ホヤ喘息患者に対して特異的に皮内反応を与える3つの糖タンパク性ホヤ抗原, DIIIa, Ei-M, 及びGi-repの内, 喘息誘発能及び結膜反応性を合わせもつのはDIIIaだけで, Ei-MやGi-repはこれを欠く.このDIIIaを, 過ヨウ素酸で酸化すると, 皮内反応性と同時に, 結膜反応性も消失するので, この両アレルゲン活性は, いずれも, DIIIaの糖鎖上に存的する同じエピトープに依存するものと考えられた.一方, プロナーゼ消化や, カルボキシル基及びアミノ基の化学修飾によってもDIIIaの結膜反応性は消失するが, 皮内反応性は保存される.したがって, DIIIaに特有な, 気管支や結膜などの粘膜におけるアレルギー反応の誘発は, DIIIaのタンパク部分に存在する比較的小さな構造的因子によって支援されている可能性が示唆される.この結膜アレルゲン性支援因子(CASF)は, DIIIaに粘膜透過性を付与することにより, 粘膜中に分布するホヤアレルギー特異的IgEに対して, 糖鎖性エピトープを介するDIIIaの免疫反応を可能にしているものと思われる.なお, ウサギ抗DIIIa血清の特異性を解析して, DIIIaマーカーとして有用な, 過ヨウ素酸酸化及び酸に安定で, 熱及びアルカリには不安定な, タンパク性のエピトープ(γ型)の存在を検出した.しかし, γ型エピトープは, この熱及びアルカリには安定なCASFとは一致しない.
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