過去30年間に, カキのむき身作業場の作業環境や作業方法は顕著に改善されたので, これらの改善がホヤ喘息に及ぼす影響を調査し, 次の結果をえた。1) l963, 1968, 1976, 1984, 1988および1992年におけるホヤ喘息の発生率は作業従業者の36.0, 30.1, 21.7, 22.0, 18.0および26.6%であった。作業環境, 作業方法の改善に伴って, 患者の中のあるものは, 作業に従事しても喘息症状を起こさなくなったので, 実際の有症者は36.0, 18.7, 15.8, 7.4, 8.4および8.0%となった。2) 重症者の占める割合は1963年の29.2%から急速に減少に転じ, 1984年以後は皆無となった。逆に, 軽症者の占める割合は1963年には35.4%であったが, 1988年以後は全例が軽症例となった。3) 1984年より1992年までの期間の新規作業従業者は74名で, この間のホヤ喘息発生は8名, 10.1%, 全例が鼻炎型であった。4) 作業に従事しても喘息症状を起こさなくなった症例が, 1984年に53例, 1988年に40例, 1992年に49例あったが, これらの31.0%は現在減感作療法をうけており, 57.0%は過去に同療法をうけていたが, 12.0%はなんらの治療もされないままであった。
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