アトピー性皮膚炎(AD)におけるダニ脂質抗原について検討した. Dermatophagoides farinae(Df)の脂肪酸分析ではeicosapentaenoic acid (EPA)が全脂質中0.88%存在した. 粉砕生ダニ虫体asis貼付試験ではDfにおいてAD患者とcontrol間に陽性率の有意差を認めた. ダニの後胴体部腺よりの分泌成分を用いた貼付試験では, D.pteronyssinus(Dp), Df共に存在するcitral(2%)では, AD患者ではcontrolとの有意差はないものの陽性率が高かった. ダニ脂肪酸貼付試験では, EPAではAD患者はcontrolに比べ陽性率が高く, asis (100%)では有意差を認めた. 次に皮疹部, 粉砕生ダニ虫体, EPA貼付試験陽性反応部の病理組織学的, 及び免疫組織学的検査を施行した. いずれもHE染色では表皮に海綿状態, 真皮上層にリンパ球様細胞の浸潤を認めた. 浸潤する細胞はほとんどCD4, HLA-DR,ICAM-1陽性でCD8はほとんどで陰性あった. 以上より, ADの接触アレルゲンとしてダニ蛋白のみでなく, 分泌物を含めダニ脂質はさらに今後検討する必要があると考えた.
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