【目的】肥満の気管支喘息(以下,喘息と略す)への関与は,小児においても数多くの報告があるが,そのメカニズムについては必ずしも明らかではなく,我が国での検討,報告は少ない.今回,我々は肥満症を合併した喘息児を対象とし,肥満の改善に伴う呼吸機能の変化について検討した.【方法】当科で入院による肥満治療を行った喘息を有する児10名(男児8:女児2,平均年齢10歳)に対し,肥満改善プログラムの前後で身長,体重,体脂肪率,腹囲を測定し,呼吸機能検査(スパイロメータ)を実施した.各肥満指標(BMI,体脂肪率,体脂肪量,腹囲)の改善率と呼吸機能パラメーターの変化率との関連を検討した.【結果】喘息の真の重症度は間欠型2名,軽症持続型4名,中等症持続型3名,重症持続型が1名であった.治療期間は平均61±62日で,全例体重減少(1.7-7.1kg)が得られた.肥満指標と呼吸機能パラメーターそれぞれの変化率を線形回帰分析したところ,BMI,体脂肪率および体脂肪量の低下と%FVC,%FEV1の改善率に相関を認めた.体脂肪率および体脂肪量の低下と%PEF,%V_<50>の改善率との間にも相関があった.しかし,一部肥満改善が軽度の症例で,呼吸機能が悪化している症例もみられた.腹囲の減少と呼吸機能の改善との間には相関を認めなかった.【結論】肥満を有する喘息児において,肥満の改善が大きい児において呼吸機能が改善した.喘息症状の増悪の一部に肥満が関与している可能性が示唆された.
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