気管支喘息78例を対象に, 年齢による気道反応の病態生理的変化について, 臨床的検討を加えた. 1. 換気機能検査では, %MMF, %V^^._<50>, %V^^._<25>などの, むしろ小ないし細気管支領域の換気障害を示すパラメーターは51歳以後の症例で, また, FEV_<1.0>%は71歳以上の症例で, 若年者と比べ有意の低下傾向がみられた. 2. 気管支肺胞洗浄液 (BAL) 中の細胞成分では, リンパ球の出現頻度は, 61〜70歳の年齢層で高い傾向がみられ, また, 好中球は, 50歳までの年齢層では加齢とともにその出現頻度が増加する傾向がみられた. 3. 各臨床病型の出現頻度では, Ia. 単純性気管支攣縮型は, 60歳までの症例では年齢が高くなるにつれて減少する傾向を示し, 一方, II. 細気管支閉塞型は, 年齢が高くなるにつれて増加する傾向を示した. また, Ib. 過分泌型は31歳以後の年齢層から出現しはじめ, その出現率は51〜60歳の年齢層で最も高い値を示した. 4. メサコリンに対する気道過敏性試験では, 年齢が高くなるにつれて気道過敏性が低下する傾向が観察された. 5. 白血球からの化学伝達物質遊離の検討では, ヒスタミンは若年層で多い傾向を示し, 51歳以上の症例との間に有意の差がみられた. 一方, LTB_4, LTC_4遊離では51〜60歳の症例で高い値が示されたが, 若年者との間に有意差はみられなかった. 以上の結果より, 加齢とともに, 換気機能, 気道炎症細胞の種類や程度, 臨床病型, 化学伝達物質などの, 喘息の病態生理と直接関係を有する諸要素が変化することが示唆された.
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