研究目的:スギ花粉症患者を対象に, 2003年スギ花粉飛散シーズン中における鼻症状重症度とQOL障害度及びそれに対する薬物効果をアレルギー性鼻炎疾患特異的QOL質問票(JRQLQ)を用いて調査評価することを目的とした. 研究対象, 方法, 結果:スギ花粉飛散期(2月, 3月)に九州, 沖縄8県149施設を受診した花粉症患者3173例を対象とした調査で, 症状重症度とQOL障害度を軽度1から重度4までにスコア化した. (1)3173例の鼻症状スコア3以上が約23%, スコア2以上が約64%, QOL障害度スコア3以上が約10%, スコア2以上が約20-30%であった. (2)花粉飛散前薬物治療効果は, 飛散ピーク前に1回目の回答をした583例(前投与例:177例, 非投与例:406例)について症状立ち上がり抑制効果を評価し, 全シーズンに亘っての効果は1223例(前投与例:431例, 非投与例:792例)について解析した. その結果, いずれも飛散前薬物投与群の重症度, QOL障害度スコアが低く, 飛散前薬物投与が有効であることが示された. (3)飛散ピーク時(2月28日)前後少なくとも7日間の間隔で2回のアンケート回答をした582症例について, 1回目回答時に投与した薬剤の効果を解析した. 薬剤名を特定しない582例の重症度/QOL障害度共に2回目回答結果で有意な軽減を認めた(p<0.001). (4)単一薬剤名を特定し, 有効性を解析できた症例は, 抗アレルギー薬(aH), 抗ロイコトリエン薬(aLT), 各々81例と25例であり, 両者共に重症度/QOL障害度の改善をみたが, aLTが比較的高い効果を示した. 併用薬治療効果は, aH+局所ステロイド(St)(95例), aLT+St(12例), aH+aLT(25例)の3群でいずれも有効であったが, St併用が特に高い効果を示した. 結び:JRQLQはスギ花粉症によるQOL障害評価, QOLに関連した臨床経過の追跡, 薬物の効果を一般診療において評価できる有用な調査票である.
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