【背景】多職種・複数診療科が関与するアレルギー診療水準の向上には,専門医以外も対象とした教育の必要性が考えられるが,そのニーズ調査と方法に関する検討は不十分である.
【目的・方法】免疫アレルギー疾患研究10か年戦略次世代タスクフォース(ENGAGE-TF)は学会支援下に慶應義塾大学,福井大学と連携した複数回のバーチャル教育企画「出前授業」を企画した.そのニーズと有用性を検証するため,SNSや各大学・医師会等を通じて周知し,メーリングリストを用いてアンケート調査を行った.
【結果】のべ1139人・回より回答を得た.半数以上が専門医以外の医師であり,幅広い医療関連職種も参加した.7割が「とても満足」,6割以上が「ちょうどよい」難易度と回答した.自由記載の感想から,職種毎の学びの焦点,経験年数による学びのスタンスの違いが見られた.
【考察・結語】9割を占める専門医以外の参加者のプライマリケアにおけるアレルギー疾患対応ニーズの高さと,経験11年以上の医療関連職種の遠隔教育・リカレント教育の有用性が示唆された.
【背景・目的】救急救命士はアドレナリン自己注射薬(Adrenaline autoinjector:AAI)を医師の指示下で使用できるが,その使用実態や課題は明らかでない.救急救命士がより効果的にAAIを運用できる環境を整えるため,実情や課題を調査した.
【方法】2022年にWeb開催した「食物アレルギーの最新知識と緊急時対応の研修会」に参加した救急救命士を対象に,Webアンケート調査を行った.調査項目は,練習や研修環境と実務,AAI投与に関する印象等とした.
【結果】救急救命士70人が回答した.業務中にAAIがあればよかったと感じた症例を経験したのは28人(40%)だったが,実際に投与した経験をもつのは1人だった.また救急車にAAIを常時搭載することを良いと思うのは34人(49%)であった.AAIの使用に不安がないは48人(69%)で,使用に関する不安度は勤続年数と有意な関係を認めた.また救急救命士にはAAIに関する十分な研修環境がないことが明らかになった.
【結論】AAIの必要性を感じつつも実際に投与した経験をもつ救急救命士は少ない.より効果的なAAIの運用には,アナフィラキシーを習熟する研修環境や,現場で救急救命士が速やかにAAI使用できるような環境整備が必要である.
果物のGibberellin-regulated protein(GRP)アレルギーは,加熱・加工品でも全身症状を伴う果物アレルギーである.GRPが広範な植物に含まれることから,原因となる果物は多岐にわたる.症例1は6歳男児,学校給食で缶詰のモモを摂取後に運動してアナフィラキシーショックとなり,諸検査でモモGRPアレルギーが強く疑われた.その半年後に給食のリンゴ,さらに2年半後にも給食の柑橘類で相次いで同様の症状を呈した.症例2は11歳男児.やはり学校給食で缶詰のモモを摂取後に運動してアナフィラキシーとなり,諸検査でモモGRPアレルギーが推察された.その1年半後にイチゴで同様の症状を呈した.症例ごとに異なる果物へのアレルギーを呈することから,除去食指導には個別性が必要であった.特にリンゴや柑橘類は,果肉としてのみならず,調味料の風味付けや隠し味として学校給食に頻回に登場していることに留意し,適切な除去範囲についても症例毎に検討を要すると思われた.
症例は3歳の女児.父親が大豆の選別・洗浄の仕事に従事している.父親が大豆粉塵の付着した作業着のまま帰宅した当日,もしくは翌日に,本児は一過性の呼吸苦や活気不良を呈するようになった.その後,大豆粉塵の付着した作業着を着た父親に抱っこされた際,アナフィラキシーを発症した.血液検査で大豆とGly m 4の特異的IgE抗体が陽性であったが,未摂取の豆乳を除き,大豆製品は問題なく摂取できていた.父親に対し,職場で着替えてから帰宅し,帰宅後すぐに入浴をするよう指導してからは,児に呼吸苦や活気不良の症状は見られなくなり,アナフィラキシーも発症していない.大豆抗原の吸入によるアナフィラキシーの報告は極めて稀だが,本症例では,父親の作業着に付着したと考えられる大豆粉塵の吸入により,アナフィラキシーを発症した可能性が高いと考えられた.