【背景】保育所における食物アレルギー(以下FA)の有症率,受け入れ状況および誤食の発生率などを全国的に調査した報告はない.
【目的】保育所におけるFAに関する現状を明らかにする.
【方法】調査対象施設は全国の保育関係施設とし,Web page上で入力または調査依頼書に記入し郵送する方法で調査を依頼した.
【結果】実際に調査依頼書が送付できた32210施設中15722の施設から回答が得られた(回答率は48.8%).全体の有症率は4.0%で,0歳が6.4%,1歳7.1%,2歳5.1%,3歳3.6%,4歳2.8%,5歳2.3%,6歳0.8%であった.93.4%の施設がFA児を預かると回答し,3.3%の施設が預からないと回答した.給食対応の内容は52.4%が除去食,39.5%が代替食,3.3%が弁当持参であった.約11カ月間の調査期間中に7.6%の児が保育所でFA症状を1回以上認めた.
【結語】多くの保育所がFA児を受け入れており,除去食や代替食により給食も対応していた.一方,FAの誘発症状を経験する児も少なくなく,誤食の可能性を減らすための各部門で継続的な努力や,緊急時に確実に対応できる体制の確立が必要である.
【目的】近年,カバノキ花粉などによる花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)のために,多品目の果物・野菜の摂取に伴う口腔アレルギー症候群(OAS)の発症が全国的に増加している.当科では,PFASの根治を目指して輸入品のシラカバ花粉エキスを含む皮下免疫療法(SCIT)を2011年より実施している.これまで実施した成績をまとめて検討・報告する.
【方法】2011年8月~2016年8月に男児9名,女児10名の計19名(6~16歳;平均11.8歳)に実施した.シラカバ特異的IgE値は全例陽性であった(中央値91.9UA/mL).SCITは入院のうえ急速法で導入し,維持期は4~8週間隔で外来での接種を継続している.症例により他抗原も同時に接種した.急速期前後で経口負荷試験を行い,その後の摂取状況についても調査した.
【結果】急速期直後では5名にOAS症状の著明改善,9名に改善を認めた.2名は変化なし,3名は評価不能だったが,うち4名は維持期に症状の改善を認めた.維持期経過中に3名でOAS症状の再燃を認めたが,計15名(79%)で著明改善あるいは改善を認め,高い有効性を示した.中止・脱落例は認めなかった.
【結論】PFASによるOASは基本的には自然寛解が期待できないとされている.果物・野菜と交差反応性のある花粉の免疫療法を行うことでOAS症状の改善が期待でき,OASの有効な治療法になると考えられる.
症例は13歳女性.お好み焼きを摂取した1時間後に,咳嗽,呼吸困難が出現し時間外に受診した.問診にて開封後室温で数カ月間保存されたたこ焼き粉で料理されたお好み焼きを摂取したことが分かったため,口腔ダニアナフィラキシー(OMA)を疑い,料理に使用した粉を検鏡したところダニを認め,OMAと診断した.後日,調理に使用したダニ混入粉を用いて好塩基球活性化試験(BAT)を施行したところ,ダニ混入粉の刺激で強い好塩基球活性を認めた.一方,コントロールとして用いたダニ感作のない健常人の検体では,ダニ混入粉で刺激しても好塩基球活性化は認められず,非特異的な反応は否定できた.BATは,特異度・感度が十分に検討されておらず標準化が困難で,いまだ保険未収載の検査ではあるが,今回のような確定診断に経口負荷試験ができないケースでは,補助診断として有用な代替ツールであると考え報告した.