【背景・目的】肺機能検査や気道過敏性が正常域の軽症の喘息症例の確定診断には苦慮することがある.標準法による気道過敏性検査が正常域である喘息症例の末梢気道病変の検出に強制オシレーション法が有用であるかについて検討する.【方法】当院の吸入ステロイド薬未使用の成人喘息患者58症例,感染後咳嗽患者10症例を対象とし,標準法によるacetylcholine(ACh),histamine(Hist)の気道過敏性検査を同一時期に施行し,その検査の前後でモストグラフ(Mostgraph-01,チェスト社,東京)を用いた強制オシレーション法を施行し,気道過敏性検査時の閾値時FEV
1値/吸入前FEV
1値とモストグラフの各指標の変化との相関について解析した.【結果】喘息群では気道過敏性亢進群のみならず気道過敏性正常域群においても気道過敏性検査後のモストグラフの各指標は有意な変化を認めたが,感染後咳嗽は認めなかった.ACh気道過敏性検査時の閾値時FEV
1値/吸入前FEV
1値(%)は△R20,△Fresと,Hist気道過敏性検査後のFEV
1低下率は△R5,△R20,△Fres,△ALXとそれぞれ有意な相関を示した.気道過敏性正常域の症例ではACh気道過敏性検査では△R5-R20,△Fresが,Hist気道過敏性検査時では△R5,△R20,△FresがFEV
1低下率と有意な相関を示した.Hist気道過敏性正常域の喘息と感染後咳嗽症例の鑑別としてROC曲線を用いた検討ではAUC 0.7808(95%CI, 0.657-0.904),感度53.8%,特異度100%であり,post/pre Fresのカットオフ値として1.5が有用であることが示された.【結語】気道過敏性正常域の喘息症例においても,気道過敏性前後で強制オシレーションを施行することにより,呼吸抵抗の増加や換気不均等分布を検出することができ,喘息の早期診断に応用できる可能性が示された.
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