【背景と目的】近年,小児気管支喘息における簡便な長期治療管理の判定を行う質問紙として,JPACとC-ACTが開発された.我々は,各受診時におけるJPAC,C-ACTと呼吸機能検査,呼気一酸化窒素との関連からその有用性を報告したが,さらに各患児毎における経時的変化に着眼し検討を行った.【対象と方法】6〜11歳の喘息患児のうち,前回受診時とのJPAC,C-ACT,呼吸機能検査および呼気一酸化窒素濃度(FE_<NO>)の比較が可能であった24例より得られた102サンプルを対象とした.各質問紙の変化の相互の相関,各質問紙の前回との点数差(±JPAC,±C-ACT)と呼吸機能検査の変化率(ΔFEV_1%,ΔFEF_<25-75>%,ΔPEF%,ΔFVC%),およびFE_<NO>の変化率(ΔFE_<NO>%)の相関を検討した.また,呼吸機能,FE_<NO>の変化率に与える背景の影響を検討した.あわせて,ΔFE_<NO>%と呼吸機能検査の変化率の相関を検討した.【結果】JPACとC-ACTの変化の間には強い相関を認めた(ρ=0.725,p<0.0001).±JPAC,±C-ACTともにΔFEV_1%,ΔFEF_<25-75>%,ΔPEF%との間に弱い相関を認め,±JPACとΔFEF_<25-75>%の相関が最も強かった(ρ=0.357,p=0.0003).また,±JPACとΔFE_<NO>%の間に弱い相関を認め(ρ=-0.204,p=0.040),ΔFE_<NO>%と各呼吸機能検査の変化率の間にはいずれも相関を認めなかった.【結語】JPAC,C-ACTともに各患児における経時的な点数変化は,素点そのものに比べ呼吸機能の変動をより反映する.よって,JPACやC-ACTを用いて各患児毎にその経時的変化を評価することで,臨床実地上,より大きな効果を期待できる.しかしFE_<NO>は背景因子の影響をうけやすく,両者をどのように用い治療に反映させるかが今後の課題である.
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