日本学校心理士会年報
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理論・提言
  • 山本 博樹
    2025 年18 巻 p. 5-15
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    学校には学習内容をうまく理解できずに苦しむ児童生徒が多く存在する。こうした児童生徒への個別学習支援において学校心理士による説明は重要な役割を果たす。ここでいう説明とは,一方向的な情報の提示ではなく,理解への足場かけに対応した支援行為であると言える。本稿では,まず,学校心理士が行う個別学習支援時の説明の本質が児童生徒の理解の支援にある点を確認する。続いて,個別学習支援で行う説明,すなわち「方針・計画・経過に関する説明」や「個別学習支援を実行する説明」について整理し,課題を検討する。その上で,個別学習支援時の説明における理解支援のあり方について検討を加えたい。特に,(1)説明に先立って行うSOIモデルに基づいた意味理解プロセスのアセスメントと,(2)児童生徒の理解不振を改善するための説明表現の工夫という2つの観点から論じる。最後に,個別学習支援時の説明に求められる理解支援の専門性と質向上について議論したい。

  • 香取 早苗
    2025 年18 巻 p. 16-25
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    いじめは被害者と加害者だけではなく周囲の者も含めた集団の中で起こっている問題であり,生徒指導提要(文部科学省,2022)でもいじめの構造から考えた未然防止教育の重要性が示されている。いじめを抑止するには,仲裁者の出現が重要なポイントとなるといわれているが,仲裁することで自分もいじめられる恐れもあり実際にはいじめ抑止に繋がる行動をとる者は稀であることが報告されている。また,いじめの影響に関する研究では,自分がいじめ被害にあわなくてもいじめを目撃したりいじめを抑止することで心身に悪影響があることが報告されている。そこで本稿では,小・中学校でいじめを抑止した体験がある成人5名に半構造化面接を行い,いじめ目撃時から現在までの心理プロセスを明らかにするとともに,いじめ抑止行動を行う者への心理教育的援助サービスについて論じた。

  • 四辻 伸吾
    2025 年18 巻 p. 26-36
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,いじめ被害に遭いやすさである「いじめ被害脆弱性」に関する研究動向を概観した上で,新たないじめ予防・防止アプローチの在り方について提言するものである。日本の先行研究においては「いじめ被害脆弱性」として,コミュニケーションスキル,パーソナリティ特性,発達障害,性的マイノリティ,社会階層,身体的特徴等に関する視点が見られた。これらの視点について,「本人にはどうしようもないこと」「アプローチにより変容できること」に区分し,さらに「アプローチにより変容できること」について「アプローチが本人のWell-beingにつながる可能性がある場合」「アプローチが本人のWell-beingにつながらない可能性がある場合」として整理した。その上で「アプローチが本人のWell-beingにつながる可能性がある場合」についての「いじめ被害脆弱性」への具体的アプローチの可能性を提案した。

  • 新井 雅
    2025 年18 巻 p. 37-48
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    これからの学校教育では個人や社会のウェルビーイングを目指す方向性が示されており,社会情動的スキル育成への関心が高まっている。本研究では,子どもたちの社会情動的スキルの育成の観点から,学校における心理支援の在り方を再考し,より発展的な方向性を探ることを目的とした。その結果,生徒指導の重層的支援構造に基づき,子どもの社会情動的スキル育成を支援目標に据えつつ,エビデンスに基づく実践を進めることの重要性が示された。さらに,国内外で重視されている子どもの権利や社会参画の動向を背景として,子どもたちが主導しつつ,大人と協力しながら研究や社会活動に参画することで,社会情動的スキルの育成を促す可能性があることも示唆された。以上を踏まえ,すべての子どもたちの社会情動的スキルの育成を共通の目標として,学校における心理支援の在り方を捉え直しつつ発展させ,子どもと大人が協力しながらメンタルヘルスにやさしい学校・社会の共創を目指していくことの必要性について考察した。

  • ―オートエスノグラフィーの試み―
    白井 利明
    2025 年18 巻 p. 49-59
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    小・中・高校生の「私」の発達について10・14・17 歳頃の発達の節について概説し,教師の役割を説明した。小学校中学年(10歳)頃,世界を再構成し,意識的に行為し始める。中学校2年(14歳)頃,自分と世界の関係を外側から眺め,葛藤や矛盾と向きあい始める。高校2年(17歳)頃,時間軸を立てて自分を語り,社会のなかに自分の位置を定め始める。「私」とは,自分と世界の時々の関係を観察し,人間的な行為を立ち上げる,内的な動きのことである。教師は発達を見通しながら,子どもの主体性に基づいて,文化の教授や集団づくりを行う。

  • 三浦 巧也
    2025 年18 巻 p. 60-66
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    発達障害やその可能性のある女性は男性と異なる特性を示し,特に思春期の女子高校生では複雑な困難を抱えやすい。本論文では,既存研究を整理し,発達障害のある女子高校生の特性,困難さ,効果的な支援方法について考察した。女子の発達障害は社会的に見えにくく,診断が困難である一方,自尊感情の低下や月経前不快気分障害との関連,性被害リスクなど女子特有の課題が存在する。効果的な支援として,個々の実態に応じたクラスベースによる支援,ACTアプローチ,専門機関との連携が重要であり,個別性を重視した包括的支援体制の構築が求められる。

展望論文
  • ―プログラム構成及び援助要請の検討―
    本田 真大, 永井 智, 本田 泰代, 水野 治久
    2025 年18 巻 p. 67-79
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は日本の小学校で実施されるSOSの出し方教育を含む自殺予防教育の特徴をプログラム構成及び援助要請の点から明らかにし,今後の検討点と課題を示すことである。自治体が作成した自殺予防教育から最終的に22件を抽出し,対象集団,公開されている資料,プログラムの構成要素,そして介入されている援助要請の概念を分類した。内容分析の結果,小学5, 6年生対象のプログラムが多いこと,構成要素では自分との関わり方,友人の助け方,相談先の紹介が多いこと,これらを心理教育や仲間との話し合いを通して学習する方法が多いことが明らかとなった。援助要請については,態度・認知には心理教育,意図・意志にはストレスマネジメントや相談先の紹介,行動にはソーシャルスキルトレーニングによる介入が確認された。小学生対象の標準的なプログラム構成と今後の研究及び実践課題が議論された。

実践論文
  • ―両者の語りを通じて―
    小沼 豊
    2025 年18 巻 p. 80-90
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,新任教員と拠点校指導教員との1年間にわたる支援関係の変容過程を質的に分析したものである。精神疾患による教員の休職が増加する中,初任者研修制度における支援の実態とその効果を明らかにすることを目的とした。半構造化面接の逐語録を分析した結果,新任教員は「受容-葛藤-統合」という段階的な変容をたどりながら成長していた。一方,指導教員は,新任教員の成長に応じて支援のスタイルを柔軟に調整し,相互に信頼関係を深めていった。こうした支援関係は「支援する/される」という一方向的な関係ではなく,対話と相互作用を通して構築される「生成的プロセス」と言えた。今後は,多様な事例を対象とした重層的な分析を進め,初任者研修制度の制度設計や実践的支援の在り方に資する知見の蓄積が期待される。

  • 小谷 正登, 加島 ゆう子, 木田 重果, 岩崎 久志
    2025 年18 巻 p. 91-102
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,中学生対象の生活実態調査の結果をもとに,COVID-19禍における学校再開後からの登校意欲の増減と生活の変化,生活実態の各側面およびメンタルヘルスとの関連を分析したところ,以下の4点が明らかになった。(1)登校意欲の増減と家族・友人との会話時間,教員等の大人への相談の容易さ,楽しい気持ちの各増減との間に強い関連があった。(2)登校意欲の増加と目覚めの良さなどの良好な睡眠の状態,学習状況や家庭環境との関連から,登校意欲の増加には生活習慣の確立が重要である。(3)登校意欲が増加した生徒ほど,睡眠障害度,ネット依存傾向とSDQ(総合的困難さ)が低く,SDQ(向社会的行動)とQOLが高い。(4)LGBTQ+に該当すると想定される生徒の睡眠障害度・メンタルヘルスにおける困難さが大きい。以上から,全ての生徒のメンタルヘルスの維持向上および不登校生徒の支援には,家族や友人との会話時間の確保,相談の窓口の充実および生活習慣の確立が期待される。

資料論文
  • ―保育者と小学校教師の視点の比較―
    小西 あゆみ, 藤原 和政
    2025 年18 巻 p. 103-110
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/07/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,保育者,小学校教師を対象に,小学校就学までに育成が求められる資質・能力の詳細について質的調査を行い,その結果について整理・カテゴリ化し,共通点や相違点を明らかにすることを目的としていた。保育者4名,小学校教師5名に対し半構造化面接を行い,すべての音声データを逐語録に起こした。KJ法を参考に,発言内容を分類,整理し,カテゴリ化した。その結果,幼小で「内面的成長力」「他者との関わり」「こども園/小学校生活」「目標に向かう姿勢」の共通する4カテゴリが生成された。一方で,資質・能力の詳細であるサブカテゴリは,こども園では個人の興味や関心,生活自立等,個を重視した内容であるのに対し,小学校ではセルフコントロールやコミュニケーション等,集団生活に適応することを重視した内容であるなど,差異があることが示唆された。これらを踏まえ,円滑な幼小連携の在り方についての議論がなされた。

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