再生可能エネルギー資源は, エネルギー密度が小さく,不安定であるため,大量供給には多数,大面積の設備整備を必要とするとともに,それぞれの資源特性に適した分散型生産・需給システム運用が必要になる。したがって,より効率的な再生可能エネルギーの生産供給を実現するためには,とくに資源が豊富に賦存する農村地域を中心に,分散型のエネルギー需給に関する技術工学的な研究が求められる。このような認識に基づいて,本研究では農山村地域における分散型電力グリッドの可能性を検討するための予察的検討として,再生可能エネルギーの大量導入を前提に,電力料削減インセンティブによるデマンドレスポンス(
Demand Response,需要側協調)の電力システム維持プログラムへの参加可能性を調査・分析した。調査は,対象の属性,省エネルギー行動・意識などに加えて,受容できる停電の回数・時間の長さと年間電気料削減額の組合せ(
Demand Responseシナリオ)を選ぶ選択型アンケートとし,北海道と沖縄を除く8電力管内のDID (Densely Inhabited Districs)・非DIDの調査会社登録の20歳以上のモニターから調査対象を選定して実施した。停電受入れ条件として削減額を推計するために使用できる有効回答数は1,611であった。
Demand Responseシナリオの受入れに対しDIDと非DIDの違いによる差は認められなかった。また,どの
Demand Responseシナリオにおいても年削減額を増加させると受け入れ率は増加した(Fig.1)。
選択型アンケート結果の分析には,回答者が選択肢を選択したときの効用として線形モデルで表されるランダム効用関数を想定した
random parameter logit model(Train, 2009; Hensher
et al, 2015)を用いた(Eq.1)。効用パラメータの平均値は,回答者の効用パラメータ分布として三角分布からハルトン数列でサンプリングして得られる分布を仮定して推定した(Table 1)。効用パラメータの推定に基づき,Eq.4を用いて
Demand Response シナリオ別の平均削減額(平均
Willingness-to-Accept)を求めた。その結果は,Table 2のとおりで,年1回・1時間の停電受け入れの平均
Willingness-to-Acceptは11,328円と見積もられた。
本研究の結果は,
Demand Responseが日本の家庭部門において実行可能であること,金銭的インセンティブが停電受け入れの増加に貢献することを明らかにしたといえ,
Demand Responseは不安定な再生可能エネルギー利用の分散型電力システムのバックアップ容量削減や信頼性向上に有効な選択肢になると考えられた。
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