我が国の都市近郊地域の計画は, 都市計画にとっても農村計画にとっても一つの隆路であった。それぞれ既成市街地や純農村地域でとりくまれてきた研究や計画・制度は, 都市近郊地域では十分にその機能を果たし得ていない。しかし, 今や純化した意味では“都市”でも“農村”でもない地域が国土に蔓延し, 我が国の代表的な居住地域になっている
1) 。こうした地域に対する計画制度としては1968年 (昭和43年) に改正された都市計画法による「線引き」制度以外にみるべきものはない
2)。この制度が発足し, 多くの市町村で制定されてから10年余がたち, 「線引き」の「見直し」に止まらず, この制度そのものの「見直し」が関係者の間で検討されている
3)。そこで, 本研究は, この「線引き」制度が, 都市近郊地域の計画制度としてどれだけの役割を果たしたのか, またどんな課題を顕在化させてきているのかを検討するために, スプロール現象という都市近郊地域の一つの主要な計画課題に対して, どの様に機能してきたかを明らかにすることを主題とする。
具体的に明らかにする課題は次の諸点である。
人口拡散の側面から (1)
イ「線引き」制定時の特徴を, 市街化区域と調整区域の面積構成, 人口配分を中心に明らかにする。
ロ制定後の推移にみられる特徴を, 8年間 (調査対象とする各市町で統一的な資料整理が可能な年間) の変化でみる。指標としては面積構成と人口配分, 人口密度等を用いる。
土地利用の側面から (2)
イ「線引き」制定時における農地の占有状況とその後の非農地化 (宅地化) の過程を明らかにする。
ロ「線引き」制定時における非農地 (主として林地) の占有状況とその後の宅地化の過程を明らかにする。
ハ転用農地の転用後の使用用途の特徴をみる。
ニ残存農地の保存状況をみる
、スプロール対策として「線引き (3) 」制度の果たした役割と課題の検討
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