近年, アレルギー疾患の治療管理において, 他の慢性疾患と同様に患者のQOL(quality of life)の評価が重要視されつつある.主要なアレルギー疾患である気管支喘息, アレルギー性鼻炎, アトピー性皮膚炎においても, その多くの患者は日常生活における身体的, 心理的および社会的活動が障害され, その全生活に多くの負担を強いられている.気管支喘息の場合を例にとると, 中等症以上の患者の多くは喘鳴, 呼吸困難, 咳, 痰などの気道症状の苦悩に加えて, 日夜の服薬, 通院, 日常生活での行動制限, そのための心理社会経済的負担は, なんらかの形でその生活にマイナスの影響を与えている.従来, 気管支喘息の臨床評価は, まず症状の程度と頻度, 次にピークフローを含めた肺機能, さらにステロイド薬やβ刺激薬の吸入, および内服を中心にした治療薬の使用量などの客観的尺度を中心に行われてきたが, 肝腎の患者自身がそれらの療養に関する全ての負担を, どう受け止めているかの評価は, それ程問題にされていないきらいがあった.近年, 喘息でも, 他の慢性疾患同様に患者の主観的健康感, 充実感, いわゆるQOLの重要性が認識されその正しい評価へのアプローチが, 欧米を中心に盛んに行われるようになりつつある.それらの状況をふまえ, 本稿では筆者の専門領域である気管支喘息患者のQOLの考え方および評価法を中心に概説する.
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