【背景】現在,国内でシングルアレルゲン検査が可能な試薬はオリトンIgE,イムノキャップ,アラスタットである.しかし,オリトンIgEとイムノキャップ及びアラスタットの相関性を評価した報告はこれまでなかったため,検査頻度の高いアレルゲン項目で評価した.
【方法】検査頻度の高いアレルゲン6項目を3法で測定し,Spearman順位相関係数及びクラス判定一致率を評価した.さらにオリトンIgEは,検体量を少量化した場合でも他の2法と同様の評価をした.
【結果】オリトンIgEとイムノキャップ,アラスタットにおいて,検査法間やアレルゲン項目により傾向は異なるものの一定の相関性が確認された.またオリトンIgEにおける検体少量化法は,標準検体量法とほぼ同等の結果であった.
【結語】本評価により各検査法の特徴を理解し,検査法を選択することが可能になる.また,より少ない検体量で日常検査を実施することは,小児科領域においては特に有用であると考える.
【背景・目的】アナフィラキシー(以下An)に関する全国的な疫学調査はない.わが国のAnの誘因および治療の実態を明らかにする.
【対象と方法】日本アレルギー学会認定教育研修施設を調査対象とし,2015年2月~2017年10月に同施設内で発症または救急受診したAn患者の誘因や治療内容等をweb上のアンケートフォームに入力する方法で前向きに集積した.
【結果】451施設中79施設(18%)が研究へ参加し,計767例(18歳未満:73%,院内発症:7%)を集積した.誘因は食物68%,医薬品12%,食物依存性運動誘発アナフィラキシー5%,昆虫刺傷4%,経口免疫療法3%の順に多く,院外発症では食物,院内発症では医薬品が最多であった.医療機関でのアドレナリン(以下Ad)筋肉注射使用率は38%で,そのうち10%は複数回の投与を要した.院外発症例のAd自己注射薬使用率は12%であった.
【結語】わが国のAnの主な誘因と治療状況が明らかになった.An発症時のセルフマネジメントおよび初期治療としてのAd投与は必ずしも適切に行われておらず,An患者への指導の徹底や医師へのAnに関する啓発が必要である.
症例は74歳の男性.左胸水貯留で発症し,良性石綿胸水や結核性胸膜炎が疑われた.胸水中のADAが高値であったため,結核性胸膜炎として診断的治療が行われたが,経過中に右胸水貯留,皮膚・粘膜病変,白血球減少症,発熱を生じた.皮膚生検の病理はsystemic lupus erythematosus(SLE)に合致した.全薬剤中止後も臨床所見が改善しなかったため,ステロイド薬を開始したところ各種所見は改善を示し,高齢発症SLEを強く疑った.高齢者における胸水貯留ではループス胸膜炎も鑑別に挙げるべきである.また,高齢発症SLEと薬剤誘発性ループスは臨床経過から慎重に鑑別する必要がある.
塩化リゾチームは殺菌作用のある物質で,かつては多くの医薬品に有効成分として含まれていた.今回,塩化リゾチームを含有するデオドラントスプレーによりアナフィラキシー症状を呈した症例を経験した.
【症例】鶏卵アレルギーで卵を部分解除中の10歳女児.卵白由来塩化リゾチームを含有するデオドラントスプレーを散布した直後から噴霧部の膨疹と喘鳴,呼吸困難が出現し顔面蒼白となったため救急外来を受診した.原因としてデオドラントスプレーが疑われたため,同製品と塩化リゾチームでプリックテストおよび好塩基球活性化試験を実施したところ,いずれの検査でも両者ともに陽性であった.
【考察】病歴と検査結果よりデオドラントスプレーに含まれる塩化リゾチームによるアナフィラキシーと診断した.医薬部外品に含有される塩化リゾチームは表示指定成分としての表示義務はあるが,卵白由来である記載がない場合も多い.鶏卵アレルギー患者に対しては塩化リゾチームを含む商品の使用を控えるよう,注意喚起が重要である.