アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症(ABPA/M)は,気道に定着する真菌に対する過剰な免疫応答を背景に発症し,喘息様症状,粘液栓形成,中枢性気管支拡張を特徴とする難治性アレルギー性気道疾患である.病態の中心には2型炎症があるが,Aspergillus fumigatusをはじめとする真菌への応答では1型・3型炎症も誘導され,IgEに加えてIgGを介した免疫応答も関与する.好酸球はIL-5依存的に増加・活性化し,脱顆粒,脂質メディエーター産生,extracellular trap cell death(ETosis)を介して粘液栓形成に寄与する.著者らの多層オミクス解析では,ABPA/M患者由来の血中好酸球においてIL-5関連分子に加え,IFN-γシグナルに関連する分子発現の亢進が認められた.また,IL-5とIFN-γで前処理した好酸球ではIgG架橋によるETosisが増強した.これらの知見は,ABPA/Mでは2型炎症と1型炎症が併存する免疫環境が好酸球の病的活性化を促し,粘液栓形成に関与する可能性を示している.疾患概念,臨床背景,治療選択を踏まえて好酸球の質的変化を理解することは,ABPA/Mの病態解明と個別化治療に有用である.
【目的】イネ科花粉症の治療に役立てるため,空中花粉調査を行いイネ科花粉以外の花粉飛散の影響を受けないイネ科花粉飛散期間及びその地域特性を検討したので報告する.
【方法】13地点の花粉観測協力施設でIS式ロータリー型花粉捕集器(重力法)により2024年5月1日から8月31日に,ヒノキ科(旧スギ科を除く),カバノキ科ハンノキ属,カバノキ科シラカンバ,イネ科,キク科ブタクサ属,キク科ヨモギ属,及びアサ科カナムグラについて調査した.花粉飛散開始日,終了日,花粉本格飛散開始日,終了日の条件を設定し,観測地点毎の花粉飛散期間,本格飛散期間を示した.
【結果】イネ科花粉は北海道では6月上旬から7月中旬,北海道以外の花粉観測地点では5月上旬から8月中下旬に捕集された.木本花粉は主に5月上旬から6月上旬に捕集された.イネ科花粉以外の草本花粉は主に8月中下旬に捕集された.
【結語】今回調査したイネ科花粉以外の各種花粉の飛散の影響の少ないイネ科花粉飛散期間は北海道では6月から7月,それ以外の地域は5月から8月と判断した.
【背景・目的】気管支拡張薬吸入(BDI)後の1秒率(FEV1/FVC)70%未満の喘息患者の背景因子およびBDIの反応性について明らかにする.
【方法】対象は呼吸器専門医によって喘息と診断された患者のうち,気道可逆性試験が実施され,診療録から診断根拠が確認できた症例(130例)を後方視的に解析した.
【結果】91例がBDI後のFEV1/FVC 70%以上(N群)で,39例が70%未満(O群)であった.背景因子では末梢血好酸球数がO群で多かったが,その他の因子には差はなかった.BDI前の対基準値FEV1(%FEV1),対基準値FVC(%FVC)はO群で低値で,BDI後の%FEV1はO群で低値であったが%FVCには差はなかった.FEV1およびFVCのBDI前後の増加量と増加率はともにO群で高かった.一方,O群ではBDI前後のFEV1とFVCの変化量は,ほぼ同等の増加だったが,N群ではFVCの増加はFEV1に比べ低かった.気道可逆性の判定基準(FEV1またはFVCが基準値の10%以上の改善)を満たす患者数はO群で多かった.
【結語】BDI後FEV1/FVCが70%未満の喘息患者は閉塞性換気障害がより高度だったが,BDIの反応性は良好で,特にFVCの改善が顕著であった.
30代,男性.重症アトピー性皮膚炎のため前医に通院中だったが,約1カ月の間に下腿蜂窩織炎,臀部および四肢の伝染性膿痂疹,さらに背部に癰を発症した.前医にて癰の切開排膿処置をうけるも改善がなく,当科へ紹介され入院加療を要した.入院中にカポジ水痘様発疹症を併発したことに加え,入院時スクリーニング検査で梅毒既感染が判明したため精査を行った.HIV抗原・抗体陽性,HIV-RNA 74000copies/mLが判明し,HIV感染症と診断した.退院後も癰や癤の発症をくり返したため,抗レトロウイルス療法を開始したところ,アトピー性皮膚炎の病勢が改善し標準療法のみでコントロールが可能になった.HIVへの治療介入が炎症性皮膚疾患の活動性改善に影響を及ぼす可能性が示唆された.
一方で,全国的にHIV累計患者数は増加傾向にあり,地方圏においても繰り返す皮膚感染症を認めた場合には,HIV感染の可能性を念頭に置く必要がある.早期に適切なスクリーニングを実施することは,患者予後の改善に寄与すると考えた.