症例は75歳女性.20歳代より手指のレイノー症状を自覚.75歳時に胸部異常影と左足趾の壊死のため入院.手指から前腕の皮膚硬化,間質性肺炎,抗Scl-70抗体陽性よりびまん型強皮症,抗SS-A抗体陽性,口腔乾燥症状,涙液低下,唾液腺機能低下所見よりシェーグレン症候群と診断した.左足趾の切断術後70日頃より全身の浮腫,低酸素血症,胸部不快感,発熱が出現した.炎症所見と心臓超音波検査で心嚢液貯留と右房の虚脱徴候を認め心タンポナーデと診断した.プレドニゾロン20mg/日により心嚢液貯留と心タンポナーデ所見は消失した.心外膜炎は強皮症の約半数,稀にシェーグレン症候群に合併するが多くは無症候性である.強皮症による心外膜炎に対してはステロイド剤無効とされるが,ステロイド反応性心膜炎を合併した強皮症例,またシェーグレン症候群例が散見される.過去の報告例では臨床的特徴として炎症反応,強皮症では間質性肺炎を伴う点が共通しており,強皮症およびシェーグレン症候群に伴う心膜炎の病態と治療を考える上で重要と考えられる.
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