【背景・目的】埼玉県の小児アレルギー性疾患の実態把握に向け,小中学生における生活環境中の抗原の感作状況を調べ,これらとアレルギー性疾患との関連について検討する.【方法】2001年の埼玉県山間部の小学生79名と中学生119名の保存血清について,6種類の吸入抗原に対する特異IgE抗体測定およびアレルギー性疾患に関する聞き取り調査を行った.また,5年前の1996年の同学校の小学生117名と中学生56名の保存血清についても同様に特異IgE抗体測定を行った.【結果】2001年の対象者の各抗原に対する陽性率(%)は,小学生・中学生でそれぞれ,スギ:49,49;ブタクサ:10,12;ハルガヤ:18,19;ヤケヒョウヒダニ:39,39;ハウスダスト:42,42;ネコ皮屑:23,14であり,小中学生ともに同様の傾向であった.また,1996年の小中学生の各抗原に対する陽性率は,2001年とほぼ同様であり,変化は認められなかった.一方,両年にわたる追跡調査では,6種類の抗原に対する陽性率がいずれも5年後に上昇していた.聞き取り調査では,診断はないがアレルギー様の自覚症状がある者において,6種類の抗原いずれかに陽性の割合(%)は,小学生:70,中学生:89であり,症状がない者に比べて有意に高く,自覚症状と抗体保有との間に関連を認めた.【結語】今後の追跡調査により,抗原感作と発症要因との関連について検討し,対象地域における学童期の抗原感作予防対策を実施していくことが必要である.
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