, 学校生徒で0.8%, 40歳から69歳で0.07%であった.4)過敏者で局所反応, 軽症全身反応, 重症全身反応, 遷延型局所反応を示したものは過敏者の57%, 32%, 5%, 5%であった.5)原因バチはアシナガバチによるものが73.3%と多く, スズメバチによるものは重症者が多かった.6)職業別では山林労働者に7.26%と高い発生率を示した.7)過敏者のうち29名について掻皮反応を行い, 1列を除き全例に陽性を示した.14名の過敏者血清でRASTを行った結果, いずれかの抗原に陽性を示した.8名の正常人は両検査にすべて陰性を示した.本調査の正しさを示している.8)過敏者での虫体抗原による掻皮反応, RASTの陽性率は20-30%と低率で, 診断的意義は低い.9)過敏者の20%にアトピー性疾患がみられ, 血清IgE値も高く(平均268.8IU/ml)ハチ過敏のrisk-factorとして無視できない.
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