【背景・目的】近年,草本植物の花粉症患者について耳目に触れる事が多い.伊東市における草本植物花粉飛散数を計測したので,花粉症の予防・治療に役立てたい.
【方法】ダーラムの標準花粉捕集器で,花粉飛散数をイネ科,タデ科,ヒユ科,イラクサ科,アサ科,ブタクサ属,ヨモギに分けて測定した.それぞれの花粉飛散数と気象の相関を調べた(2004~2015年).
【結果】1月~6月のイネ科,4月~9月のタデ科の総花粉飛散数は19.4±5.5個/cm2,11.6±13.4個/cm2であった.7月~12月のイネ科,ヒユ科,アサ科,イラクサ科,ブタクサ属,ヨモギは34.0±15.5個/cm2,1.3±1.1個/cm2,8.7±6.4個/cm2,4.9±6.4個/cm2,10.5±7.8個/cm2,13.6±16.3個/cm2であった.アサ科は降水量,ヨモギは気温との間に負の相関を認めた.
【結語】伊東市における草本植物花粉飛散数は樹木花粉と比べ非常に少なく,花粉症の原因として問題になっていない.この地域の温暖な気候が植物植生の多様性を保ち,花粉症を重大化させない要因と考える.
【目的】小麦アレルギーの経口免疫療法の有効性の報告はみられるが,その方法について比較した報告はない.
今回筆者らは小麦の経口免疫療法の効果を摂取間隔の異なる2つの方法で前向きに検討し,その摂取頻度が与える影響を評価した.
【対象】うどんの経口負荷試験陽性例で最終負荷量と最大誘発症状より乾麺重量で0.5~5gから摂取開始可能と判断した49名から同意を得て,摂取頻度により週6回以上(頻回群)と週2回(間歇群)の2群に年齢を層別化して無作為に割り付けた.摂取頻度を遵守しかつ経口免疫療法を遂行できた各群16名合計32名を今検討の対象とした.
【方法】頻回群と間歇群に経口免疫療法を行い6カ月目の摂取量を評価した.
【結果】6カ月後に目標量(3歳以下乾麺重量20g,4歳以上乾麺50g)以上に摂取あるいは負荷試験陰性だった割合は両群ともに75%だった.
【結論】小麦アレルギーの経口免疫療法での6カ月後の目標到達率は,1週間当たりの摂取頻度を2回まで落としても毎日の摂取と比較して摂取頻度による明らかな違いがみられないことが示唆された.
アナフィラキシーは急速に出現し,死の危険性もある重篤な全身アレルギー反応である.喘鳴や呼吸困難,意識消失はIgE依存性食物アレルギーの重篤なアレルギー症状として知られているが,無呼吸発作の報告は殆どない.今回,IgE依存性小麦アレルギーをもつ9歳男児に小麦負荷試験を行ったところ,全身紅斑,腹痛,嘔吐,アナフィラキシーショックなどの即時型反応の後,強い酸素飽和度低下を伴う無呼吸発作を起こした.患者の酸素飽和度は60%台まで低下し,その際,患者は呼吸を止めチアノーゼが出現しているのを医療スタッフが確認した.その後も時折,酸素飽和度の低下を伴わない10秒程度の無呼吸を認めた.経過から中枢性無呼吸発作が起こった可能性が疑われるが,その機序は不明であり今後病態を解明していく必要があると考えられた.