Fluticasone Drooionate (FP) dry powder (Diskhaler^<[○!R]>)吸入長期連用気管支喘息患者症例において,軽度の嚥下時違和感の訴えがあり,上部消化管内視鏡を行ったところ,食道部位にカンジダ症が認められた.そこで我々は,FP吸入薬長期使用患者における食道カンジダ症の合併状況について検討した.FPを長期定期使用している20例の喘息患者を,上部消化管内視鏡による食道カンジダ症の判定ではいずれも軽症で,合計7例(吸入ステロイドによる食道カンジダ症分類GradeI 3例, GradeII 1例,GradeIII 3例)が確認され,その頻度は35%であった.7例のうちに2例が軽度の嚥下時違和感および閉塞感の自覚症状があった.症状発現の2例は,いずれもGrade III の食道カンジダ症であることが確認された.検討I:健康成人4例において,FP 200μgの単回吸人後に回収した食道拭い液中の濃度より,食道部位の滞留状態を検討した.その結果,吸入直後の食道拭い液からFP量が3.3μg,吸入後30分間起きている状態の食道拭い液からは0.11μgが検出され,30分で約96%消失した.また,吸入後ただちに臥位にした状態で,30分間後の食道拭い液からは0.67μgが検出された.臥位の方が食道内での滞留量が高い結果であった.このため,睡眠直前の吸入を避ければ,食道カンジダ症を予防・治療可能と考えられた.検討II:症状を訴えたGrade III の食道カンジダ症を併発した2症例について,FPを睡眠前の吸入から,朝食・タ食前の吸入に変更して経過を観察したところ,症状が消失した.また上部消化管内視鏡を実施した1例は,食道カンジダ症Grade III から5ヵ月後にGrade Iに改善した.結論:長期連用FP吸入により,嚥下時違和感および閉塞感があった場合には,食道カンジダ症を併発していることを考えなければならない.また,吸入後直ちに患者が睡眠をとらなければ,食物摂取や飲水等により,食道内滞留FPがウォッシュアウトされて急減し,食道カンジダ症併発のリスクが減少する可能性が確認された.今回,症例数が少なく結論は出せないが,睡眠前の吸入を避け,食前に吸入を行うようにする指導が,食道カンジダ症の予防策や改善策として有用であることが示唆された.
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