正常乳児を対象として, 生直後よりの栄養 (母乳, 調整粉乳, アミノ酸乳) により便粘液細胞診中に出現してくる好酸球の出現状況を半年間観察し, 消化管アレルギー (ミルクアレルギー) 患者のそれと比較し, 以下の結果を得た。(1) 二親等以内にアトピー歴がない正常乳児においては, 哺乳開始後の移行便中にハンセル染色陽性顆粒を有する細胞 (好酸球) が, 一過性に出現し1週間以内にほぼ消失した。(2) 哺乳内容にかかわらず (母乳, 調整粉乳, アミノ酸乳), 便粘液中好酸球は出現した。(3) 母乳哺乳児は調整粉乳に, またアミノ酸乳哺乳児は母乳に変更すると再び一過性に多量の好酸球の出現が認められたがすぐに消失した。その後同量の調整粉乳を与えても好酸球の出現は認められなかった。(4) 両親が強いアトピー素因を有する乳児において, 母乳から調整粉乳に変更した際に多量の好酸球が出現し, さらに好酸球数の低下が正常乳児に比較して遷延化した。(5) ミルクアレルギーを起こしている患児では便粘液中に多量の好酸球が常に認められた。調整粉乳又は母乳を除去すると臨床症状の改善と共に減少または消失した。また抗原と思われる調整粉乳, 母乳を再び経口負荷すると好酸球は増加を示し, 哺乳を中止しない限り持続的に便中に多量に出現した。以上より, 正常乳児とミルクアレルギー患児では便粘液中に出現する好酸球の動態が異なることが示された。この結果は, ミルクを原因とする消化管アレルギーの診断においてのみならず, 正常乳児の食物抗原に対する免疫応答を考える上でもきわめて重要な結果と考えられた。
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