リンゴ, ナシの特産地である長野県下伊那郡松川町において, 果樹栽培が花粉症発生におよぼす影響を調べるために, 果樹栽培従事者835名, 非従事者679名, 計1514名を対象に疫学的調査を行った.その主な結果は以下の通りであった.(1)果樹の開花期に何らかのアレルギー症状を有しかつリンゴまたはナシの RAST が陽性であった者は, 上大島地区の従事者(N=330, 果樹栽培の中心地で大部分が専業農家)でそれぞれ6.3%, 3.5%, 上片桐地区の従事者(N=460, 歴史がやや浅く, 専業率も低い)でそれぞれ2.5%, 1.8%であった.一方非従事者ではそれぞれ平均0.3%, 0.15%とわずかな陽性率を示したのみであった.(2)従事者は非従事者に比べてスギおよびカモガヤの RAST 陽性率についても有意に高率であった.特に後者の陽性率の高さは顕著で, 上大島地区の従事者では18.9%にも達しており, 果樹園の下草として繁茂しているイネ科の植物も果樹栽培従事者の花粉症の原因として大きな問題と考えられた.
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