【背景,目的】気管支喘息評価の指標としてFENOは有用である.利用しやすい方法として携帯型FENO測定器(NObreath®,NIOX Vero®)が挙げられるが,それぞれの互換性についての成人の報告はない.
【対象,方法】成人気管支喘息または喘息疑い44例を対象とした.FENOをNObreath®およびNIOX Vero®で測定し,スパイロメトリーを行った.
【結果】NObreath®およびNIOX Vero®によるFENO値(FeNOb,FENOv)は,お互いに強い正の相関を認めた(r=0.915,p<0.001).ただし,FENOvはFENObに対して有意に高値であった.(FENOv=1.40×FENOb).
【結語】FENO実測値は測定の方法論ごとに違いがあるため,異なる方法論による測定の結果判定のためには変換するための補正式が必要である.
【背景・目的】食物アレルギーの原因食品とされる小麦粉は,その飛散性のため,ふるい操作により他の食品へ意図せず混入する可能性がある.今回,小麦粉の飛散性に着目し,飛散した小麦アレルゲンの混入防止に役立つ知見を得ることを目的とした.
【方法】3種類の粉ふるいを用い,飛散した小麦粉の軌跡や速度ベクトルを測定し,飛散動態を解析した.また,シャーレ-イムノクロマト法で小麦アレルゲンの飛散距離を測定した.
【結果】小麦粉の粒子径分布は,粒子径14.2μmと60.4μmで2つのピークを示し,終末沈降速度はそれぞれ約8mm/s,約150mm/sであった.ふるい操作後,飛散した大きな小麦粉粒子は垂直に落下したが,粒子径がおよそ30μm未満の粒子は空気の流れに乗って周辺に飛散し,小麦アレルゲンとして5mまで飛散した.
【結語】ふるい操作により飛散した小麦粉は,粉ふるいの種類に関わらず他の食品に意図せずに混入し得ることが示唆された.混入防止のため,独立した調理室か,袋の中で取り扱う等の対応が必要と考えられた.
【背景・目的】食物の加工はタンパク質の分解,変性または重合をもたらし,アレルギー患者の反応性を変化させる可能性がある.本研究は,小麦タンパク質の加工における変化とそれらに対する患者血清の反応性の変化を明らかにすることを目的とした.
【方法】薄力粉,うどん,パンから異なる抽出液にてタンパク質を抽出し,SDS- polyacrylamide gel電気泳動を行った.また,小児小麦アレルギー患者血清を用い,IgE-Immunoblottingを行った.
【結果】薄力粉からは可溶性タンパクが抽出され,SDSを加えるとグルテン画分も抽出された.うどんやパンからは,ジスルフィド結合を切断しなければ,何れの画分も抽出されず,うどんのゆで汁へのタンパク流出はごく僅かであった.抽出されたタンパク質に対する患者血清中のIgE抗体の反応性は,加工食品間で違いを認めなかった.
【結語】小麦アレルゲンはグルテン形成後,熱を加えることで強く不溶化するが,IgE抗体の反応性は変化しなかった.この結果と実際の摂取時誘発症状との関連については,さらなる検討が必要である.
症例は42歳女性.咳嗽,痰と皮膚発赤及び掻痒感を主訴に受診した.症状,好酸球増多,呼気一酸化窒素濃度高値,気道過敏性陽性から気管支喘息およびアトピー性皮膚炎と診断した.ステロイド治療を勧めるも本人の強い希望により柴朴湯の単独治療を行ったところ,約1年で検査所見の改善と症状の緩和を認めた.柴朴湯による抗アレルギー作用を示唆する症例と考えられたため報告する.