Pityrosporum orbiculare (P. orbiculare)は, 成人の健常皮膚に常在する好脂性の酵母であり, アトピー性皮膚炎 (AD) の原因アレルゲンとして注目されている. 我々は, 44名のAD患者 (AD単独17名, 喘息合併27名)を対象に, CAP RAST FEIAを用いて P. orbiculare特異IgE抗体を測定した. 陽性率は, AD単独群で88.2%, 喘息合併群で74.1%であった. AD重症群(n=23)の平均RAST index±SDは2.77±1.34であり, 中等症以下(1.88±1.41, n=21)に比べて有意に高値であった. また, 顔面, 頭部, 頚部に湿疹のあるもの (2.79±1.26, n=27)は, ないもの (1.64±1.44, n=17)に比べて有意に高値であった. したがって, P. orbiculareは, ADの重症化に関与している可能性が示唆された. P. orbiculare特異IgEと Candida albicans (C. albicans)特異IgEの間にはr=0.62, p<0.01で有意な相関がみられた. C. albicans抗原によるP. orbiculare RAST抑制試験で, 検討した5例中1例で濃度依存的な抑制がみられたが, 他の4例はほとんど, あるいは全く抑制を受けなかった. したがって, P. orbiculareには, C.albicansと交叉抗原性を持つエピトープと, P. orbiculare特異的なエピトープの両者が存在することが示唆された.
抄録全体を表示