【背景】小児アレルギー疾患の増加が指摘されているが,実際にアレルギー疾患有症例が適切に医療管理を受けているのか,その実態は明らかではない.【目的】学童期における総IgE値,アレルゲン特異的IgE値の分布と,アレルギー症状との関連を明らかにする.また,アレルギー症状の有無や重症度と診断率,受診率との関連を見る.さらに,検査結果を保護者に通知し,その後のアレルギー対策に結びついているかにつき検討する.【方法】近江八幡市の小学5年生654名全員を対象とした生活習慣病検診の機会を利用して,アレルギー検査(総IgE値およびダニ,スギ,ヒノキ,カモガヤ特異的lgE値)を行い,同時に配布したアレルギー疾患疫学調査質問票の内容と比較検討した.1年後に保護者に検査結果がどのように活用されたかについての追跡調査を行った.【結果】618名(94.5%)がアレルギー検査に同意した.総IgE平均値は138IU/mlであった.全体で388例(62.8%),アレルギー無症状例に限っても181例(49.2%)がいずれかのアレルゲンに感作されていた.各アレルギー疾患有症例のうち喘息以外の医療機関受診率は低く,アトピー性皮膚炎で52.4%,アレルギー性鼻炎で49.7%,アレルギー性結膜炎で27.7%であった.検査結果が「役立った」「対策を立てた」というものは,全体で各々74%,47%,アレルギー疾患有症例では各々77%,63%であった.【考察】喘息以外では医療機関未受診例が多く,必要な例に充分な医療が行き渡っていないと考えられ,受診率向上のために何らかの対策を考える必要がある.疾患有症例やアレルゲン陽性例では検査データをみて何らかの対策を立てた例が6割に上り,学校検診におけるアレルギー検査の有用性が示唆された.
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