芸術科学会論文誌
Online ISSN : 1347-2267
ISSN-L : 1347-2267
12 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
NICOGRAPH2012発表論文特集
  • 金子 彩香 , 中村 友香理 , 伊藤 貴之
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 12 巻 3 号 p. 104-113
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    薬は人体の重要な構成成分である蛋白質に作用する.薬との親和性の高さをdruggabilityといい,親和性の高い蛋白質の発見は製薬過程における重要な課題である.近年の研究では,薬成分の多くは蛋白質表面上の窪み(ポケット)に反応することが知られており,我々もdruggableなポケットに対する抽出・分析の研究を進めてきた.本論文では,蛋白質表面形状に対し,ポケットを抽出する手法,並びに,ポケットのdruggability分析のための2種類の可視化ツールを提案する.ポケット抽出手法では,三角メッシュで構成された蛋白質表面上に対し,メッシュ単純化により微小凹凸を平滑化し,その表面上から凹部をポケットとして抽出する.druggability分析のための1つ目の可視化ツールでは,形状の観点から各ポケットのdruggability推定値を算出し可視化する.2つ目の可視化ツールでは,各ポケットの特徴量を2軸に割り当てた散布図とポケット形状を1画面上に表示する.本論文では2つの可視化ツールを60種類の蛋白質に適用し,適切と思われるdruggability推定値が可視化されたことや,ポケットの電位や疎水性といった化学的特性とdruggabilityとの関係性を散布図で可視化されたことを示す.
  • 近藤 菜々子, 水野 慎士
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 12 巻 3 号 p. 114-123
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    スケッチブックへのお絵描きは,ペンやクレヨンさえあればいつでもどこでも始められ,特に子供たちにとっては最も身近な芸術制作の一つである.そのため,スケッチブックへお絵描きするような感覚で二次元および三次元のCGを制作できるコンピュータアプリケーションが数多く開発されており,画像処理技術などを用いてお絵描き表現の拡張を試みているものも少なくない.その中で,本論文ではスケッチブックに描かれた絵をビデオカメラで撮影して画像処理を施して,CG生成やサウンド生成を行うことでお絵描きを拡張する映像ツールを提案する.提案ツールを通して見た絵は,動き出したりオブジェクト追加されたり様々なステレオサウンド発生をしており,ユーザは絵に基づく映像とサウンドの変化を楽しみながらスケッチブックのお絵描きを楽しむことができる.
  • 田中 将貴, 床井 浩平
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 12 巻 3 号 p. 124-131
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    コンピュータグラフィックスにおいてオブジェクトの外観の経年変化を表現するために,オブジェクト表面上に雨染みを再現する手法を提案する.これには粒子法の一手法であるSPH (Smoothed Particle Hydrodynamics) 法によるシミュレーションを用いることができる.本研究ではSPH 法を拡張し,水の付着力の影響を考慮した雨染みの形状を生成する手法を開発した.提案手法は水滴が物体表面を伝う現象や水滴が滴る現象を再現するため,従来手法より現実に近い汚れの模様を生成できる.また本研究では,提案手法を GPU 上に実装し,シミュレーションに用いる粒子の各種の物理量をGPU のメモリ上に配置して,処理の高速化を図った.
一般論文
  • 飯田 弘之, 中川 武夫, 長谷川 敦史, 岡根谷 敏久, Muangkasem Apimuk, 曾根 彰吾, 石飛 太一
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 12 巻 3 号 p. 132-142
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本論文において,新たな情報力学モデルを提案し,その応用について探求する.最初のモデルはゲーム結果の確かさに関連し,二番目のモデルはゲーム結果の不確かさに関連する.これらのモデルを将棋とサッカーに適用する.そして,エンタテイメント性の質,ゲーム進行パターン,アドバンテージの依存性,勝率といったゲーム情報の時間推移を可視化するために有効であることを確認する.提案モデルの応用例として取り上げたサッカーの情報力学モデルから,FIFA女子世界サッカー選手権決勝の試合は典型的な均衡のとれたゲームであることがわかる.また,この試合で日本チームはアメリカチームに勝利したが,日本チームが最後まであきらめなかったことが示唆される.
  • 伊藤 紘治, 金森 由博, 三谷 純, 福井 幸男
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 12 巻 3 号 p. 143-151
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    逆遠近感を利用した錯視立体図形は,観察者が見る位置を変えることによって,物体が静止しているにもかかわらず,変形しているかのように見える立体である.本研究では,三次元ポリゴンモデルを入力として,逆遠近錯視立体をモデリングする手法を提案する.ユーザが適当な視点の位置を決めると,システムはその視点から可視である面について,奥行きが反転するようにモデルを適切に変形させ,逆遠近錯視のモデルを生成する.また,ユーザがモデルの一部分を指定することで,指定した部分だけを逆遠近錯視立体へ変形させることも可能とする.さらに本研究では,得られたモデルをペーパークラフトとして実世界に出力し,実際に錯視が起きることを確認した.
  • 大泉 和文, 伊藤 誠
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 12 巻 3 号 p. 152-161
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    CTG(Computer Technique Group)は,1966年末に結成された日本で初めて美術作品としてコンピュータ・グラフィックス(以下CG)を制作したグループである.その活動期間は3年弱に過ぎないが,ヤシャ・ライハートが監修した世界初の大規模なコンピュータ・アートの展覧会「Cybernetic Serendipity」展(ICA,London,1968年)を初めとする海外の展覧会に出品した.そのためCTGの作品は初期コンピュータ・アートの古典的名作として,今なお国内外の書籍に掲載され続けている.CTGは今日のメディア・アートやディジタル・アートの国際的なパイオニアである. 一方で,CTGの作品研究については,その殆どが「Cybernetic Serendipity」展図録からの引用に留まり,作品をアルゴリズム・レベルで検証した研究はない.第一筆者は幸運にも元CTGメンバーの知遇を得て,取材を進めてきた.その中で,幾人かの方から作品や当時の資料を拝借することもでき,検証を進めてきた.今回はCTGの代表的なCG4作品(シリーズ)の再現の試みを通じて,明らかになった点を報告する.CTGは当時のアートの潮流であったポップ・アートやオプ・アートを下敷きとして,具象をモチーフに線形・非線形補間など基礎的な幾何学と乱数をベースに多様で多彩な作品を制作したことが明らかになった.
feedback
Top