CTG(Computer Technique Group)は,1966年末に結成された日本で初めて美術作品としてコンピュータ・グラフィックス(以下CG)を制作したグループである.その活動期間は3年弱に過ぎないが,ヤシャ・ライハートが監修した世界初の大規模なコンピュータ・アートの展覧会「Cybernetic Serendipity」展(ICA,London,1968年)を初めとする海外の展覧会に出品した.そのためCTGの作品は初期コンピュータ・アートの古典的名作として,今なお国内外の書籍に掲載され続けている.CTGは今日のメディア・アートやディジタル・アートの国際的なパイオニアである. 一方で,CTGの作品研究については,その殆どが「Cybernetic Serendipity」展図録からの引用に留まり,作品をアルゴリズム・レベルで検証した研究はない.第一筆者は幸運にも元CTGメンバーの知遇を得て,取材を進めてきた.その中で,幾人かの方から作品や当時の資料を拝借することもでき,検証を進めてきた.今回はCTGの代表的なCG4作品(シリーズ)の再現の試みを通じて,明らかになった点を報告する.CTGは当時のアートの潮流であったポップ・アートやオプ・アートを下敷きとして,具象をモチーフに線形・非線形補間など基礎的な幾何学と乱数をベースに多様で多彩な作品を制作したことが明らかになった.
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