職業性アレルギー疾患診療ガイドラインの初版が2013年に発刊された後3年が経過し,近々2016年版が刊行される予定である.本稿を執筆時点では改訂の最終作業が行われていて,本稿と実際のガイドラインの刊行はほぼ同時期となる見込みであるが,ガイドラインの基本的内容と改訂予定箇所の一部を紹介したい.そして最近我々がガイドラインを活用して診療を行った実例を述べて,検査の流れを示したい.実際の改訂の詳細に関しては,2016年版ガイドラインを参照頂きたい.
【目的】新生児消化管アレルギーが疑われる症例に対する経口負荷試験の結果を予測する因子を評価する.
【方法】国内のNICU126施設において症状から消化管アレルギーが疑われる児を対象とした前方視的症例集積研究を行った.調査期間は2010年4月から2011年9月とした.診断を目的とした負荷試験が行われた症例について,臨床的背景,臨床症状,検査所見を負荷試験陽性群と陰性群の2群間で比較した.
【結果】解析対象は32例で負荷試験陽性は9例(28.1%),疑陽性は4例,陰性は19例であった.負荷試験陽性群と陰性群の比較では臨床的背景に差はなかった.臨床症状は両群ともに嘔吐と血便が高頻度で70%に認められたが2群間に差はなかった.補助診断検査として末梢血好酸球,便粘液中好酸球,食物抗原リンパ球刺激試験(ALST)が行われたが,2群間に差はなく,いずれの検査も偽陽性が多かった.
【結語】臨床症状や補助診断検査の結果から負荷試験の結果を予測することは現状では困難であり,新生児期特有のリスクに十分対応できる状況下で積極的な負荷試験の実施による正確な診断が望まれる.
【背景】市区町村が保育園における食物アレルギー(FA)児の概要を「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(GL)」に基づいて把握しているとした報告はない.
【目的】GLに基づいた「保育所等における食物アレルギー疾患生活管理指導表」(生活管理指導表)の提出内容を前向きに調査し実態を明らかにする.
【対象・方法】2013年度および2014年度に相模原市の認可保育所に初回に提出された全ての生活管理指導表よりデータを得て解析した.
【結果】2013年度,2014年度の認可保育所の入所児童数はそれぞれ,9,567名,10,069名で,生活管理指導表利用者数は426名(4.5%),447名(4.4%),アナフィラキシーは61名(0.6%),61名(0.6%)であった.原因食物の内訳は,非加熱鶏卵が71.6%,69.6%,加熱鶏卵54.2%,54.8%,牛乳23.0%,23.3%,ピーナッツ17.8%,17.0%,ソバ7.3%,8.5%,小麦6.3%,8.3%の順で全ての原因食物で年度による差はなかった.FA病型は2014年度の方で即時型が有意に多かった(73.0%,79.0%,p=0.040).
【結論】GLに基づいた生活管理指導表を運用することにより相模原市での保育園におけるFA児の実態を正確に把握することができた.