芸術科学会論文誌
Online ISSN : 1347-2267
ISSN-L : 1347-2267
17 巻, 5 号
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一般論文
  • 李 春元, 今野 晃市
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 17 巻 5 号 p. 115-125
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2023/05/02
    ジャーナル フリー
    遺物である土器は,多くの場合が砕けた状態で遺跡から出土する.土器の復元は,出土した破片の色や模様,形を手がかりとして,試行錯誤を伴う手作業で行われているため,破片が多いほど多くの時間と労力がかかり,専門的な知識が必要とされる.しかし,土器復元結果を解析することで,当時の人間の活動についての推測が可能であるため,実物の復元が困難である場合,コンピュータ上で仮想的に復元する手法が必要がある.また,仮想展示向けの三次元モデル生成や3Dプリンタを利用して作られた土器は,歴史博物館や学校での展示資料としての教育的価値がある.そこで近年,土器を含む様々な遺物に対応するために,コンピュータによる組み立て方法が開発されてきた.しかし,従来手法では,破片の輪郭と断裂面の断面形状により隣接する破片を決定できるが,表面が湾曲しかつ器厚の薄い土器片に関しては,湾曲を考慮した三次元空間姿勢を算出することは難しい.そこで本論文では,縄文時代の円筒土器を対象とし,三次元計測点群に基づき,すべての隣接情報を同時に満足できるような土器片の空間姿勢最適化アルゴリズムを提案する.本手法は,いくつかの土器片に適用して,有効性を確認した.
  • 池田 泰成, 都甲 裕太朗, 藤代 一成
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 17 巻 5 号 p. 126-138
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2023/05/02
    ジャーナル フリー
    電子付録
    糸は織物や編物,衣服を構成するために必要であり,現実的なシーンを表現するために不可欠な素材である.これまでに開発された糸の生成手法は,主としてボリュームベースと繊維ベースの二種類に分類できる.近年の先進的な手法により,CGにおける糸の表現力は劇的に向上し,なおかつその生成に必要なコストも減少した.しかし,糸の周囲に生える毛羽立ちや装飾を目的とした糸の生成プロセスは,未だに挑戦的な課題である.特に,表面の毛羽立ちが独特な形状をもつパイル織物や,装飾を施した編物を制作する際に使用されるシェニール糸は,タオルや車のシート地,衣服など生活のあらゆる場所で使用される一般的な素材であるにもかかわらず,その構造の複雑性からモデリングが困難である.加えて,既存手法では一本の糸の生成プロセスに注目しているが,その糸を使用した大規模な織物や布の生成フレームワークについては,筆者らの知る限り提案されていない.これらの課題を解決するため,本論文では既存のフレームワークを拡張することで微細繊維をもつ糸の生成に対応するとともに,この糸から自動的に織物や布を生成する手法を提案する.
  • 佐々木 陽, 今野 晃市
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 17 巻 5 号 p. 139-149
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2023/05/02
    ジャーナル フリー
    石器の接合資料は,同一の母岩から製作された石器同士を接合し,隣接する石器間の位置や姿勢を復元した資料である.接合資料の作成は,出土した剥片の色や模様,形を手がかりとして,試行錯誤を伴う手作業で行われているため,剥片が多ければ多いほど多くの時間と労力がかかり,専門的な知識が必要とされる.作業者の負担を減らし,効率的な接合資料の作成を行うために,試行錯誤や手作業等の労力を,大幅に削減する技術が必要とされる.従来,接合資料作成のための石器剥離面の抽出手法が提案されている.しかし,著者らの先行研究では発掘調査報告書に必要な実測図を流用しているため,実測図が存在しない石器データについての剥離面抽出は,非常に困難である.また,実測図作成,流用の工程は手作業のため,手作業の工程が増えてしまい,労力と時間を費やしてしまう.そこで,本研究では,実測図作成,流用の工程削減を目指した,石器剥離面の認識手法について述べる.本手法は,元の点群を軽量化したデータを分割し,分割した点群を入力データとする.この入力データから特徴量を計算し,稜線候補点を抽出する.次に,抽出した稜線候補点上の点群から,kd-Treeを構築し,領域ごとに点密度の計算と,代表点の選出を行う.点密度の大きい領域の代表点を用いて,入力データを左回りに追跡する.追跡した点群は,意味のある点列として格納する.さらに,格納した点列から定義される閉領域から,特徴量に基づいた条件を満たすまで拡張し,境界線を表す点列として抽出する.本手法で抽出した点群で囲まれた閉領域は,剥離面を意味する.本実験では,石器の計測点群を軽量化したデータを用いて,自動的に剥離面を認識できることを確認した.
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