パラインフルエンザウイルス1型(hemagglutinating virus of Japan, 以下HVJ)を接種したモルモットを用いてヒスタミンに対する鼻粘膜の過敏性, 反応性について検討した.HA titer 5120倍のウイルス浮遊液を10μlずつ両鼻腔へ点鼻し, 経鼻接種を行った.接種後2, 4日目に, 段階希釈した塩酸ヒスタミンの水溶液を用いて鼻粘膜過敏性閾値を測定した.また, 接種後4, 7日目に全麻下に気切を行い, 逆行性にチューブを後鼻腔に留置し, ヒスタミン誘発前後における鼻腔洗浄液中の総蛋白量, アルブミン量, 及び鼻腔抵抗値を測定した.また, 組織学的な検討もあわせて行った.HVJ接種群のヒスタミン過敏性閾値は, 対照群よりも有意に高値を示した.ヒスタミン誘発後の鼻腔洗浄液中の総蛋白量, アルブミン量, 鼻腔抵抗値はHVJ接種群においては, 対照群よりも低値を示し, HVJ感染により鼻粘膜の過敏性及び反応性は低下することが示唆された.組織学的には, 繊毛の障害や上皮細胞の脱落するような高度の障害はなく, PAS陽性の杯細胞の増多が認められた.このような上皮の状態がヒスタミンに対する過敏性, 反応性の低下と関係している可能性が示唆された.
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